殺しの代わりに文章のことだけ
11月某日
彼女からの理不尽な要求に応え続け、精神的に参ってる男友達が泣きついてきたので話を聞く。
「なぜそこまでして自分を抑えるの?」と聞いたら
「それが、赤ちゃんの頃に生まれて初めて学んだスキルだからさ」と返された。
「防御本能だよ。そうするより他に危険回避できなかった頃の癖が、大人になってもまだ残ってるんだ」
ポケモンだってレベルが上がれば最初の技を忘れる。歪んだ家族の平和を保つために細胞レベルで刷り込まれた、もうすでに不要な技なんかオートで忘れられたらいいのに。
11月某日
ジャズを聴きながら日記を書いていると脳が288個ぐらいに分割されてそのぜんぶがあっちゃこっちゃに飛び回るような気がするため日記が書き終わらない。
11月某日
ばかみたいに熱が出る。
十年ぶりくらいである。
一人で寝ているとピアノ線で脳をざりざりにスライスされるような気分になる。熱いし痛いし、手の皮が5ミリくらい中身から空いてブヨブヨに膨らんだ気がして、なにを感じているのかまるでわからない。
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