隣人トラブル②

通勤中の電車はたいてい満員なのだが、その日は、人と人が触れ合う必要が無いくらいにはすいていた。

いつも通り、早く降りそうなオーラを出している人の前で立っていると、僕の右側に立ち、寄りかかるようにくっついてくる男性がいた。案の定、その人の右側にはスペースがあった。イライラして窓のガラス越しにどんな人か見てみると、知っている顔だった。隣に住んでいる人ではないか。僕は汗っかきで、電車内では基本的に一年中汗をかいているのだが、今回はいつもと違う種類の汗が吹き出してきた。忘れ物をした素振りをして、次の駅で降り、次の電車に乗って仕事に向かった。ストーカーされている人はこんな気持ちなのかもしれない。

その週の休日、昼頃にタバコをベランダで吸っていると、「いい天気だね」と、隣のベランダからストーカーが顔を出し話しかけてきた。適当な相槌をした後、何か思い出した素振りをしてすぐに部屋に戻った。隣の部屋もすぐに窓の閉まる音がした。僕に話しかけるためだけにわざわざベランダに出たようだった。

気分が悪かったため、外を散歩することにした。15分くらい散歩をしていると、雨が降ってきた。洗濯物を干したままだった為、急いで家に戻っていると、スマホからラインの通知音がした。「雨降ってきたから洗濯物入れておこうか?」ストーカーからのラインだ。鍵は締めてあるのにどうやって洗濯物を入れるつもりなのだろう。そう考えるとますます怖くなった。

初めてあった日に断れなくてラインを交換してしまったのだが、以前にも、「ご飯作りすぎちゃったから持っていこうか?」といったストーカー色の強いメールがよく来ていた。僕は覚悟を決めてその人のラインをブロックした。

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