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立ちはだかる現実を直視せよ!『言ってはいけない』橘玲シリーズ第1弾

橘玲『言ってはいけない』、新潮社、2016年

橘玲と私

私は橘玲さんの本を10冊は読んでます。ですが一概に好きとも言い切れず、尊敬するところもあれば、間違ってると思うこともあり、時にはなんてもの読ませるんだこの野郎と思ったりします。それは思想的に異なる立場であるし、結論が基本的に暗いからです。
しかし彼の文章には読まねばならないと思わせる魅力があります。到底一回では終わらないので、第1弾としました。

最初に断っておくが、これは不愉快な本だ。だから、気分よく1日を終わりたいひとは読むのをやめたほうがいい。(3頁)

これはまえがき、この本の1番はじめの2行です。そして私もこれに完全同意します。これを読んだが最後、もうあなたは見たくない現実を直視するクセがついてしまうことでしょう。覚悟ができた方は続きをご覧ください。

知能の現実

本音では薄々分かっていても、口に出すのは憚られることがあります。この本の主要テーマである遺伝はその最たるものでしょう。身長や見た目など、目に見える部分はある程度認められているものですが、学力は遺伝するといわれると怒る人がいそうです。ですが残念なことに知能だけでなく、精神病や犯罪者になる確率なども、かなり遺伝の影響があります。それはなんとなくわかっていても、「言ってはいけない」ことになっているのです。
「教育格差」が問われることはあっても、「遺伝子格差」は問われず、タブーになっています。すぐに悪名高い優生思想と関連つけられてしまうからです。
しかしそれがないことになっているからこそ、自己責任論の風潮が強くなり、どう頑張っても勉強ができない人や、精神的に不安定な人などが排除されてしまうのです。
そして知能が社会的階級を大きく左右してしまうのが知識社会の特徴です。人種間にも知能の差があり、それが多民族国家のアメリカでは深刻な対立を産んでいるのです。アメリカではアファーマティブアクションという、黒人を白人より優先して大学に入れるようにする制度を運用して改善を図ろうとしてきましたが、成果はあまり出ていないようです。遺伝が原因ならば当然なのかもしれません。

現実にどう向き合うか

橘さんは現代日本において最も現実主義的な人物の一人だと思います。私は現実主義者だと思っていた時期もありましたが、結構熱いものが内にあるなぁと感じているので、少し理想主義成分が入っていると思います。
完全に意見は一致しないのですが、私は橘さんの本を読むようになってから、知的には前進できたと思っています。どうしても納得したくない、でも論理的には打ち崩せない、そうした格闘の末に、多くの気付きがありました。みなさんはどうお感じでしょうか。

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