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地域と更生保護

東京都江東区にある江東区更生保護女性会の元保護司の方が辰巳駅前に4年前に作った『cafe Lalala』にて2022年12月17日に行ったTalkTreeWORKSHOP。

大学生から保護司の女性たち、10代~80代までの年齢幅で20人の参加者の方たちと行ったこの会は、新しい何かを切り拓くきっかけをつくれた。

参加者の年配の女性が、「これで冥途の土産ができた。」と目に涙を浮かべて感想を最後に言ってくださった。

この機会をつくったのは、法務省の一職員の男性(ワークショップデザイナーでもある)。仕事ではなく、ご自身が必要だと思ってやっている活動である。こうしたボランタリーな精神で法務省の一部の方たちが今、今までにない活動をはじめている。

例えば、こちらの『みとびらプロジェクト』では、刑務所の中にあるファッションブランドをつくったり、様々な分野を越境する人を収録して放映した『クロスボーダーズ』で発信している。

このクロスボーダーズには私も出演したり、この中で取材されている方をお呼びしてトークイベントをやったこともあった。
また、昨年は、旧神奈川医療少年院の仮囲いに少年院の中にいる少年と中学生の『つなぐ』をテーマにした作品と『カベ新聞』をデザインする仕事にも携わった。

このように法務省の方たちとの接点よって、私は、『少年』たちを取り巻く社会課題に触れる機会が多くなっていた。

そんな中で、今回、江東区更生保護女性会の方や法務省関係に勤める方、大学の先生や学生たちと一緒に「これからの更生保護をどうしていくのか」を考える機会に、TalkTreeWORKSHOPを採用していただいた。

実は、2021年4月に『TOKYO SOCIAL DESIGN』を立ち上げたときに、

この名前をつけたのは、まさにこの『少年』たちを更生保護施設や保護司の方が見守られる中、まだまだ社会の理解が足りないという課題を解消するために、『社会をデザインする』というイメージでつけたのがこの名前だった。

ということで、気持ちは、私もこの更生に何かでは関わりたいという気持ちをコミットしている。そんな中でのこの機会は、ようやく巡ってきた気がしたのである。

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会のはじまりで、『江東区更生保護女性会』の会長、諏訪やよひさんと、cafe Lalalaの元保護司、中澤照子さんのお話を伺った。

更生保護女性会の活動について
・下町の気のいいおせっかいおばさん
・傷ついたから犯罪を犯した人を抱き癒す母の心を持って接する
・しょんぼりしている人がいたら「どうしたの?」と声をかけてあげる
・「私は一人じゃない」存在を認められている社会をつくりたい
『活動』というより、スタンスとしては『日頃の行い』の延長線上にある。

慈母そのものの存在を持って、地域にいる女性たち。そういった存在であり、会費を払って、ボランティアで皆さんが活動しているという大変ありがたい方たちということがよく分かった。

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そして、TalkTreeWORKSHOPに開始から30分ほどでバトンタッチ。終了まで3時間。じっくりとお二人のお話を受けて、4グループ5人ずつのメンバーで対話をしながら、木をつくるワークが始まった。

グループ内には、江東区更生保護女性会の方以外に、大学生と先生、法務省関係の職員さんをばらばらに分けてチームをつくっての実施。やはり、お互いの視点の違いから気づきが深まり、楽しい雰囲気がどんどんと高まった。TalkTreeWORKSHOPでは、グループワークのはじまりはいつも3つの問いから始まる。

今回の問いは、
Q1 今の仕事や活動をはじめた理由はどんなことですか?
Q2 今の子どもたちの状況で気になっていることはどんなことですか?
Q3 あなたが考える理想の地域社会はどんなものですか?

