何かを作るってきっと頑固と柔軟の隣り合わせ 映画『繕い裁つ人』
正直なことを言えば、ファッションにはあまり興味がない。
そんな私だけど、“こだわりの一着”は欲しいかも・・・と思ってしまった。
主人公の市江が作るのはデパートに置いてある多くの服のなかにある1着ではない。南洋裁店のお客様のためだけに作る、オンリーワンの1着だ。メイドインジャパンどころではない。メイドイン南洋裁店なのだ。
南洋裁店の服は、その人の人生に寄り添い、その人の形を一緒に作る。必要があればお直しをし、新たな息が吹き込まれる。そしてまた共に歩き出す。
市江は、オリジナルの服を作らない。先代の祖母が作った服の仕立て直しとサイズ直し、祖母のデザインを流用した新作を少々。
それは、祖母の服を愛し、祖母の服を大事に着てくれるお客様を大切にしているから。
そんな市江に、デパート勤めの藤井は、「ブランド化しないのか」「市江がデザインした服を作らないのか」と強く問う。
そんな藤井の言葉や態度が、頑なな市江の心の中にそっと閉まってあった密かで強い思いを、少しずつ揺れ動かす―――。
「自分にプライドを持つ必要はないけれど、自分が作るものにはプライドを持たなければならない」
これは、私がものを作る端くれとして常々思っていることだ。
もの作りに、頑固さはきっと大事だ。だけど、同じくらい柔軟さも大事だ。その兼ね合いというのは非常にむずかしい。
そして、古きを守ることと新しきを求めることも、同じくらい大事で、同じくらい非常にむずかしい。
私はこれからどんなものを作っていこう。
どんな服を着て生きていこう。
そんな思いとともに、背筋が少し伸びた。
映画 繕い裁つ人
http://tsukuroi.gaga.ne.jp/#
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