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俺とボジョレーヌーヴォーとトップバリュの戦い

今年ももうすぐ終わろうとしている。ふと気づけば11月も終わりが近づいている。ほんの少し前まで恐るべき猛暑に襲われ、いつまでたっても涼しくならないと思っていたらこの突然の寒さだ。

もはやこの世界は狂っている。俺は徐々に狂気に蝕まれつつ一日一日を何とか生き抜いている。だが世界がどれだけ狂おうと、毎年必ずやってくるものがある。

今年、それがやってきたのは11月16日…ボジョレーヌーヴォーの解禁日だ。




ボジョレーヌーヴォー それは一年に一度の祭典


ボジョレーヌーヴォー。毎年ニュースを騒がし、「数年に一度の出来」「最も良かった〇〇年を上回る」だとか常に評価がインフレしていくワイン界のドラゴンボールだ。しかし名前は聞いたことがあってもボジョレーヌーヴォーについて詳しく知らないと言う人が多いのではないだろうか。

これはフリー素材なので実際の俺は一人虚しく酒を飲んでいる

そもそもボジョレーとはフランスの地名、ヌーヴォーとは新しいという意味で、ボジョレー地方で作られた新酒の事を言うらしい。ワインと言えば何年物と表記されるぐらい、長年熟成された物が重宝される印象だ。

だがこのボジョレーヌーヴォーは新酒、その年採れたてのブドウで作ったフレッシュなワインだ。新鮮なので非常に飲みやすく、ワインを飲んだことがない人でも楽しめる味わいだ。


訳知り顔のワイン通の戯言を信用するな


こういう話をしていると、知ったような顔した奴らが「熟成されてないワインなんてワインじゃない」「タンニンの渋みがないお子様の味」とか言ってくるかもしれない。

もしくは情報を食って生きてる奴らが「ボジョレーヌーヴォーで騒いでいるのは日本だけ」「阿保みたいに浮かれて世界に恥をさらしている」とか謎のマウントを取ってくる。

だが諸君はこんな意見は一切耳に入れる必要はない。こういう奴らはどうせボジョレーを飲んだこともない。情報通を気取っているが、「このゲームは〇億本売れたから面白い」とか「この映画は〇週連続1位をとったから面白い」とか、自分がいいかどうか決めるところを他人の評価からしか判断できない軟弱者どもに決まっている。

データキャラは負け犬だと相場が決まっている

俺は実際にボジョレーヌーヴォーを飲んでいる。その俺が語っているのだ。
「世間の流行りに乗っかって買っちゃうなんて恥ずかしい」とか斜に構えてる奴らを尻目に俺は毎年買って飲んでいる。つまり諸君も今すぐボジョレーヌーヴォーを買いに行く必要があるという事だ。


ボジョレーはお前を待っている


そもそも日本でボジョレーヌーヴォーがこんなにもてはやされるのはちゃんと理由があると俺は思っている。ボジョレーヌーヴォーは新酒なのでフレッシュで飲みやすく、割とブドウジュースのような感覚で飲める。一方本場の赤ワインなどは、初めて飲んだらブドウと言う甘酸っぱいフルーツから想像できない味に驚いた人が大半ではないだろうか。

俺はこんなお洒落な雰囲気の中で酒を飲んだことはない

恐らく日本人が想像するブドウのお酒と言うイメージに最も近いのがボジョレーヌーヴォーなのだ。その証拠に、日本で作られた甲州ワインとか信州ワインとかは、勿論本場さながらの熟成されたワインもあるが、多くは新鮮さや飲みやすさを重視したものだ。そんなフレッシュさを求める日本人の好みにピッタリ合うのがボジョレーヌーヴォーという訳だ。


トップバリュの酒という強者が立ちはだかる


突然だが、俺の近所には24時間営業のマックスバリュがある。言わずと知れた有名企業イオンのスーパーだ。昨今物議をかもす24時間営業だが、利用する身としてはやはり便利だ。その日も俺は真夜中近くまで仕事で、疲れた体を引きづりつつ晩飯を求めてマックスバリュに来ていた。

それっぽいスーパーのフリー素材

そこで俺は見つけてしまった。トップバリュのボジョレーヌーヴォーを。棚に1本だけ残っていたそのワインを見つけた俺は、とりあえず前を素通りした。

トップバリュ。それは言わずと知れたイオンのプライベートブランド商品だ。その特徴は勿論安さ。品質に関しては、全く気にならないものから安かろう悪かろう、もしくはとんでもない大外れまでと、落差の激しい印象だ。
最近ではトップバリュのウイスキーがネット上で騒がれていた。俺は飲んだことは無いが、そもそもそんなギャンブルに挑もうという気すら起きなかった。

