血球異常の考え方講演会

健康診断、受けていますか?

健康診断にもいろいろな検査項目がありますね。その中の代表的な検査である採血。肝機能や中性脂肪などの生活習慣病に関する項目が特に気になるところですが、血球という項目があると思います。今回、血球異常についての講演を聞く機会がありましたのでnoteしてみます。

日常診療で遭遇する血球異常の考え方


「日常診療で遭遇する血球異常の考え方」という講演を聞く機会がありました。演者は東海大学の大先輩でもあります、血液腫瘍内科教授 川田浩志先生でして、お話を聞けることを楽しみにしていた講演会でした。

赤血球が増加する多血症

まず講演の内容に入る前に、「血球」ってなにか、ですが、血液中の血球成分のことです。いわゆる赤血球、白血球、血小板のことですね。

まずは赤血球から。

赤血球の異常で比較的多く遭遇するのは貧血ですが、講演会では逆に赤血球が増加する多血症について教えていただきました。男性の場合、赤血球数600万以上、ヘモグロビン(Hb)18以上、女性の場合は赤血球数550万以上、ヘモグロビン(Hb)16以上が多血症に該当します。

脱水や飲酒、喫煙、肥満などの原因で、相対的に血液が濃縮されることで生じる仮性多血症と、赤血球が腫瘍性に増殖する真性多血症が主な疾患です。
どちらも血液が濃縮されることにより脳梗塞などの血管障害を発症するリスクが高くなりますので、注意が必要です。

貧血はめまい症状の原因にもなりますので、耳鼻科でも時々注意して結果を確認していましたが、多血症については水分摂取などを促す程度で、少し軽く考えていたことに気づきました。真性多血症は学生のころよく勉強した疾患。この疾患は普段はあまり症状がありませんので、健康診断で指摘され、診断に至る症例がほとんどなのだそうです。耳鼻科診療ではあまり遭遇することはありませんが、2次的な疾患を予防するためにも注意していきたいと思いました。

白血球増加で注意すべき疾患のひとつ、慢性骨髄性白血病

続いて白血球について。

白血球の増加する疾患としては、感染症などの炎症性疾患が一般的ですが、喫煙やストレスなどでも増加する症例も多いようです。

気を付けなければならない疾患は慢性骨髄性白血病です。急性白血病は明らかに白血球数が増加し、発熱、倦怠感などなどの症状もみられますが、慢性骨髄性白血病はほぼ無症状で、白血球数も正常よりやや多い程度。こちらも健康診断で指摘され診断されることが多いようです。血球検査結果で、正常の白血球のなかに幼弱な白血球(骨髄芽球、BLASTなどと表記されることがあります)が混在するので、そのような指摘があった場合は専門医への受診が必要です。

慢性骨髄性白血病といえば、フィラデルフィア染色体。なんのこっちゃ?と思われるかもしれませんが、医学部のテストで必出のキーワードでした。久しぶりに思い出しました。習ったのに忘れていることが多いなと実感。さらに私が学生のころは、治療は骨髄移植と習いましたが、現在は治療薬が開発され良好な成績が得られているとのこと。医療は様々な分野で長年築いてきた基礎の上にさらに進歩しているんだなと感じました。

白血球については減少する疾患として、周期性好中球減少症という疾患もあるそうです。これは21日周期で周期的に繰り返すようで、この疾患については私は認知していませんでした。常染色体優性遺伝の疾患で、1歳ごろから発症するようです。発熱、咽頭炎、口内炎などの感染症を周期的に繰り返しますが、成長とともに軽快し、30歳ごろには消失するようです。

血小板減少症にピロリ菌が関与する

最後は血小板ですが、特発性血小板減少性紫斑病についてのお話を聞きました。

特発性血小板減少性紫斑病とは、自分の血小板に対する抗体が産生されるために血小板が減少する自己免疫性疾患です。耳鼻科でも鼻血が止まらないなどで稀に遭遇します。人間が出血を止める機能を有するものには、血小板と凝固因子があります。ちなみに凝固因子の疾患で有名なのは血友病です。

自己免疫性疾患だと思っていた特発性血小板減少性紫斑病ですが、ピロリ菌が陽性の場合、ピロリ菌を除菌すると改善することがあるんだそうです。ピロリ菌は胃癌の原因とも考えられていて、なぜその菌が血小板に対する自己抗体に関与するのでしょうね。不思議です。血小板数が10万未満の場合は注意が必要ですので専門医に相談しましょう。

まさに温故知新の講演会でした

普段は耳鼻科の疾患について学ぶ講演会に参加することが多いのですが、このように他科疾患についても学び、知識のアップデートが必要だなと思いました。忘れていたことも思い出せますし、新しい治療や知見を知ることもでき、まさに温故知新の講演会だったなと思います。
これはきっと、仕事に関することだけではないでしょう。noteを始めてまだ数回しか更新していませんが、これを続けていくことでより良い医療、よりよい人生、さらには認知症の予防にもつながりそうです(最近、忘れっぽくなって家族に怒られてます)。そもそも、語彙力が乏しいので、そのあたりも学習していかなくては(五十の手習い、、)。来年は、医学以外のこともnoteしていきましょう。

温故知新、これからも大切にしていこうと思います。

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