謙遜

僕は右利きだけど左側に座り、恋人は左利きだけど右側に座る。家でdvdを見ながらご飯を食べているとよく肘と肘がぶつかり、その度にお互いに謝る。座る位置を変えれば解決する話なんだけど、そんな話題も出たことが無いし、このお互いに気を使い合う感じが居心地がいい。


dvdが見終わると、いつの間にか、外は暗く雷がなるくらい天気が悪くなっていた。恋人はいい歳して雷が苦手だ。そんなことは起こるはずもないのに、雷に直撃するのを恐れている。


だから、気分転換というか、ポジティブな話題を提供した。褒められたときの対応の仕方について、という話題。


僕は褒められたときに謙遜してしまう事が多いのだが、恋人はなんでも素直に喜ぶ。恋人の事を知っていけばいくほど、この対応の仕方に違和感を覚えていた。この人なら心の中で謙遜しているはずなのに、表に全然出さないのは何故なのだろう。

「昔は、西嶋くんみたいに謙遜してたんだけど、褒めてくれる人が一番気持ちがいいのは、素直に喜んでくれる時だってあるとき気づいたんだよね」

と言われ、ここでもこの人は気を使ってるんだなととても愛らしくなり、同時に謙遜はあまりいい事ではない気がして少し恥ずかしくなった。


調子にのっている人が苦手だから、あまり人を褒めない。調子にのっている人になりたくないから、褒められても真に受けない。そんな生き方をしてきたのだが、その凝り固まった価値観を優しく溶かしてくれたような気がした。


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