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【詩】 ビー玉

たとえば夜の星空が
ゆっくりグラデーションしながら
赤い夕焼け空に変わっていくような
ばらばらのガラスの破片を
床に落としたらがしゃんと音がして
ガラス細工の白鳥が現れるような
さかさまなことばっかりだ
ビー玉いっぱい握りしめて
ぱあっとはなしたらくるくると
螺旋を描いて転がっていく
どこか深い下のほうではさ
きらきらビー玉降ってきて
ひれが生えたケンタウルスとか
青い龍とか光る鯨がびゅんびゅん泳いで
交差点で信号待ってるみたいに
イソギンチャクみたいにじいっとしてさ
通学路沿いのコンクリート塀の
まだらに黒ずんでたのを思い出してさ
はやく行かなきゃいけないのに
はやく行かなきゃいけないのに
忘れものばっかり気になってさ
もったりぼやけた思い出のなかに
立ちつくしてしまうよ
子どもみたいに泣いてしまうよ
もう涙が出ないけど
かわりにビー玉降ってくる
きらきらきらきら降ってくる
月の光がうっすらとどく
青く透き通った海の底でさ
はやく行かなきゃいけないのに
そんなことすっかり忘れてさ
交差点で信号待ってるみたいに
いつまでも変わらない信号待ってるみたいに
立ちつくしてしまうよ





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