見出し画像

【詩】 牛の背に

知らない道を運ばれていく
知らない牛の背に担がれて
どこかよそよそしいような
牛の体温が伝わってくる
ゆったり揺れる大きな背中
たがいちがいに上下する肩甲骨
リアルなつくりものみたいな角
高い木の先がゆっくり空を滑る
涼しくて心地よい空気が降りてくる
この牛には牛飼いがいない
人けのない森の道を
黒々した巨体が
人間を一体、背に乗せて行く
道の先は目に見えない
この牛は足音がしない
この牛と口がきけたらと思いかけて
牛の背に揺られるこの道のりが
ひとつの終着点かもしれないと
思いなおしかけて
指一本も動かせない体で
知らない道を運ばれていく
知らない牛の背に担がれて





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?