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食べるを読む:パリの料理

 2010年に亡くなったシャンソン歌手の石井好子さんの「パリ仕込みお料理ノート」を読みました。以前紹介した米原万里さんを「文章だけでよだれを出させる名文家」と書きましたが、石井さんは、料理をつくりたくなる文章が素敵です。 

 短いエッセイのなかで、食べたり、教わったり、つくってみた料理をいったりきたり紹介するリズムが心地よい。冬といえば鍋、と始まった話では、かきの土手鍋やうどんすきなど日本の鍋をおいしそうに描き、フランスの鍋としてチーズ・フォンデュの魅力と庶民的なブイヤベースの海の匂いに触れる。そして魚つながりでアラのちゃんこ鍋を紹介して、おすもうさんの鳥の皮と野菜のちゃんこを今晩試そう、と思わせるまでわずか5ページ。

 パリ仕込み、と題してはいるけれど亡命ロシア人マダムが教えてくれたナスのいくら、ご飯にバターとみそ汁を入れる洋風ウツミ豆腐、お米を詰めたスウェーデン式ロールキャベツなど国籍もさまざま。自分の料理もいろんなところで教わったものでできているな、と気付けました。

●片山大

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