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ソジャーナ・トゥルース 1略歴

 イザベラにはきょうだいが十人はいたが、正確な数はわからない。イザベラは読み書きを知らず、家畜のようにこき使われてムチ打たれ、自分の子どもたちも売り飛ばされた。あるとき精霊の声が聞こえた。「前に進め。真実を語れ」とーー。

 『緋色病』のあとは、およそ220年前にニューヨークに生まれた元奴隷で、ソジャーナ・トゥルースという活動家の伝記です。ジャンヌダルクのようにある日天啓を受けた彼女は、ただ一人旅を続けながら、奴隷制と女性差別反対を訴える演説を各地で行い、多くの人の魂をゆさぶって南北戦争への機運を高めました。

 「ブラックライブズマター」からさかのぼること二世紀、当時のアメリカ社会と経済を当然のように支えていた奴隷制のありようを、当事者の証言から知っていただければと思い、この作品を選びました。

Classic Slave Narratives - The Voices of Women (ISBN:979-8668046454)より

Narrative of Sojourner Truth, Written by Olive Gilbert, based on information provided by Sojourner Truth, 1850

(著者の死後70年が経過しているため、原作の著作権は失効しています。翻訳文の著作権は訳者に属します。)

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ソジャーナ・トゥルースの略歴

 ソジャーナ・トゥルースは本名をイザベラ・バウムフリーといい、1797年ごろニューヨークで奴隷として生まれた。1806年に主人が死ぬと、トゥルースは羊数頭とともに百ドルで別の主人に売り飛ばされた。そのあとの四年間で、もう二回売られた。四度目の主人は優しかったが、妻はそうではなかった。

 成長したトゥルースは、近所の農場で使われているロバートという奴隷と恋に落ちた。二人の関係に気づいたトゥルースの主人は、彼らに別れるよう命じた。ロバートがトゥルースにこっそり会いに行こうとすると、ロバートの主人はトゥルースの主人が止めに入るまで彼をこっぴどくムチ打った。そのあと二人が会うことは一度もなく、ロバートは数年後に亡くなった。
 そのあとトゥルースは、トーマスという年上の奴隷と結婚した。四人の子をもうけたが、一人は死産だった。このほかに、主人に強姦されてできた子も一人生まれた。

  一八二六年、まだニューヨークで奴隷制撤廃の手続きが進んでいるとき、トゥルースは赤ん坊の娘ソフィアを連れて、奴隷として働いていた農場を逃れた。アイザック・ヴァン=ワグネンとマリアという夫婦が二人を保護し、一八二七年七月四日に奴隷解放令が発効されるまで自分たちのもとで暮らせるよう、トゥルースの主人に二〇ドルを払ってやった。

  ヴァン=ワグネン家に滞在中、トゥルースは自分の前の主人が不法に息子のピーターを別の奴隷保有者に売り渡したことを知った。ヴァン=ワグネン夫妻の援助を受け、トゥルースはピーターの主人たちを訴えて、数か月にわたる審理のあと、息子の養育権を取り戻した。不運なことに、ピーターは新しい主人にひどい虐待を受けていた。トゥルースは白人男性を相手どって裁判で勝った最初の黒人女性の一人になった。

 ヴァン=ワグネン家に住んでいる間、ある驚くべきスピリチュアルな経験をしたトゥルースは正式にキリスト教に入信した。一八二九年にニューヨーク市に移り、大勢の人と出会い、新しい経験を重ねた。

 一八三九年、息子のピーターは捕鯨船に乗った。航海中トゥルースが出した手紙は一通も届かず、息子が送った五通の手紙のうち、母が受け取ったのは三通だけだった。捕鯨船が港に戻った時ピーターはそこにおらず、トゥルースが息子に会うことは二度となかった。

 一八四三年は、バウムフリーがソジャーナ・トゥルースと名前を変えた年だ。神の精霊の「先に進んで真実を語れ」という声を聞いたあとのことだった(訳注:ソジャーナは「前に進む者」、トゥルースは「真実」の意)。トゥルースは友人に「精霊に呼ばれているから行かなくては」と語ったという。

 それ以来、トゥルースは奴隷解放運動に身を捧げ、女性の権利を求める活動家となった。大会や会合でスピーチをした。一番有名なのは、「私は女ではないのか?」という即席のスピーチだ。現存する「私は女ではないのか?」の記録は二通りあって、両方が巻末に収められている。ソジャーナ・トゥルースはその後も驚嘆すべき人生を送り、一生を通じて奴隷と女性の権利を擁護したのである。

 トゥルースは一八八三年十一月二十六日にこの世を去った。以来一世紀以上にわたって、彼女の勇気ある行動は、高い評価と賞賛を受け続けている。

1略歴 了 つづく

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