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温泉学講座 in Kannawa No.6

温泉学講座 in Kannawa 第6回(2022/9/3)は、
シニア・マイスターの甲斐心也さんによる
「鉄輪に湧く神秘の”青湯”、その謎」でした。



※明礬岡本屋 ミルキーブルーの湯

※ゆふいん泰葉 コバルトブルーの湯

「地熱井から噴出する熱水中のシリカは、地表に噴出した直後には、ほとんどすべてが単分子、いわゆるモノマーとして溶存している(H₄SiO₄)が、時間の経過とともに重合を行い(ポリマーの形成)、最終的にシリカスケールとして沈殿することが知られている。(中略)熱水中のシリカ粒子は、その成長過程で一時的にコロイドになっていることが示されているのは、注目すべき点である。水中でコロイド状シリカの合成実験を行ったところ、白濁した青色溶液が得られたことから、コロイドシリカが温泉水の呈色(青色)に関与している可能性は十分にあると考える。(中略)温泉水が青色を呈するための必要にして十分な条件は、高温熱水の流入による多量のモノマーシリカの供給、分子上のシリカが重合を行うための温泉水を貯水する地形の存在の他に、その貯水槽がコロイドシリカの滞留時間が十分となる物理化学的条件に置かれていることであると推察される。」

大沢信二・由佐悠起:温泉の色について
(青色温泉水の成因に関する一考察)
大分県温泉調査研究会報告48号,43,46,1997.

先日、温泉道に復帰した施設で露天、滝湯、蒸し湯、砂湯と内容は充実しているが、いずれも混浴が弱点。(中略)滝湯の色をみて驚いた、青湯である。そういえば「神和苑」や「かまど地獄」に近いのだから可能性は高い。帰りに主人に声を掛け聞くと、まちがいなく天然青湯だ。「神和苑」も「焼肉慶松園」もなくなり、温泉道に残された青湯は「いちのいで会館」のみ、一日も早く青湯につかれる施設をオープンすべく主人に進言した。

2m四方ほどの小さな内湯と洗い場、ここは掛け流しで透明感のある淡いブルー。そこから石段を10段ほど下ると庭園露天風呂が出現する。ひとつはまさに「鉄輪ブルー」で、もうひとつは青白色、いずれも40℃ほどに調整されて適温。秋の日差しの浴びながら、ゆったりとして過ごす。

22.4.4Newsポストセブン 青く輝く幻想的な源泉はまさに“水モノ”だ。支配人の佐藤裕史氏が言う。 「源泉は生モノですから、“かんなわブルー”と評判だった青湯は以前のようなコバルト色からは減色しました。しかし、ここ数年は青湯も色が戻ってきていて、日によりますが青みがかった色の湯が出るようになりました。中島様をご案内する離れのお部屋『梅』は、本日の内風呂の中でも特に青みが出ていました」

貸切湯のみの施設で、家族連れには良いのだろうけれど、一人での入浴には割高だ。この日は一番安い「万葉の湯」を選んだが、それでも45分で¥1000也。とても家族では入れそうもない小さな浴室で、しかも38℃でぬるい。茶色の湯垢のような湯の花が舞う、特徴のない湯だ。¥2000の「照湯」は内湯と露天、広めの休憩室があり、露天は青湯だ。悔しいので、帰りに写真だけ撮ったけど、二度と来ないぞ。
※「粋房おぐら」→「別府おぐら」

天井の低い不思議な通路を通り抜け、浴室のドアを開けると、湯気が充満した中に、ぼんやりとほの青い湯が見えた。ここの源泉は泉温97℃の沸騰食塩泉で、PH8.9のアルカリ性であれば、いわゆる「青湯」である可能性が高い。実は平成23年12月に初めて訪れた折、見事な「青湯」に遭遇している。その日の記録によれば、「透明ポリ波板の天井から太陽光が差し込み、青みを帯びた透明な湯の色を輝かせる。」と書き残している。(中略)さておき、鉄輪らしいダシ塩味と、独特の芳香、そしてはっきりとしたツルツル感があり、なかなかの良泉だ。
※ホテル鉄輪

