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SONY WF-1000XM3 を購入3ヶ月で紛失し悲嘆に暮れていた僕が AirPods Pro を手にしてふるえた話 (2)

到着してや以来、僕はすっかり AirPods Pro に耳ったけだ。前回は興奮のままに書いてしまったが、一呼吸おいたことでその間に製品に対する印象が安定してきた。好きなアーティストの曲を中心に様々なジャンルの音楽を聴いたり、映像作品も観てみたところだが、もはや AirPods Pro は僕の耳になってしまったかも知れない。

閑話休題。

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実のところ僕はカナル型というイヤフォンに良い印象を抱いていない。これまでに試してきた有線のカナル型イヤフォンは、いつも外耳を密閉するとともに世界が狭まったかのような圧迫感を僕に与えてきた。コード同士やコードが衣服に擦れるたび耳元に這い上がってくるボソボソとした囁きもイヤでイヤで仕方がなかった。しだいに距離をおき、オープン型のイヤフォンやヘッドフォンに傾倒するようになったのはそういうことだ。

しかし人伝に WF-1000XM3 のノイズキャンセリングのすこぶる好意的な評価を耳にすると、それはたいそう魅力のあることで、カナル型と言えどもその無口さとワイヤレスという前提であれば僕と上手く付き合っていけるかもしれないと考えたわけである。

結果的にイヤーチップに一工夫加えた WF-1000XM3 は、これまでのカナル型イヤフォンとは一線を画す付け心地で満足のいくものだった。しかしそれでも時折り感じさせる窮屈さにはややモヤモヤしたものの、構造上致し方ないものと割り切れるレベルにはあった。


Fitting / 装着性

当然のこと心配されたのは AirPods Pro が Pro になってオープン型からカナル型へと形を変えた点であった。発表直後ではあらかじめ試してみようにもそのような場所はなく、後日試すことが出来てその結果購入を決断したとしても、売れ行きが激しければしばらく手に入らないかも知れない。WF-1000XM3 を失くした、文字通りに穴を埋めるためには、僕には直ぐにでも代わりが必要だったわけである。

やぁ。同じようにカナル型に不安を抱える諸君、朗報がある。

AirPods Pro は窮屈さや圧迫から無縁の存在だった。代わりの言葉が在るか知らないが AirPods Pro は厳密にはカナル型とも言えないのかもしれない。

カナル型といえば、イヤフォン本体に付属するイヤーチップを用いて耳に栓をするように挿入し固定する。ところが AirPods Pro は本体の形状が耳の形状に沿った絶妙な曲線をもってデザインされており、本体そのものが耳への固定の役割をもっているように思える。

試しにイヤーチップを外した状態で耳に挿れてみたところ、危うさはあれど本体のみでも耳にある程度固定できてしまうことに気づいた。イヤーチップが支柱として重要な役目を負っている点に変わりはないが、それのみに頼らず本体の形状も利用して非常にうまく重力に抗うようなバランスの取られた設計になっているのだ。

その結果イヤーチップを自分好みのもの(S • M • L の3サイズが付属する)に調整しさえすれば、例え走ったとしても落ちる不安を感じさせない固定性能を持ちながら、カナル型特有の圧迫するような窮屈さを感じさせないという快適な装着性を実現してしまっている。

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WF-1000XM3 もイヤーチップのみならず本体の形状を用いた工夫で3点から固定するという装着性を持っていたものの、本体が耳殻にすっぽりと収まるほど小型ではないためイヤーチップにかかる比重はやはり大きく、耳の穴にかかるテンションは大きかったように思う。


Testing / 装着状態テスト

そして。カナル型を使い慣れていない僕らが気になるのは、メーカーやモデルによって異なる形状のイヤフォンを、さらにそれぞれが異なる形状の人間の耳に挿すという場合に、何を以てメーカーの期待する装着状態を確保できたと言えるのだろうかという点だ。

きちんと密閉ができているような、そうでないような。もし上手く装着できていないのであれば本来実現できているはずの音質を引き出せていないのかも知れない。だがそれを判断できるのは自分でしかなく、かくいう自分も普段カナル型のイヤフォンを使用していなかったこともあり、WF-1000XM3 装着時に確証を持てずにいた。

AirPods Pro の使用で目から鱗であったのは、その装着状態に対し端末と OS 側から「お墨付き」を得られる点が驚きだった。

iPhone 側で Bluetooh 接続の環境設定を表示した後、AirPods Pro の環境設定内にそれはある。「イヤーチップ装着状態テスト」だ。

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このテストが可能なのは、後述するノイズキャンセリング機能の実現にも一役買っている AirPods Pro 本体の「耳の内側を向いたマイク」のおかげだ。

テストを実行するとしばらくの間 Tycho の “Awake” が再生され、AirPods Pro が耳の内側での音の漏入・漏出具合を取得して解析する仕組みとなっており、その結果が良好か否かを OS が画面上で知らせてくれる。ハイエンド・オーディオ・アンプにも部屋の形状に基づいてスピーカーの反響音テストを行い出力を最適化する仕組みがあるが、それに通じる取り組みを感じさせる。初めてや不慣れなユーザーに対し、これ以上の配慮があるだろうか。

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簡単に真似は許してもらえそうにない AirPods Pro の作り込みへの驚きはさらに続き、無観客試合となって単なる僕の独白となりそうなこの記事は順調にその長さを伸ばし (3) へつづくのであった。

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