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物想う、秋。
窓を開けると、澄み渡った青空に白い雲が浮かんでいる。
戸外は秋であふれているのに、家の中にいるのは人生の損失のような気がして、少し遠くの田んぼのある方まで足を延ばした。
ススキの穂が涼風になびいている。
すっかり重くなった稲穂は、刈り取られるのを待っている。
意外と高いところにトンボが飛びかっている。
手入れされたコスモスが、畑一杯に広がっている。
土手には、彼岸花ら燃えるように咲いている。
ふと、かぐわしい匂いを感じ、立ち止まった。
農家の垣根の間に、濃い緑のこんもりした樹木を見つけた。
葉と葉の間に、山吹色のチリチリした小さな花びらをいっぱいにつけて、気品のある香りをだしていた。
金木犀である。
金木犀の匂いは、遠い昔を思い出させる。
香りとともに過ぎ去った人・・・
秋は郷愁と人恋しさで、物寂しく、うら悲しい想いを誘う。
やがて到来する寒くて厳しい冬を予感させ、愁いとわびしさに身を浸していると、渡り遅れたツバメが一羽、視界を横切った。
思えば、我が人生も晩秋の候になった。