【詩】 朽ちかけた小屋

朽ちかけた
剥きだしの柱に
もたれかかって
壁や天井に形どられた
四角く薄暗い空気を
眺めていました
息を吐くたびに
口から私が流れ出て
床に広がって
古びた木目の板に
じわじわと
沁みていくようです
あそこの隙間の暗がりに
流れ出した私の一部が
滞って澱んでいるようです
それは姿のない
暗闇の中の生き物のように
じっと静かに 無感情に
こちらを見ているようです
私の体は溶けかかって
崩れかかって
柱にもたれたまま
動けないというのに
目だけはしっかり動いて
私と私の目が合います

私の中のすべての言葉が
ほどけて溶けて消えていきます
空中で溶けて空に紛れていく
光の粒のように
溶けて見えなくなるのです
もうここには何もない
ここには何もない
この朽ちかけた
薄暗い木目の小屋と
投げ出されたまま動かない
この静かな心との間に
境い目なんかないのです





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?