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めざし

胸が痛い。
息が苦しい。

ご飯も美味しくない。

美味しい、美味しいと
つぶやきながら食べても
本当は
美味しくない。

幸せだと、
これでも幸せなんだと言い聞かせても
その言葉の意味が
だんだん分からなくなる。

******


布団に寝転がって、
寝返りを打って、
床に頭をゴチンと打ち付ける。
そのまま動けなくなる。

めざしみたいだ。
あるいは捌かれる前のウナギ。

竹串で串刺しにされて
まな板に打ち付けられてる。

えら呼吸なのに、
水から引っ張り出されて
空気の中に連れ出されて。

これから、
調理されるところ。
でも料理人が見当たらない。

まな板に打ち付けたまま
どこかへ行ってしまったらしい。

このまま腐るしかないの?

******


部屋にひとり
横たわる。

この部屋にひとり。
一人だとしか思えないこの夜であるよ。

ただ朽ちてゆく
この体がもったいなくて
この夜を終えることさえ
できそうにないのです。

料理人サン
早く戻ってきて
美味しく料理して
食べてもらえませんか。

そうしたら
生まれ変わることさえ
できるかもしれない。

******

風が吹きすさぶ夜に
寝床は冷たく。

朝が来るまでこのままの
めざし。

29years old,1.2,Mizuki

絵を描くのは楽しいですが、 やる気になるのは難しいです。 書くことも。 あなたが読んで、見てくださることが 背中を押してくれています。 いつもありがとう。