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取るに足らないエッセイ

「打ち間違い」

 大学在学中からよく言われていた。「返信は早く!遅くても24時間以内に!」
うーん、確かに。誰しも、返信が来なくてヤキモキしたり人に生活のペースを握らせたくない、と思うだろう。それに、返信が早い人の方が、仕事を頼みやすい。なぜなら、なんでも早くやってくれる信頼があるからだ。そんなわけで、自分もなるべく返信を早くしようと心がけていて(特にお仕事の連絡)、それが卒業した今も続いている。
 先日、用事があって家を出る前にどうしても4つくらいメールの返信をしておきたくて、慌てて全てのメールを書いていたら、
「お手数をおかけしてしまい、大変申し訳ありまへん。」
と打っていた。送る寸前に気がついて直したのだけど、もしかして直さないほうが、「この人は連絡をもらったら急いで返そうとしてくれているんだな!」と思ってもらえるのでは…?という余計な気持ちが一瞬頭をよぎった。そんなわけないか〜。でも、「申し訳ありまへん」なんてメールがもし自分に来たら、チャーミングな感じがして、許しちゃうな。皆さんはどうですか?そんなことありまへんか?

「モンステラ」


 大学2年の終わりに、部屋に観葉植物を置きたくなって、わざわざ遠くの植物センターみたいなところへ買いに出かけた。お目当てはモンステラ。結構ロマンチストなので、完全に花言葉に惹かれた。が、いざ目の前にすると、小さい株でも結構な背丈。持って帰るのも大変だし、これはどこまで育つのだろうか…という不安。でもせっかく遠くまで来たので、大事すると決めて抱えて帰った。
 育てるのはそんなに難しくないと聞いていたけどその通りで、数日に一回水やりと霧吹きをするだけでぐんぐん伸びて、新しい葉っぱが出てきて、それはそれは可愛かった。ちゃんと生き物だ…!と成長が嬉しくなって、「モンステラちゃん、おはよう〜」と話しかけたりもした。
 それから2年ほどが経った2024年の年明け。おかしい。下の方の葉から段々と枯れていく…。最初は、寒さが苦手だからかな?最近少し水やりの頻度が落ちたから?と思っていたけれど、どんどんと葉のツヤやハリがなくなって枯れていく。近所の植物屋さんに行って写真を見せたけれど、原因はわからず…とりあえず植え替えしたらどうですか?と言われ、すぐに大きい鉢にお引越しさせた。
 それから3ヶ月、なかなか良くならない。だんだんと葉が減っていっている。植物の病院があったら連れて行きたいけれど、近くにそんなお店はないし、背丈も大きくて難しそうだ。このまま枯れていくのを見続けるのかなあと少し不安に思いながら、今日も水をあげている。
 モンステラの花言葉は「嬉しい便り」「壮大な計画」。思えば大学最後の2年間、このモンステラのおかげで個展もミュージカルもうまくいったのかもしれない。それに力を使ってくれて、身を削って疲れちゃったのかなあ、と思う。ありがとう、そしてごめんね、モンステラちゃん。

「憧れのひぼたん」


 年明けくらいからず〜っと欲しいと思っていた子がいる。そう、ひぼたんである。ちっちゃい手のひらサイズのサボテンの頭に、自慢げに真っ赤なお花が乗っかっている。その色の鮮やかさに、確かな誇りを感じる。ぐぅ…かわいすぎる…。
 でも私はモンステラを今まさに枯らしてしまいそうな身で、新しい植物を迎え入れるなんて愚かな行為だ…と思っていたし、これは運命を感じた時に迎えよう、と心に決めていた。
 が、勘のいい皆さんならお分かりでしょう。そう、ついにその運命の日が来たのです!急遽決まったお仕事に向かう途中、たまたま通りかかったお店で、ひぼたんを発見。目が合った瞬間、頭の中で Love so sweet が流れた。ちっちゃいのに、堂々と背筋を伸ばしてこちらを見ている。植木鉢の色と形も好みに刺さった。「ウッ…。」ときめきつつも、一旦そのお店を後にして、お仕事へ。お仕事が終わって帰宅するぞ、という時になってもひぼたんのことが頭から離れない。もう一度お店に戻ったら、店員さんがこのひぼたんについて話してくれた。なんと今日入ってきた子らしく、人気ですぐにいなくなっちゃうのだと。次来た時にはないかもしれませんね〜なんて言われちゃったら、お迎えせずにはいられない。迷ってる場合ではない!今日は運命の日!!
 …というわけで、気づいたらお会計をしていた。店員さんが、まるで赤ちゃんみたいに大事にひぼたんを包んで袋に入れてくれた。愛されているね、ひぼたん。私も大事にするね。
 …さて、モンステラちゃんも、なんとか救いたいな。う〜〜植物の言葉がわかるようになりたい。

「売り場が変わるとき」


 これはあくまで本当に個人的な肌感なんだけど、本屋さんの売り場が変わる頻度が高くなっている気がする。昔はまるごとひとつの建物が書店だったのに、だんだんと本屋さんのフロアが減り、エリアが狭くなっている。悲しい。それに伴ってそれぞれの本の売り場もコロコロと変わっていて、最近は近所の書店へ行くたびに、お目当ての本がどこにあるかわからなくて迷子になる。
 そんな近所の書店のことを思い出すとき、それは昔の売り場の書店であって、今同じ書店に行ってもそれは思い出の書店ではない。今その書店に行くと、自分がなんだか別の世界に来たみたいな気持ちになってしまう。同じ場所に来ているのに、もうここにはない書店のことを想っている。
 本の売り場が変わるときは、世界が変わるときで、想い出が想い出のまま、上書きではなく別のフォルダに保存されている。

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