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【詩】 靄の中

こんなにしずかな良い晩に
街灯がぽつんと立つ路地で
聞こえてくるのは川の音と
ときどき遠くで車の走る音
こんなにしずかな良い晩に
頭の中には靄が詰まって
あの白いやらかい街灯の光が
入ってくる隙間がない

濃い靄の底に
仰向けに横たわって
じっとしている
ぬらぬらした生き物の
頭の中にも靄がかかって
何をイメージしても
靄に隠れて不鮮明だ

仰向けのままの生き物は
———なにせ濃い靄なもので
向こうにあるのが天井なのか
空なのか水面なのか
わからないまま横たわって
詰まってるのに何もない
ぼやけた頭の中を覗いて
眠る気にもなれず
動く気にもなれず
仰向けになったまま
背中がくっついてしまいそうな
布団なのか川床なのか
それともここは
靄が詰まった頭の中なのか
わからないまま横たわって
眠る気にもなれず
動く気にもなれず

こんなにしずかな良い晩に
頭の中には靄が詰まって
何もうまく考えられない
こんなにしずかな良い晩に
街灯がぽつんと立つ路地で
散歩に出たはいいけれど・・・・・・





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