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競技かるた観戦記・第70期名人位挑戦者決定戦

ookomimiです。競技かるたの作戦について書いています。

名人戦の挑戦者決定戦を全日本かるた協会のyoutubeチャンネルで見たので感想を書いてみました。動画を見ながら別スクリーンでテキストを打ち込んだだけです。長くなるので敬称は略して書いています。

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1回戦

40歳になる三好と20代半ばの堀本の対戦。何度も準名人を取った三好だが名人を目指すならそろそろラストチャンスか。堀本も年齢的にタイトルを取るにはここ数年が勝負。両者のスタイルからすると攻め合いをベースとした試合になるだろう。

13分 試合開始。三好陣はいつも通り右上段と右下段が長く右中段が短い配置。自陣左が縦に伸びるのもいつも通り。堀本はかなり競技戦に寄って構えて左手をかなり後ろに置いている。窮屈そうな構えだが払い手のキレはどうか。感じた札はともかく感じ遅れた札を咄嗟に払うのは難しそうだが。

18分 「つき」を三好が自陣左下段で守る。堀本にとっても狙いやすい札だったはずだが、これを守られるということはシンプルな抜き合いだと分が悪そう。

27分 「たご」を三好が抜いて三好18-22堀本か。落ち着いた攻め合いの試合。内容面で大きな差は感じないが全体的に三好の方が若干余裕を持って札を取っているように見える。

31分 堀本が「ゆふ」を抜く。ここまで堀本は取りのスピードはなかなか上がらないものの手の低さで出札を取る場面が多い。三好がスピードを上げてきても敵陣を抜けるか。

37分 三好陣右上段「なにわが」を堀本が囲って抜く。三好は相手の手をブロックして自陣右上段を守るのを得意にしているのでここを精度で抜かれると武器が一つ減る。

38分 三好陣左下段「よも」で揉めるが三好の取りに。堀本は敵陣をスピードよりも精度重視で抜いているが、三好のスピードが上がってくるとこのように札際で負けて守られる場面が増えそう。三好は自陣を下段中心に配置しているが、これは堀本の払いを見て深い位置は速く払えないと踏んで意図的にやっている可能性もある(youtube画面上では定位置から外したかどうかまで分からないので意図は不明だが)。

43分 現状は三好16-15堀本か。今後の展開は出札次第という印象。

47分 堀本陣「いまこ」、三好陣「かぜを」と互いに暗記ミスで守られる。なかなか差が付かない。

49分 堀本陣左上段に札がなくなったところで堀本が札を1枚移動させて左上段を作る。三好の払いのフォームだと堀本陣に左上段がないときはかなり攻めやすくなるはずなので、それを避ける作戦だろう。当たり前だが堀本は三好のことはかなり研究している様子。

51分 三好陣右下段「うか」を三好が守る。ここまで堀本は速い攻めを見せることができない。このペースだと三好は多少リードされたとしても自陣下段を取れば最低限接戦にはできる。堀本はどこかで下段を抜きにいくのか。

 56分 三好が「よのなかよ」を抜いて三好8-13堀本。ここで堀本が自陣上段に札を1枚浮かせる。

 58分 「あらざ」で堀本がセミダブルして三好5-14堀本。ここまでの両者の取りの調子を見ると一方が連取をするのは難しそう。これで勝負あったか。

 61分 「はなの」で三好がお手つき。直後の「きみがためを」を堀本が抜いて長考。逆転を狙うならここはすぐに送りたい。急な展開にした方が相手は体制を立て直しにくいので逆転しやすい。

 65分 堀本陣「しの」を三好が攻め損なって三好6-10堀本。まだ試合は決まっていなかった。

 67分 三好陣「ありあ」を抜いて1枚送った後で、堀本が札がなくなっていた自陣右中段に3枚残っていた自陣右上段の札を1枚移した。札を1カ所に固めず徹底して三好にポイントを作らせない作戦とみた。前提として三好がポイントを置いて攻めてきた場所は守れないから張り合わないという判断か。

71分 三好は着実に取れる札を取り、堀本陣「あさぼらけう」を抜いてリーチ。終始トップスピードで堀本に勝っているので無理をしなくて良い。典型的な優勢時の取りかた。恐らくこの後の試合も見越して無理はしていない。