そのトップバリュのワインだ。正常な判断ができるならこのまま素通りが正解だ。だが俺は好奇心が勝った。

一度通り過ぎた棚の前に戻って、ボジョレーヌーヴォーを手に取ってみる。プラスチック容器だった。諸君が想像する通り、ワインの容器と言えばガラス瓶がほとんどだ。紙やプラスチック容器などお徳用ワインぐらいがせいぜいだ。

余談ながら俺は調味料などで瓶の商品はほとんど買わない。捨てるのが面倒だからだ。よってプラスチック容器自体は悪いことではない。高級感は薄れるが、常々プラ容器のワインが増えてもいいと思っていたぐらいだ。なのでここで評価を下すのはまだ早い。

一番気になるのは値段だ。安価なトップバリュ商品だ。物議を醸した例のウイスキーも驚くほど安かったぐらいだ。高くても1000円かそれ以下だろうと高をくくっていた。1680円だった。俺は最後の1本を手に取り買い物かごへ入れていた。


トップバリュと俺の仁義なき戦い

ガラス瓶ではないので武器にすることはできない

俺とトップバリュとの戦いが始まった。トップバリュ商品としては高めの値段設定だ。なかなかいい線を行くんじゃないかというのが俺の予想だった。
家に帰って早速ボトルを取り出した。栓はキャップだ。コルクより開けやすくて俺は好きだ。

コップに注いでみる。ほんのりブドウの甘い香りが漂い、ボジョレーらしいフレッシュさが感じられる。

厳しい目線がボジョレーヌーヴォーに注がれる

まずは一口、口に含む。強めの酸味がサッと広がり、その後にほんのり苦みが残る。かなりあっさりとした飲み口だ。

色々偉そうなことを言っていたが、一年に一回しか飲めないこともあり俺はあんまり例年のボジョレーの味を詳細には覚えていない。ただ新鮮で飲みやすく美味しいという印象が強く残っているぐらいだ。その印象から言うと、
このトップバリュのボジョレーは飲みやすくはあるもののフレッシュさという点ではやや欠ける感じがした。

ワインの本道からは外れるのかもしれないが、もう少しブドウの風味が強い方が俺の中のボジョレーだった。やはり酸味が難点だ。俺は別にワインの権威でも何でもないし、日常的にワインを嗜む男という訳でもない。だからワインの良し悪しも俺が気に入るかどうかの主観的な一点でしか語れない。

その俺の判断からすると、これは残念な結果に終わった。俺はおつまみのベビーチーズをやけ食いした。

俺がローマの総督なら親指を下にさげていたところだ




トップバリュは真の力を隠している


次の日、俺は近所のマックスバリュに来ていた。俺は諦めきれなかった。ワインの売り場に向かい、棚にわずかに残っていたそいつをつかみ取った。

トップバリュ・グリーンアイ、オーガニックボジョレーヌーヴォー。

ムカつく上司を殴ることができるガラス容器

安さが売りのトップバリュの中で自然や環境に配慮して作られたのがグリーンアイ商品だ。俺はオーガニックだとか自然食品だとかそういう売り文句に一切興味がない。オーガニック食品だから美味しいとか健康に良いとかいう話にも相当疑いの目を向けている。

だがこのオーガニック・ボジョレーヌーヴォーは明らかに格上としての存在感を放っていた。そもそも容器がペットボトルではなくガラス瓶だ。栓もキャップじゃなくコルクになっており、普通のワインと変わらない。値段は2680円。廉価版より1000円も高かった。

やけくそで買ったおつまみと精一杯映えるように頑張って撮った一枚

俺は覚悟のうえでワインをグラスに注ぎ、杯を呷った。基本は廉価版と同じ味だ。酸味があり、苦みが来る。だが最初の酸味は廉価版より抑えられており、後味も調和されていた。

もしかしたら俺はこのオーガニックが廉価版より千円高いという幻覚に惑わされているのかもしれない。だが確かに廉価版より美味しいと感じた。

これにはトラヤヌスも笑顔でサムズアップするだろう

俺は上機嫌になった。そしてオーガニックがコルク栓だったばっかりに蓋をすることができず、俺は一日で一瓶飲み干す羽目になった。

俺は正直な男だ。本当なら折角飲んだワインを単純に絶賛したいところだが、別にマックスバリュの回し者では無いし、強いてこのワインを薦めることはできない。

だが俺はボジョレーヌーヴォーの回し者ではある。今やマックスバリュのようなスーパーは勿論のこと、その辺のコンビニでもボジョレーヌーヴォーは手に入る。

折角の機会だ。普段ワインを飲まないような諸君も、話のタネの一つとして、ボジョレーヌーヴォーを飲んでみてはいかがか。

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