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量から質へ

公私に関わらず、SNSにおける友達の数が「自己への評価基準」の一つともなる時代。しかし、実際にそれらが有益に作用している人はどれ位いるのでしょうか?「量」を増やすことに労力を惜しまず、実際の「質」に関しておろそかになっているように感じます。

人脈が広いことを良しとし「いいね!」の数を競い合うような「人生公開ゲーム」に、実は疲弊している人も多いのではないでしょうか?事実、リアル社会においても対人関係によるストレスが大きなウエイトを占め、ストレス社会と言われて久しい現代において、自らそれらに積極的に関わっていくことは、あまりにも自虐的で非生産な行為に思えます。しかし、バーチャルフレンドというキラキラしたフレーズに惑わされ、ついつい繋がってしまうのがリアルなのかもしれません。

オックスフォード大学のロビン・ダンバー博士が行った研究で、3,375人のFacebookユーザーがどれだけネット上で交流をしているかデータがまとめられています。
① 実際のやりとりをする上限の数 …… 150人
② 困ったときにネットで共感してくれる数 …… 13.6人
③ 困ったときに実際に手助けしてくれる数 …… 4.1人
友達の上限が150人であるのは、人間の認知に限界があるからであり、実際に手助けしてくれる数においては、Facebook利用の有無や「量」に比例していないように感じます。親身になってくれるのは、いつの時代も両手で抱えられる「量」だということであり、「質」の高い関わりを持てるリアルな数字であると感じます。

使い方によっては、Facebookは人脈や視野を広げるメリットがあるのも事実です。しかし、過剰に関わり続けると「類は友を呼ぶ」という言葉があるように、同じ思想を持った人で集まる傾向が強くなり、その結果、新たな価値観を得る機会が減っていきます。思考が凝り固まり、似たようなアイデアを「量産」していては、新しい価値創造は困難でしょう。また、それらの問題に気付くこともなく、増え続けるルーティーンに追い回され続けなければいけません。

デンマークの「幸福度研究所」が、一週間のFacebook利用に関する実験をした結果、通常通り利用を継続した人に比べ、利用を中止した人の方が「幸福度」が向上したそうです。また、実生活における「人付き合い」が増えたり、「人付き合い」に対する満足度が向上するなど、リアルなコミュニケーションの「質」が高まる結果を得ることができました。

実際、毎日自慢するほどの人生を歩んでる人は数少なく、投稿を目的に既成事実をつくる人たちが後を絶ちません。他人と比べることを止め自分らしく生きることで、平等に与えられて24時間をよりリアルに堪能し、自身を磨き上げることができます。また、そこから生まれた知識や経験を継続・発展することで1人で妄想する能力が高まり、新しいアイデアが生まれる力を身につけるよいきっかけとなります。ディスカッションやブレインストーミングは一定の「量」に対する価値はありますが、他人とコミュニケーションは協調と排他の葛藤であり、自身の自由な思考を奪う結果を導き、「質」の高い考察の妨げにもなります。

もしかすると、友達の数を競い「いいね!」を欲する人たちは、自分に対して不安のなのかもしれません。大切なのは、自分を磨き上げ、自身がランドマークになることなのに…。

生活において「量」と「質」を天秤にかける局面は、幾重にも存在します。どちらを取るか判断に困ったら、ぜひ、自分がどう見られるかではなく、自分が気持ちいい方を選んで欲しいと思います。それが結果として自信につながり、意図せずとも「いいね!」とリアルな体験をする機会も多くなるのではないでしょうか?

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