73分 三好が堀本陣「よのなかは」を抜いて試合終了。

試合開始当初の印象通り、堀本のスピードがなかなか上がらなかったため三好は終始落ち着いて試合を進めていた。堀本が苦手そうな自陣下段に札を集めた(どこまで意図したかは分からないが)のも功を奏して要所で自陣を守ってリードしてからは終始三好ペースだった。堀本はこの展開だと厳しい。スピードで全体的に劣っているので出札が相当良くなる以外に勝つ展開が見いだしにくい。この後どうするか。

2回戦

 12分 試合開始。三好、堀本共に札の配置は平常通りか。三好陣右が上段・下段中心なのは1回戦同様。堀本はバランス重視。堀本の構えで右手が大分競技線から離れているのが気になる。あまり得はなさそうだが何か意図があるのか。

 17分 三好が「みかき」でダブルのお手つき。ここから出札が片寄ると一気に行く可能性もあるがどうか。

 21分 堀本が自陣「たれ」を守る。三好は全体的に1字目の反応が良くない。堀本の調子も上がらない様子なので三好はあまりスピードを上げていないのかもしれない。

 24分 堀本が「おおこ」でお手つきをして三好18-24堀本になった模様。三好が飛ばせば一方的な展開になりそうだが、ペースアップする余裕はあるか。

 27分 「あさぼらけ」の別れで堀本陣が出て三好15-23堀本。堀本はかなり苦しいがどう取るか。

 32分 三好が「かぜを」に手を突き込んで抜く。速くはないが上手い。これで三好13-21堀本か。三好としては札際の上手さで取れる札が一定数あるから無理にスピードを上げる必要はないという判断かもしれない。枚数差を考えれば妥当なところ。

 39分 三好陣「ちぎりき」を堀本が抜く。これで三好13-19堀本か。堀本の調子は引き続き今一つだが三好陣が多く出る出札に助けられている印象。

47分 堀本陣「おと」を三好が抜いて三好9-15堀本。三好は安定したペースで札を減らす作戦だろう。堀本はペースアップが必要だが今のところスパートをかけている様子はない。読みのペースも速いので両者とも無理はできないのかもしれない。

53分 分かれていた「わたのはら」は三好陣が出て堀本が抜き三好9-10堀本。ここまでは三好陣に集まった出札を丁寧に攻めて差を詰めた。堀本は出札に再三助けられている。

 54分 堀本陣「なにわが」は揉めるが審判裁定で堀本の取り。これで堀本が追いつく。三好はそろそろスピードを上げたい。内容では相手に勝っていて主観的にも余裕があるのでスピードを上げる判断はしにくいのだが、こういった展開だと追いついた側はスピードが上がってくるのでそのままだと押し切られるリスクがある。本当はここで一段ギアを上げて相手の調子を崩したいところ。

59分 三好陣「いに」を堀本が抜いて逆転。三好9-8堀本。

61分 三好が「よも」で自陣お手つきをして三好8-7堀本。痛い。堀本は徹底して自陣に三好の狙い所を作らせない配置をしており、三好としては敵陣を攻めにくい中で自陣に欲が出たのかもしれない。この展開だと送り札の関係で逆転した堀本の方が陣形的には有利になっており、しかもミスで逆転された三好は暗記も乱れているのでかなり苦しいはず。

64分 三好が「わたのはらこ」で堀本陣右を遅く触るダブルのお手つき。敵陣右を狙えていればまずしないミスなので堀本の作戦勝ちか。

65分 堀本陣右「よのなかは」を堀本が守る。三好は敵陣右に手が出ない。これで三好9-2堀本。

69分 三好陣左の「こころに」を堀本が抜いて試合終了。7枚差。

序盤は三好の圧勝ペースだったがその後の出札が堀本有利だったため接戦になり、最後は三好のミスが目立つ形で逆転となった。三好が終盤入り口までのどこかでスパートできていれば一気に決まった試合かもしれない。展開の速い試合だったので残り札の多い間は無理を避けたのは判断として仕方ない面があるし、中盤以降の出札は明らかに不運だったが、枚数差が詰まってきたところでペースを上げた方が良かっただろう(結果論だが)。結果的にはミスで逆転されたことで立て直す余裕もなくなる最悪の展開になってしまった。
なお、堀本は1試合目・2試合目通じて三好に自陣右を狙わせない配置をしており、三好対策をかなり練っていた印象がある。出札運もあったが、恐らく中盤以降の送り札で相当に陣形を自分有利に整えていたのではないかと思われ、終盤の余裕の差につながったはず。事前準備が報われたのではないか。

