見出し画像

【詩】 羽根が落ちる間に

この白い羽根が
地面まで落ちる間に
きっといろんなことを思い出して
思い出せるかぎり
いろんなことを思い出してから
ひとつひとつ丁寧に忘れていったら
だんだん頭が空っぽになって
心が空っぽになって
体が軽くなって
風に吹かれたら羽根みたいに
舞い上がって
地面まで落ちる間に
きっといろんなことを思い出して
思い出せるかぎり
いろんなことを思い出して
でも残像はだんだん薄くなっていって
何度もくり返すうちに
あんまり思い出せなくなって
そしたら私はどこにいるんだろう
遠い風にさらわれた羽根のように
もう私には私が見えない
そして地面まで落ちる間に
思い出せるかぎりのこと
もうほとんどない
思い出せるかぎりの記憶を
それが私であるかのように
私そのものであるかのように
たいせつに
ひとつひとつ丁寧に
思い出していくんだろう
そしてひとつひとつ忘れていきながら
私は私を失っていくんだろう
この白い羽根が
地面まで落ちる間に




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?