昭和の町中華
とくに何の特徴もない新興楼という町中華が子供の頃の家の近くにあった。壁際の水槽に中の鯉がときどき、ガラスに近づいてきて、顔が見える。
そこを引っ越すまで、その鯉は元気に泳いでいた。天寿をまっとうしたのであろうか。店内のお品書きには、麺類の部、御飯の部、一品料理と続く。一品料理の最も高額なのは、鯉の丸揚げ野菜あんかけと肉団子であり、注文が入ったところをみることはなかった。野菜炒めには、50円ぐらい高い肉入りのものとただの野菜炒めがあった。肉は当時、高価な食材であった。
餃子は、タレをいれるためのくぼみがついた楕円形の餃子皿で出た。麺類では、醤油味のあんかけがかかった広東麺、蟹玉が乗っかったラーメンの天津麺やタンメンの上に蒲鉾、伊達巻、外側が食紅で赤いチャーシュー、エビ、めんまがのっかった五目そばがあり、味噌ラーメンは遅れて、メニューに加わった。豚骨味などなかった。 あげ麺にあんかけがかかった硬焼きそば、塩味の柔らかい焼きそば、ソース焼きそばもあった。
飲み物はビール、清酒1級、2級、サイダー、バヤリースなどあった。
テーブルの上の胡椒は白胡椒であった。
とてもおいしく繁盛した店だった。
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