 3回戦 

10分 試合開始。堀本陣はこれまでの2試合と同じような配置だが、三好陣は左下段が伸びていて左中上段が少ない。意図があるのか単なる偶然なのかは分からない。

17分 三好陣「なにわが」を堀本が抜いて三好23-22堀本。これまでの札への反応を見る限りこの試合は堀本の方が暗記が入っている印象。

19分 堀本陣右下段「みかき」に三好が反応できず堀本が守る。堀本陣右が狙いにくいのか。そうだとすれば今日の堀本の三好対策は成功している。

24分 「たま」で三好が堀本陣右を遅く触るお手つき。これで三好21-19堀本。やはり右を狙い切れていない印象。

34分 堀本陣右の「はなさ」で三好が反応できず堀本が守る。三好18-16堀本か。三好としては取る計算にしている札のはずだが。

39分 堀本が自陣左の「たき」を守った後で自陣右から左に札を1枚動かす。徹底して自陣右で三好にポイントを作らせない。三好16-12堀本。三好は敵陣の取りに精彩を欠いて苦しい。

46分 三好陣の「なにし」を堀本が抜いて三好13-10堀本。

50分 三好陣「いまこ」を堀本が鋭く抜いて三好12-8堀本。1枚でもこのような抜きを見せられると自陣を守るイメージが作りにくくなり苦しい。三好はどのような取り方をするか。

56分 三好陣を堀本が抜く展開が続き、「す」を抜いたところで三好11-5堀本。抜きがそこまで速い印象はないが三好の手を上手くかいくぐって取っている。三好の払いの軌道を研究して抜いている可能性もある。

59分 三好陣「こころあ」を抜いて三好10-3堀本。ここで堀本は自陣右下段に札を置かず右中上段に1枚ずつ配置。ここでも三好に自陣右でポイントを作らせない作戦を徹底。

62分 三好が自陣で札を連取して三好7-3堀本。堀本は狙いを絞っているような雰囲気。

65分 1枚ずつ取り合って三好6-2堀本。

66分 堀本が自陣でお手つきをして三好5-3堀本。

68分 あ札の別れは三好陣から。三好5-2堀本。堀本はまた自陣右は下段を置かず上段に。

68分 その堀本陣右上段「おおえ」が読まれて三好は反応できず。堀本が守って5枚でリーチ。

69分 三好陣「なつ」を堀本が抜いて5枚勝ち。

それまでの2試合と異なり序盤から堀本が反応で勝つ展開。三好は2試合目の逆転負けがかなり暗記負担が大きい試合展開だったので、そこから回復が間に合わず札への反応が鈍かったのかもしれない。途中で速い取りの連取などが出せれば調子も上がってきたのだろうが、堀本は一貫して三好にそのような取りをさせないような試合運びをしていたように見えた。 この3試合を通じて堀本は三好を良く研究して対策も事前に決めていたと思われる節があるが、3試合目はそれが完全にハマった印象。恐らく堀本は三好陣の定位置をほぼ把握して送り札もそれを前提に決めていたのではないか。

2試合目で堀本が出札に助けられて逆転するなど、この挑戦者決定戦全体を通じて三好にとっては不運な場面も多かった。だが、三好がもう少し堀本を研究していれば2試合目などは逆転される前に叩く方法は色々あったようにも思う。三好は比較的器用なタイプなので取りのスタイルを少し変えて堀本の弱点を突くことは難しくなかったはず。2試合目はあと一押しで勝てた試合で、大きくリードしたところで堀本の得意な取りを封じる策があれば完封勝ちできた可能性もあったのではないかと思うが、いつもの三好のスタイルで取ったため堀本の研究にはまってしまったように見えた。チャンスを逃したという敗戦だったので悔いが残る結果だっただろう。

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 試合を見ての私の感想はこんなところです。クイーン戦もまとめてみたいのですが、この感想まとめは結構な時間が掛かるので、またの機会としたいと思います。

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