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【ブックレビュー】漫画家、パーキンソン病になる。

 わたくし、今はデイサービスで高齢者のリハビリのお手伝いをしていますが、その昔は病棟ナースでした。看護師としてのキャリアのスタートは、神経内科病棟でした。「神経内科」と聞いてもピンとこない人の方がはるかに多いのですが、今後「脳神経内科」と変わるとも言われています。つまりは「脳外科」の内科バージョンです。
 脳外科が「手術をすることによって治療する」科であるのに対して、「神経内科」は「神経難病」を主に扱う科です。アイスバケツチャレンジで有名になったALS〔筋委縮性側索硬化症〕やMS[多発性硬化症]、SCD〔脊髄小脳変性症〕やそれ以外にもたくさんの「難病」の方がたのお世話をすることにンりましたが、一番多かったのがパーキンソン病でした。とはいえ、私がこの職場でお仕事をしたのは、平成元年からの5年半、大昔の話なのです。そして、それは北海道でのお話です。

 前置きが長くなってしまいましたが、今回私が読んだこのコミック単行本は、ある女性漫画家が体調の異変を感じでから診断を受けて、先進治療を受けるまでのあれやこれやを書いた本。それも、看護師が主役の「ナースコール」を連載していた、島津郷子さん。ナースコール連載当時はよく読んでいたので、ええ?って思いましたし、この本の存在を知ったときは何としても読みたいと思いました。

 で、ここからは あえて毒を吐かせていただきますが。そしてネタバレにもなっちゃいますが、なんじゃこりゃなのです。「え、え、え?こんな感じなの?」です。

 自覚症状が出始めてから、確定診断が出るまでが、グズグズ過ぎる。こんなん医療過誤じゃん!って怒りを覚えるし、医療漫画を描き続けてきた人なのに、実際自分の病気については驚くほど「他律的」。
 名医、権威といわれる医師は、患者をケースとしか見ていないように描かれている。

 私が神経内科ナースだったのは30年も前の北海道だったから、自覚症状が出てから正しい治療がスタートするまでに時間がかかってしまったのは仕方がないと思っていたけれど、21世紀の首都圏の神経内科がこんなにおそまつだなんて、もう、もう・・・。パーキンソン病っていっても、千差万別なので、島津さんみたいなケースもあるのだろうけれど、せめてこれはレアケースだと思いたい。このコミックを読んで「パーキンソンは診断に難航する」のが普通だと思ってほしくはないんだよ。(と思わず力説してしまう)

 その一方で、やっぱり・・・と思ったのが、「難病である自分」を受け入れるのには、時間がかかるということ。同じくパーキンソン病のマイケル・J・フォックスもかれの著書「ラッキーマン」で、最初に手の震えを感じてから、それを隠し、ごまかし、「普通を装って」生きる時期が長かったことを書いている。パーキンソンに限らず、自分や身内に起きる「大きな災い」を認めることって、簡単なことではないなと思うのだ。

 薬が効く、効かないで、動けるかどうかがきっぱり出てしまうのがパーキンソンの特徴。効いている間にもこんどは不随意運動(ジスキネジア)が出てしまう。動けないときには気持ちも悲観的になる。パーキンソンは実に厄介な病気。(であるがゆえに、障害者手帳を持つこともできる)

 この本は、ある治療が劇的に効果を示して心身の平穏を取り戻すところで終わっているが、彼女の人生はその後も続く。その後の人生も知りたいし、たとえコミックでなくてもいいので、ぜひ発表してほしいと、切に思う。

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