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休職日記③ コマンダンテに惹かれて

漫才師・コマンダンテ。

結成12年。吉本興業所属。

安田邦祐、石井輝明の、シュッとした長身コンビ。

彼らは、休職中の私のモノクロの毎日に鮮やかな色をもたらす。


仕事を休んだ朝、起き上がれず湿ったベッドの中でYoutubeを見ていた。

この仕事をやってきて8年経つが、最近の仕事が一番辛かった。

理不尽な理由で押し付けられた重役に、容赦なく与えられるプレッシャー。

職場で聞こえる悪口が、全て自分のことのように聞こえた。

「今日の予定」が何も考えられなかった。心が耐えきれなくなっていた。

私はもう働けない。

でも、誰かに甘えたい。助けてほしい。

なんでもいいから救いが欲しい。

太陽がのぼり、カーテンから洩れる光から外が明るくなってきているのは分かったが、部屋の電気さえもつけられずにいた。

ベッドの中で小さくなりながら、震える親指でYoutubeというパンドラの箱を開ける。

なにか希望はないか。私が生きる理由にできる、なにかが。

そこに、彗星のごとく(?)突如として、おすすめに上がった漫才動画があった。

コマンダンテ『喧嘩の仲裁』。

サムネには、優しそうな顔立ちのシュッとした男性が2人。

開いた。

見た。

爆笑した。

薄暗い部屋の、湿ったベッドの中で。

希望は、ここにあったのだ。


彼らの漫才は(のちに普段のおしゃべりも同じであると分かるが)穏やかでやさしい言葉を使う。

ゆるゆるかと思いきや、つかみで観客の心をかっさらっていく。

決してボケを叩いたり罵ったりしない。

ネタの構成力も高く、最初から最後までストーリーが作り込まれている。

かつ、両方がボケにもツッコミにもなりうるシュールさもある。

そして最後は「もういいです」でシメる、独自性。


ベッドの中で考えた。

彼らがいれば、生きられる。

起き上がる力が、少しずつ出てきたような気がした。


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