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それでもやはり、意識せざるをえない(小野美由紀のマガジン)

作家小野美由紀によるエッセイマガジンです。タイトル通り "それでもやはり、意識せざるをえない” 物事について、月に5-10本程度配信します。日々のエッセイ、恋愛、性愛、家族、また… もっと読む
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2019年3月の記事一覧

あそこにはなくて、ここにはある

あそこにはなくて、ここにはある

3月某日

取材で大阪へ。大阪に来るとホーチミンを思い出す。電車の車幅の狭さとか、狭くて天井の低い地下街に美味しそうな食べ物の匂いが溢れてる感じとか、人がごちゃごちゃしているところとか、BGMが派手なところとか、人の声が大きいところとか、あと灰色のくすんだ駅とか、全部ひっくるめてアジアっぽい。

社会学者の岸政彦先生にお話を伺う。岸先生、朗々と心地よいトーンの声で話される。すごく会いたかった人に仕

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黙らせたい

黙らせたい

今月はびっくりするくらいに目まぐるしくてはちゃめちゃで、その上体調不良が重なって一言で言うと「パニック」の月だった。一度も経験したことのない「短編の直しを締め切りに合わせてやる」をやり(これまでの本は全部書き下ろしだったから)、確定申告に、普段はやらないような珍しい取材の仕事もやった。締め切りが終わった途端に疲れがどっと出て一週間くらい動けず(こんなこと、最近では珍しい)、あれ、私ってこんな不調な

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よい感想をぽんと言える人

よい感想をぽんと言える人

文筆家の佐藤友美さんから、とても嬉しい本のレビューをもらった。

私は感想をもらうのが苦手だ。もちろん、もらって嬉しくないということは絶対にない。けど、なんだかちょっと気恥ずかしい。悪いなあという感じがする。多分、自分の書いた作品を読み直すことはほとんどないし、原稿が手から離れて、編集者さんに渡った瞬間に「過去のもの」になってしまうからだと思う。一度手から離れた原稿は自分のものという感じがしないし

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「とにかく、自分に誠実に」

「とにかく、自分に誠実に」

3月某日

群馬県の伊香保温泉を舞台に小説を書いて欲しい、という依頼で取材に。

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自分の中の”神様”に向かって書く

自分の中の”神様”に向かって書く

いきなりスピっぽいタイトルですみません。でも、文章の話です。

梅の花が散り、空の上の方が透明になり始めると、ああ、春だなあ、と思い、重たい雨が降る日にはまだまだ冬だなあ、と感じる。やっと2019年が訪れたような気分。

2018年は修行の一年だった。小説も出たし、オンラインサロンやnoteの有料マガジンを始めたりして、「上々じゃん!」と思われることも多かったが、とにかく私にとっては苦しい、試行錯

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