この3つ。それぞれ、グループ内で付箋に書いてもらって、書いたことを共有してもらった。

そして、木をつくり、各付箋を、Q1は根っこ、Q2は土、Q3は空に貼ってもらい、お互いの想いの共通項を見つける。そして、これからどんなことをしたいか、それは誰に届けたいか、それはどんな価値があるのかを、グループ内で付箋に書き、対話しながら枝、鳥、実をつくっていく。

最後に、実は鳥に届き、鳥はふんをする、ふんは土を肥やす、肥やされた土は栄養となって、根っこから自分たちの木に循環する・・・。そのつながりを感じられたあとに、この循環を興すこの木は社会の中でどんな役割を果たすかを各グループで出し合い終了。

各班から途中、どんな課題が出たか、最後にはどんなアイデアが出たかを発表してもらった。

手を動かし、カタチができていくものを一緒につくる。この共同作業からも連帯感やお互いを知るコミュニケーションが生まれる。

土の線をどこに描こうか、幹の太さはこれでいいかな?鳥はどこに貼りましょうか?など、ちょっとした質問や決定が小さくこの中で行われていく。このプロセスも、対話にプラスして何か輪の中で生まれていく。

どんなことをやりたいか?
出たアイデア(一部ご紹介)
・保育園と老人施設を一緒につくる
・挨拶を積極的にする
・居場所をつくる
・顔の見える関係づくり
・話を聴いてくれる人がいる場所をつくる
・声をかける
・ありがとうと伝える
・失敗を繰り返してみる
・哲学とか答えのない教育をする
・活動をおもしろく紹介
・ネットと対面をうまく活用
・関心がある人と活動してる人の間をつなぐ
・福祉サービスの充実
・人が集まるイベントをつくる

最後は、全員輪になって、一人一人に感想を言ってもらった。(一部ご紹介)
・あんまり普段触れないような話をする機会というのは、学びになりましたし、刺激になったので、すごく楽しかったです。
・こういった作業を共同ですることによって、自分が考えてなかったことまで再認識させて頂けるような貴重な機会になりました。
・初めてお会いしたことを話ができたということも非常に貴重な経験ですし、色んな考えをつないで共有する。それがものすごくいい時間でした。
・普段やっぱりこうどうしても仕事をしていると、自分がどんなことを考えて、この仕事をやってきたのかなとか、お仕事を通じて、どんなことを社会に還元したいのかなーって、なかなか考える機会と言うのが無いんですけど、改めてあの自分はこんなふうにして、これからやって行きたいかな、自分がこんなふうに世の中に役に立ちたいなというのを改めて感じることができました。
・まだまだこの世界もいけるんじゃないか?こんなにこうこう熱意のある人たちへの希望をもって頑張っている人たちが集まるはいがあるんだったら、もっとこの世界が明るくなるんじゃないかというのは希望を持つことができ、非常に自分が元気をもらえた時間でした。
・やっぱ安心できる環境で安心できてよかったなって思いました。ここでアウトプットしてきたことを聞いていうのが、親しみというか、愛着のあるようなものになったからで、みんなで話し合って出てきたものっていうのは、もしかしたらこれは、僕らのグループだけじゃなくて、地域もそうだし、社会もそうだしから求められていることなのかなっていう風なことを思っていました。で、それを実現して行くのかっていうようなことは、別に国だけでも無理だし、地域だけでも無理だし、その人であったりとか、文化全部ひっくるめてなんかいろいろやっていかないといけないんだろうなって感じました。
・いろんな皆さんの意見聞いて、あー、改めて自分はこういうふうに世の中のことを思ってるんだって再確認いたしました。
・少年とか刑務所とか、そういう所でもいろんな方が広範囲に関わり、参加しながら、考えを自分の中で再認識して行くいいんじゃないかなに思いました。

終わってから、みんなで中澤さんの『更生カレー』の試食会。なんと豪華な企画!

今、中澤さんはクラウドファンディングに挑戦中。
こうした方々が支えて今に至る世の中で、これから先どんな風にそのバトンを引き継いでいけるのか、たくさんの人の少しずつの力を合わせて何ができるのか。引き続き、いろんな方たちと対話していきたい。


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