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精確さゆえの熱さ。HIFIMAN Jade Ⅱ レビュー

Hifimanのヘッドホンとヘッドホンアンプのセット

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Hifiman(ハイファイマン)のヘッドホン+専用ヘッドホンアンプのセット、「Jade II」をレビューします。

Hifimanはアメリカを拠点とするヘッドホンブランド。日本よりも海外で評価の高いブランドで、海外ハイエンドオーディオ誌「Hi-Fi PLUS」や「Stereophile」で最高級の評価を受けるのみならず、「TIME」や「Wired」といった一般紙でも「Best Headphone」に選ばれています。

ただし日本ではそれほどの認知はない。日本語HPの情報量が少ないためか怪しい印象が拭えないのですよね(損をしていると思う)。とはいえ、音元出版のVGPで毎年のように受賞するなど、オーディオ好きの中では日本でも評価が高まってきました。昔から好きなブランドなので嬉しいです。

今回レビューするモデルは、10年以上前に発売され、ファンの間でカルト的な人気を誇った「Jade」の二代目となるモデル。初代から引き続き静電型のシステムを取り、専用アンプが付属しています。

専用アンプは高品位な作り。ただし大きくて重い

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さっそくセッティングします。音源はAmazon music HDからMYTEKのBrooklyn DAC+へつないだのち、付属のヘッドホンアンプへと出力。サイズはご覧の通りです。重量は6kg。足に落としたら骨が砕けます。皆様もご注意ください。

ヘッドホンアンプは、オペアンプにTexas Instrumentsの高精度デュアルオペアンプOPA2107AOを使用。電源部は基盤レイアウトに工夫を凝らしてノイズ低減を実現し、筐体には航空機グレードのアルミニウムを採用とあります。マットな黒の塗装には重厚感があり、スイッチやボリュームの操作感にも精度が感じられます。高級機の風格に胸が高鳴ります。後述しますがバランス接続も可能です。

ヘッドホンは軽く、装着感もすばらしい

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ヘッドホンはこんな感じですね。特筆したいのは軽さと装着感の良さ!頭をすっぽり覆うサイズのヘッドホンですが320gと軽量で、ヘッドバンドおよびイヤーパッドも頭にしっくり馴染みます。軽さって大事だと思います。いい音だからこそ長く聴きたくなるわけですから。Jade Ⅱは、つけているのを忘れるほどの軽さと装着性です。

さてそのサウンドは。非常にいいですね・・・量感と輪郭を両立した低域には芯があり、その良質な低音を土台に、解像度高く、ヌケのよい中高域が躍動します。どの音もクリアで、もたつきがない。滲みやタルさがない。強い雨の後の風景がくっきりと見えるような、透明度が高く見はらしのいい音です。

静電型ヘッドホンというとその字面からか、繊細でナイーブな再生を想起する方もおられます。たしかに静電型のヘッドホンにはその仕組み上、微弱な音の拾い上げ、音の浮き上がりや消え際の表現に他の追随を許さない表現がある。

では低域の迫力は、高域の華やかさはないのか。そんなことはまるでない。特にJade Ⅱは元気よく闊達に鳴ります。専用のアンプがどの帯域の音もしっかりとグリップし、ベースの分厚さや腹に響く重さ、声のツヤや突進力はロックやジャズをぐんぐん駆動します。高音は華麗な輝きで耳を魅了しつつ、その中に芯や力強さも感じられます。繊細なのに線は細くない。

精確な定位がドラマチックさを生む

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ここで入力をバランス接続に替えます。これは可能な方はぜひ試していただきたいですね。Hifimanの特色の一つ、定位のよさがさらに向上します。特に縦方向の定位。それまでも左右、水平方向の定位は抜群なのですが、バランス接続にすると縦軸の音の移動をとらえやすくなる。左下から音が浮き上がってきたり、頭上を音が回旋したり。音の空間デザインが楽曲の説得力をさらに増します。

音場は自然な広がりを持っています。しかし広大というわけではないですね。割と手近で鳴る。レコーディングスタジオから小型のライブハウスくらいが、Jade Ⅱが最も得意とする音場の広さに思えます。オーケストラは少し縮こまった印象。音場の広さなら、同ブランドのSusvaraは遥かに広大でした。

ただしこれも好みです。ジャズやロックの空間の広さと熱気のバランスは、Jade Ⅱのそれがベストに思える。空間が無駄に広くないぶん、ミュージシャンの位置関係は指で指せるほど明瞭。音の移動感の表現力も相まって、楽器同士の絡み合いや音の行き交いは臨場感にあふれます。また楽器ごとの音色の描き分けも精確。楽器の材質やミュージシャンの個性ごとの音色をクリアに描き分ける分解能により、気づかなかった楽曲の意図にハッとさせられます。

音が団子にならず空間上でしかるべき距離を保ち、音色のニュアンスを描き分ける描写力もある。まず分離して、その後に結集する。だからグルーブが生じる。Jade Ⅱは音に誇張がないのにドラマチックに音楽を聴かせます。それは音を強めたり味付けしたりするのではなく、精密な定位と音色の描き分けによって、音楽の「分離→統合」を克明に表現することで生じている。精確さゆえの熱さ、というのがJade Ⅱの本質だと思います。

20万円以下で聴ける最高のサウンド?

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価格はアンプ込みで187000円。10万円代のヘッドホンは、SONYやゼンハイザー、FOCALに名機があって激戦区ですよね・・・ただし私ならこのJade Ⅱを一番に挙げます!何しろヘッドホンアンプがついてきますからね。質のいいUSB-DACさえあればすぐにこの音が聴けるのは大きい。

オーディオ好きの知るブランドではありますが、このパッケージングのシンプルさはむしろビギナーの方に相性がいいかもしれません。繋げばすぐ鳴る。「本当にいいヘッドホンってこういう音なんだ」ということを教えてくれる機器です。

最後になりますが、画像の通りデスクトップにもがんばれば置けました。Jade Ⅱを聴きながらのリモートワークは至福ですよ。気になった方はぜひどうぞ!

https://onzo.co.jp/products/498/