地方創生はナンセンス?『寡欲都市TOKYO』

原田曜平『寡欲都市TOKYO』、KADOKAWA 、2022年

この本の主張

1 人口減少はヤバい。
2 東京は住みやすい(特に若者にとって)。
3 PRを上手くやれば、若い移民を増やして発展できる。

東京しか生き残れない!

日本は人口減に苦しんでいます。
しかし東京圏だけはコロナ禍にあっても人口を増やし続けました。著者は政治家の増田寛也氏の言葉を引用し、人口減のまま地方を壊滅させながら「美しい縮小」の道を取るか、移民を増やすか人口を維持するかの2択しかないのだと言います。
そして著者の原田氏は基本的には後者をとりますが、それすらも可能なのは東京のみであるという厳しい見方を告げます。どちらにしても地方出身者の私には重すぎる言葉です。

東京は安い!

日本は長引くデフレで安い国になりました。著者はこんな例を出します。
著者の学生時代(20年ほど)のアメリカ人の友人に、久しぶりに日本に来ないかと誘うと、物価が高くて行けない、と言ったのだとか。そこで著者が友人にラーメンの値段を推測させてみると、NYで2千円だから3千円くらいかなと答えたとか。その後日本に来た友人は、安くて快適だったと喜んで帰っていったそうです。
アメリカで日本の一流は3万円くらいです。
食べ物だけでなく、東京の地価もNYやロンドンの半分以下、ディズニーランドの入場料も半分、100円ショップでさえ日本の100円がアメリカで162円で売られているのです。

Z世代と東京の未来

著者は若者研究で有名な人物で、私も『Z世代』(光文社)や『パリピ経済』(新潮社)などを読んで著者を知りました。本書でもZ世代は大きなキーワードになります。
Z世代は「チルい」という言葉に象徴されるように、競争するより穏やかに過ごしたい、のんびりしたいという気質を持っていると言われます。私もその一人として聞いて、否定できないなと思っています。それが安くて「それなり」に物が揃っている東京にはぴったりだというのです。
そして著者は「割くべきリソースを今以上に東京へ集中すべき(225頁)」といいます。移民等によってさらに東京を発展させ、地方に再分配する。そして居心地が悪くなった頃に地方への移住が進んで発展していくのだと言います。
みなさんはこの未来をどう思いますか?

まとめ

書きぶりから察していただけたかもしれませんが、私はこの本にはあまり賛同できません。ただこれといって有効な反論ができるわけでもありません。
著者の若者理解は他の論者に比べても洗練されているし、アジアを中心に海外にも明るく、読み応えはあります。
しかし、特に地方出身者の私にとって、これでいいのかとモヤモヤが残ります。それを解消するために、もっと勉強したいなと思えるのです。
良い本は気持ちのいい本ばかりではありません。よかったら皆さんも読んでみてください。

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