見出し画像

亀はウサギに憧れるし、ウサギは亀に憧れる

旅先の出会いって不思議だ。目を見ただけで、言葉も交わす前から「あ、この人」と分かってしまう相手がいる。

6月某日、原稿を書きにホイアンのアンバンビーチのカフェSound of Silenceへ。

名前の通り、目の前がビーチで、波の音しか聞こえないとても静かなカフェだ。

ココナツコーヒー片手に海の見えるテラスに行くと、一番眺めのいい席に、綺麗な金髪の、白人の女の人が座っていた。

私は正直、ゆっくり原稿を書くつもりだったので

「あ、先客がいる。いやだなあ」と思ってしまった。

その人は振り返って私を見るなり、目を見開いて

「ワーオ、あなた、日本人でしょ!!」と大声で叫んだ。

ホイアンは今、韓国人と中国人だらけで日本人観光客は少ない。どうして分かったんだろう、と思っていると、彼女は引き続き大声で

「見ただけで分かるわよ!だって肌が雪みたいなんだもん!!」と叫んだ。

「日本人の肌ってね、絶対的に違うのよ。綺麗な雪の色なの。ほんのちょっとだけクリームっぽいんだけど黄色とも違う。写真に撮ったら分かるの。他のアジア人と絶対的に違うのよ。すごく綺麗よね」

文字に起こすとポリティカルコレクトネスに抵触しそうな事を、綺麗にタンしたコーヒー色の肌でその人はズケズケと笑いながら言った。

日本人といっても色々いるし、ハーフもいるし、地方によって違うだろうと思うけど、何か信仰のように強い口調ではっきりとその人は言うので、私は反論する気も起きず

「あなたの肌の方がよっぽど綺麗だと思う」とだけ言い返した。

「ううん違うのよ、写真家の友達は全員言うの、日本人の肌ってマジック・カラーよ。絶対的に綺麗なの、特別なのよ」

急に肌の色についての話から入ったので、びっくりして(外国人にとってはとてもセンシティブな話題だと認識していたので)ぽかんとしていたら、その人は大きなカメラを椅子の上から取り出して、バシャバシャバシャ、と私を撮った。

「私は写真家だからね、違いが分かるの。良い目を持ってるからね。絶対にそうなのよ」

ここから先は

1,670字

¥ 200

ありがとうございます。