かまど地獄は1丁目から6丁目まで6つの温泉池があり、1丁目は坊主地獄もどきの熱泥地獄、2丁目は鬼が仁王立ちしている噴気地獄、3丁目はコバルトブルーの美しい池、4丁目も熱泥地獄、5丁目はブルーグリーンの一番大きな池、6丁目は血の池地獄のような赤い熱泥地獄です。
 入浴できるのはコバルトブルーの3丁目の湯で、湯に溶け込んでいたメタケイ酸が徐々に凝固してシリカとなり、このシリカが青い光を反射するので、青く見えるのです。この塩化物泉の青湯は全国的にも珍しく、数えるほどしかありません。メタケイ酸が豊富なので美肌効果があり、ほのかな塩味と、独特の芳香があります。
※かまど地獄

※おかたの湯

つい最近、SNSにこちらの情報がUPされていて、新しい「青湯」の出現に矢も楯もたまらず、駆け付けた。大きな窓ガラス越しのテラス部分に2つの露天風呂、こちらは透明感の
あるコバルトブルーの湯。青湯特有のスベスベ感もあります。 青湯は湯に含まれるシリカの重合具合により、透明→透明な薄い青→透明な濃い青→青白濁と色が変わってゆく、貴重なものなのです。
※湯けむりの宿 はなみずき

やはりここの青湯はすごい、きれいだ、神和苑と双璧だろう。平日とあって先客はひとり、すぐに貸切になった。食事代を800円と考えれば、入浴料500円は納得だが、団子汁の味がもうひとつだ。42℃と40℃の湯温調整もさすが、しっかりとした塩味で、そこそこのつるつる感もある。家族湯ができたとの掲示、食事代は別で¥3000とか、それでも大浴場はイヤな人がいるのだろう。何はともあれ、この美しい色は別府の宝だ。

「いちのいで会館」

建物に5m四方の湯船が2つ並び、一番奥の湯口からメタケイ酸を多量に含む源泉が掛け流されている。源泉温度は98.2℃で、この季節でも供給量はチョロチョロ程度だが、そのおかげで青湯は美しい色を見せる。奥は43℃で熱め、手前が38℃のぬるめだ。奥が透明度が高く、手前は青白濁、この湯の時間経過による色の変化を、目の当たりにできるのが好ましい。思いの外、ツルツル感はなく、塩味も薄めだった。他に露天風呂もあるようで、次の楽しみとした。
※小鳥のたよ (閉館)

清掃中のため受付で少々待たされたが、貸切で一番湯を使う。温泉冷却装置「湯雨竹」で冷やされた湯が内湯と露天風呂に掛け流されていた。新しすぎる湯はこれから青くなりそうな気配を見せて、朝日にキラキラと輝き、植え込みの散り残しの紅葉が湯面を飾っている。ツルツル感や塩味はそれほど感じられない。温泉チャンピオンの郡司勇が、「ブルーハワイの湯」と呼び、濁り湯の西の横綱に押した記事が誇らしげに掲示してあった。

郡司勇氏はここの湯をカクテルの「ブルーハワイの湯」と呼んだが、私には何故か露草の「はかなさ」が感じられる色だ。露天風呂に出ると陽光を浴びた湯は明るく輝き、青空を映した「空色」に見える。
※奥湯の郷

高級旅館で敷居が高いと感じていたここを訪ねた。案内を乞うと気さくな対応で、貸切の大浴場に通された。御影石の八角形浴槽には東屋風の屋根が架かり、眺望はないが高級な印象の露天風呂だ。これから青くなることを予感させる上品な湯は、PH9.2のつるつる感とかすかな塩味がある。洗い場は析出物がうころ状に付着して、メタケイ酸の濃さを物語っている。浴後、ご亭主と話ができ、昨日から溜めている青みの強い女湯を見学させてもらった。
どこかの源泉を引き湯しているようで、その過程で冷えるらしく、他の青湯に比べて投入量が多い。内湯では湯口からザバザバと惜しげもなく注がれている。贅沢なことだが、この浴槽の大きさと投入量では青く変化する暇がない。しかして、かすかに青湯の気配を感じさせるだけだ。ツルツル感や塩味もほとんどない。この辺りでは、泰葉の湯が一番の様だ。

