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【2023年夏 富士登山記―前編―】

はじめに


初登山。

2020年3月、高尾山~景信山往復の終盤で軽々と階段を駆け上がる登山少女たちを尻目に、涙目になりながら足を持ち上げ、翌日足を全く動かせなかったあの頃から…

初故障。

2022年1月、大倉尾根(通称バカ尾根)を利用した塔ノ岳往復の下山時に足を痛めてしまい、日が落ちるまで足を引き摺りながら下山したあの頃から…
数々の試練を目前にしながらも、登山初心者なりに山と向き合ってきた。

登山をある程度こなしてきた日本男児たるもの、到達したい領域がある。
日本の頂。富士山の天辺である。

今回は、その富士登山を成し遂げた男の体験記の一部始終をここに記す…。

今回の登場人物

T君
フィジカルおばけ。有り余る体力でどんな山もヒョイヒョイと登ることが出来る。

H君
俺を登山道に(引きずり込んだ犯人)誘ってくれた張本人。長いこと登山を経験しておりノウハウが豊富。

ワイ君
登山歴2年ほどのビギナー。この中ではおそらく一番体力的に不安。

富士登山までの道のり

富士登山をすると決めた時から立てられていた登山スケジュールは以下の通り。

入念。

8月10日と8月11日を登山日と決め、8月10日については、何か月も前から有給を取得して臨んでいたが、その日実際に登るかどうかは直前まで不確定だった。

その大きな理由は天候。この時期はちょうど台風6号が日本列島に接近していたタイミングで、週間天気予報では雨マークがずっとついていたからだ。

雨模様で山頂での景色を楽しめないだけならまだしも、真夏でも気温が一桁台にまで下る富士山頂でプロでもない一般人が雨風に撃たれながら登るのは危険である。山頂で日の出を見ようとプランを組んでいたので尚更だ。

最悪中止になる事を覚悟しつつ、登山2日前まで粘ったところ…。

ワンチャン。

実際に登頂する予定の11日は晴れ予報…!

10日は曇りのち雨予報だが、午後には山小屋に着いて就寝するだけと考えたらまだ許容範囲かも知れない。風速もこの期間だけは落ち着いている為、ワンチャンある…!

…勿論、山の天気は急激に変わる事は重々承知の上なので、当日の撤退も視野に入れつつ、登山決行の判断を下した。
8月10日。6:00に起床後、支度を済まし7:00に家を出る。

ちなみに富士山の天辺を目指すのにもいろいろなルートがあり、その中で我々は富士宮ルートを利用することとなっていた。

富士宮。

山頂までの到着時間が一番短いルートではあるものの、短時間で一気に高度を稼ぐタイプの山道なので、高山病になるリスクが高いのがデメリットと言われている。

富士宮五合目に向かうコスパの良いバスが三島駅から出発する為、優雅にグリーン車に乗って三島駅を目指した。

その間も空模様はあまり芳しくなく、T君にいたっては途中で通り雨に撃たれてびしょびしょになってしまったというLINEを送信しており、正直不安であった。バス停到着後の撤退も十分視野に入る。

10:00に三島駅着。T君、H君と合流しバス停に向かう。

日差しがギラギラに照り付けており、バスが来るまでの待ち時間で汗だくになってしまった。下山するまで身体を綺麗にする手段がボディーシート以外にない為、可能な限り汗だくになるようなことはしたくない。

若干萎えてしまったが、日差しが照り付けているという事は天候が安定している証拠。 期待を抱きつつもバスに乗車する。

…しかし、山の天気は変わりやすい。平地は快晴でも、富士山そのものは大荒れという可能性もあり得なくはない話なので、五合目到着時点での撤退も覚悟はしていた。

利用する乗り物は普通の路線バス。二時間近く揺られる予定のため、なかなかに地獄である。峠道を走る際には振動が一段と大きく感じられるので、酔ってしまわない様に可能な限り睡眠で時間をつぶすようにした。

車酔いこそしなかったものの、ケツが痛いわザックも抱えた状態で席が狭くて足が攣りそうになるわでなかなかに辛かった。

快晴。

途中、バスが「ぐりんぱ」と言う富士山の麓にある遊園地に寄った際、雲一つ掛かっていない雄大な富士山が我々を出迎えてくれた。少なくとも撤退の線はなくなった。

富士登山前半戦

12:50。富士宮五合目に到着

バス降りてすぐ。

この段階で標高約2400m。身体が高所に慣れないうちにいきなり登ってしまうと高山病になりやすいので軽食を食べたり、休憩所内を見たりする。

「金剛杖」を買って山頂に向かうまでの途中で寄る小屋に焼き印を押してもらおうかとも考えたが、今回は夜間での行動がメインとなり、深夜帯では焼き印を押してくれない場所が大半なので今回は購入せず。

(値段が)高い。

十分に休憩をして、富士山保全協力金を払っていざ登山開始。

標高が高い分、気温自体は地上と比べて低くて涼しいのは確かだが、日陰がないのでもはや日差しが痛い。日焼け止めとサングラスはマストアイテムである。

なお、普段登るときにポールは使わないが、今回はある程度長丁場になる事を覚悟して登山序盤から使う事とした。途中で足が疲れて動けなくなっちゃうのは怖いからね。

順調に登り進めて六合目、新七合目と来て…

即到着。

…もう宿泊先の山小屋に着いてしまった。
結構ギリギリなタイミングで予約を取った為、八合目あたりの小屋を選べなかったのが原因ではあるが、あっさりと初日の目標を達成してしまった。登山開始から2時間そこそこである。

ここに至るまで綺麗な景色がずっと続いていたので気持ちよさから一気に駆け上がってしまった。

雲一つなし。
色鮮やか。

ともあれ、宿泊する山小屋に到着したので荷物を降ろして後は夕食を食べて寝るだけ…と思ったところ、H君より「荷物を降ろして、30分くらい登ってからまた小屋に戻ろう」と提案があった。

「暑いし小屋で一休みしてぇ~」と思ったが、登頂の成功率を上げる為の事前ウォームアップとのことだったので、休みたい気持ちをいったんは抑えて登り続ける。この行動が後々効いてくるのである。

(標高が)高い。

3000m地点で折り返して小屋に戻り、夕食を食べる。物流のない中で提供されるカレー。ありがたい限りである。なお、夕・朝の食事付きのプランで予約しており、この時点で明日の朝食であるお弁当も渡される。

美味い。

夕食を食べたら時刻は18:00、後は翌日の0:00の出発に備えて就寝するのみ。

なお、この時点で風邪を引いている時に近いような頭がフワフワした状態になっていて「高山病の前兆か…?」と若干不安であった。頂上までは道のりが長い。起床時には治まっていることを祈りつつ眼を閉じる…。

後編に続く…


黄昏。

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