映画「来る」が育児ホラーだった

 2018年の邦画、「来る」を今更観ました。今年に入ってNetflixで50本映画を観ていますが、今年観た中で一番面白かったです。何も知らずに楽しみたい人は読まないようにしてください。ネタバレではないと思いますが、内容に触れた文章になっています。

1.  映画「来る」とは

 以下、ウィキペディアからの引用です。

 社内では子煩悩で愛妻家で通っている田原秀樹の身に、ある日から怪異現象が勃発する。その怪異現象によってその家族や会社の同僚たちにまで危害が及ぶようになり、オカルトライターの野崎和浩に現象の解明と除霊を依頼する。野崎は、霊媒師の血を引くキャバ嬢・比嘉真琴らと共に調査に乗り出すが、そこで正体不明の訪問者と対峙することになる。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BC%E3%81%8E%E3%82%8F%E3%82%93%E3%81%8C%E3%80%81%E6%9D%A5%E3%82%8B#%E6%98%A0%E7%94%BB)

 ホラー映画ではありますが、「怖い」というよりも「悲惨」という印象を受けました。ホラー的な怖さよりも、人間の汚い部分の「怖さ」がクローズアップされています。ホラー映画として観ると少し肩透かしを食らうかもしれません。
 しかし、身体の欠損描写や出血シーンなどもちょこちょこあるので苦手な人はオススメしません。ただ、終盤の霊能力者大集結! なシーンはかなり格好いいので観てほしいという思いも強いです。

2.  育児ホラーと称した理由

この作品には様々な登場人物がいるのですが、主要人物は以下のような感じです。

・完璧なパパっぷりをブログで披露して承認欲求を満たす男
・付き合っている女性との間にできた子どもを堕ろさせた男
・身体的に子どもを産むことができない女
・いわゆる「毒親」な母との2人暮らしをしており、子育てに不安を感じる女

 その他にもろくでもない登場人物が出てきますが、この4人が関わり合いを持ちながら話が進んでいくので、育児ホラーになるのはなんとなく伝わるかと思います。

3.  この映画を観て思ったこと

私が「完璧なパパっぷりをブログで披露して承認欲求を満たす男」みたいになっていないかなあとまず不安になりました。書いている内容的に「完璧なパパ」というよりも「いちいち育児に対してへこたれているパパ」なので、内容的にも承認欲求は満たせないのでおそらくセーフだと思いたいところです。

 どの登場人物も「呪いにかかっている」と感じました。いわゆる毒親に育てられたからと言って、自身も毒親になるとは限りません。ただ、「あんな親みたいにならない」という強い思いは、「あんな親みたいなことをしている」と思ったときに強い呪いとなって跳ね返ってきそうです。
育児を通して承認欲求を満たす男も「誰かに認めてほしい」という呪いにかかっています。家族から認められている状態よりも「見えない誰か」からの承認を求めてしまっている。SNSが広がった現代病なんだと思いますが、共に生活する人よりも「見えない誰か」を優先されたら共に生活する人はたまったものではないです。そうなれば当然、日常生活は破綻するのですが、本人は「見えない誰か」からの承認によって、それを自覚できない。

 どちらも現実にあり得そうだから育児ホラーたり得るのだと思います。パパは「見えない誰か」を気にして、ママは「毒親だと思っている自分の母親」を気にしている。そうなると子どものことを考えてくれている人はどこにいるのでしょうか?
 子ども視点から考えてもしっかりとホラーな映画でした。

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