※御宿一禅
※野蒜山荘
貸別荘由布の風屋(おそらく泰葉からの引き湯)

この日も貸切、気温が下がり源泉の供給量が多いせいか、いつもに増してツルツル感が強い。ツルツル感は新鮮湯のあかし、しかし青さは薄い、両立できない無いものねだりだ。ほの暗い浴室に眩い湯があり、シリカを堆積しながら、静かに流れだす。地下500mから湧き出す、劇熱・神秘の湯だ。
※ゆふいん泰葉

やはりここの湯は美しい。秋の晴れ渡った青空を映し込んでいるようだ。遠くには由布岳を望み、ロケーションも申し分ない。湯はかすかな塩味と弱いツルツル感で、それほど個性を主張しないが、この色は他に代え難い特徴だ。開湯直後ゆえに入浴客が少なく、ゆったりと湯を楽しめた。
※束の間

ずいぶん前から来て見たかったのですが、ようやく念願がかないました。国道210号線から宝泉寺温泉に向かう途中にあり、900坪の敷地に建つ完全独立型の10棟の家族湯が並んでいます。98℃の源泉を竹製温泉冷却装置(湯雨竹)で、瞬時に44℃まで冷まし、コインタイマー方式で常に新鮮な湯が提供されています。(中略)泉温98.2℃の沸騰泉で、PH8.8のアルカリ性、ナトリウムー塩化物泉で、メタケイ酸156mgとあれば、「青湯」の条件ドンピシャリです。(中略)湯口から提供される湯は無色・透明ですが、浴槽にスミに確かにシリカの白い痕跡が見られます。受付のおばちゃんに青湯の素晴らしさを吹き込んでおきましたので、そのうち青湯に浸かれるようになるかもしれません。
※四季彩の湯

沸騰泉のアルカリ性塩化物泉で、メタケイ酸(シリカ)を豊富に含むと、「青湯」になるとされているが、湯によってその色は様々で、ここはややくすんだ感のある色だ。メタケイ酸の含有量は73.4mgと意外なほどに少ないためだろうか。ツルツル・スベスベ感もやや控えめだが、浴槽の床が心地よいほどに滑らかなのは、シリカの堆積のためだろう。
※はげの湯 豊礼の湯

※わいた山荘
※旅館山翠

「サンゴ礁の海の色のような乳青色の湯が輝いていた。源泉は34℃、湯量155リットル/分、硫化水素の臭いが僅かに漂い、肌にぬめり感が残る上質な湯であった。」 PH9.7
※高田グリーンランド

海地獄の色は本物の海の色、「青」ではなく、「青緑」色です。これは、太陽光を反射する微粒子が、「青湯」ではシリカであるのに対して、「海地獄」はカオリナイトであるからです。

「海地獄の熱水は、基本的に水分子による太陽光の長波長吸収によって着色しており(青緑色)、時として0.025~0.45μmサイズの浮遊微粒子が出現し、それによる太陽光のレイリー錯乱によって青みが加わり、熱水の色を緑青にする」大沢信二・恩田祐二・高松信樹(2003):海地獄の呈色に関する色彩学的・地球化学的研究,大分県温泉調査研究会報告,54号,15-24.

ナトリウムー塩化物泉、94.5℃、ph3.9、成分総量4,652mg、メタケイ酸605mg 平成31年1月28日

【甲斐心也の研究員ZOOM発表発表】
 
「地獄巡り誕生と発展の歴史」
 
「阿蘇火山の4度の大噴火が大分にもたらしたもの」
 
「地獄ハイキング今昔」

シニア・マイスター甲斐心也
大分県における「メタケイ酸を多量に含む塩化物泉」の研究

シニアマイスター制度制度とは



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