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編集者は毎月どんな本を読んでいるのか?(2024年1月編)

出版社で小説の編集をしていたこともあり、ふだんは小説8割:それ以外2割くらいの割合で読んでいましたが、転職してからは仕事柄、ビジネス系・新書を読むことが増えました。

今はIT企業で仕事をしつつ、編集者としても働いています。環境が変わったことで、本と自分の立ち位置・関係性もいったんニュートラルになったので、今まであまりつけてこなかった本の記録をつけることにしました。

読んだ本を毎月投稿していくので、書店やネットで見かけたら読んでみてください。

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■筆者について
30代男性、好きなものは読書、旅行、キャンプ、ガジェットなど。IT企業で働きつつ、副業でナレーションや書籍編集などもやっています。noteでは主に好きなものについて書いていきます。

プロフィール写真はアイスランドの石像。


2024年1月に読んだ本

■トマス・H・クック/鴻巣友季子訳『緋色の記憶〔新版〕』(ハヤカワ文庫)

老主人公が少年期に起きた事件の謎を回想する、いわゆる「回想の殺人」形式をとるミステリ。クックの文章に定評があることは前から知っていましたが、大きな書店でないと手に取れる機会もなかったため、今回の新訳版で読者が増えることを願っています。持って回ったように見える文章の中に、恐ろしく精緻な企みが隠れている。魔術的な文章技巧です。


■北尾修一『いつもより具体的な本づくりの話を。』(イースト・プレス)

北尾さんといえば太田出版在籍時代の業績が、出版業界ではある種の伝説と化している方です。百万年書房の本は『しょぼい喫茶店の本』だけ読んだことがあります(これも面白い)が、そういった特徴的な本を一人出版社でどう出していくか、どう売って(生活して)いくか、企画のヒントが見られます。


■細田高広『コンセプトの教科書 あたらしい価値のつくりかた』(ダイヤモンド社)

会社でマーケティングやブランディング関係に携わっているので、新規施策の立ち上げや既存施策のリニューアルに関わることも多く、勉強のために購入。言葉だけ飾ったコンセプトではなく、中身の伴ったコンセプトを立案するために、平易かつピントの合った説明をしてくれます。やる気にさせる装幀。


■石井暁『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書)

「VIVANT」のドラマは脚色強めでかなり荒唐無稽ですが、こちらの新書は著者が長い年月をかけ、命の危険を感じながら書いた、地に足のついた力作。結局、別班の存在自体は内閣等からは否定されているものの、いてもおかしくはない(シビリアン・コントロールを逸脱する組織があったとして、存在しているかと聞かれたらたとえ存在していても認めるわけにはいかない。二次創作の許可を権利者に確認する行為と同じことだ)と理解しています。


■谷川嘉浩『スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険』(ディスカバー・トゥエンティワン)

1990年生まれ、気鋭の哲学者の著書。スマホによって常時世界とつながり続けないといけなくなった現代において、「孤独であること」の価値を問います。哲学というと自分の頭でじっくり考えなければいけないと思いがちですがが、「自分の頭で考えないための哲学」を教えてくれる。目からうろこの、知的興奮の一冊。「哲学は2500年続くヒットコンテンツ」なんですって。


■川内有緒『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』(集英社インターナショナル)

タイトルが本書のすべてを表していて、非常に秀逸です。「目の見える人が目の見えない人に、絵に何が描かれているかを説明することで、目の見えない人に絵が伝わるのだろう」と思いきや、その考えは早々に打ち砕かれます。絵を見たときに、自分の心の中で何が起きているか、それをアウトプットし共有することで見えてくる、新しい世界があります。


■林要『温かいテクノロジー AIの見え方が変わる 人類のこれからが知れる 22世紀への知的冒険』(ライツ社)

個人的に「LOVOT」のファンです。かわいいので。しかし、その手触りやつぶらな瞳といった温かさと庇護欲をそそる外見からは想像もできないほど、内部には最先端のテクノロジーが埋め込まれています。役に立つことは何もしないけれど、そこにいるだけでなんだか優しい気持ちになる。これからの時代、ロボットは「doing」の存在から「being」の存在になっていくのかもしれません。


■藤原麻里菜『考える術 人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』(ダイヤモンド社)

「無駄づくり」をライフワークにする藤原さんの頭の中を覗き見て、あの個性的なマシーンがどんな発想をもとに作られているかがわかる本。頭が柔らかい人は世の中にたくさんいますが、そのアイディアを実際に行動に移す人は少ないですよね。この本を読むと、ものづくりの敷居が低く感じられていいですね。もちろん、ものを作らない人も楽しめます(ものづくりだけでなく、思考の枠を外して柔らかくなるトレーニングにもなりますので)。

ちなみに、藤原さんの無駄づくりの中ではこれが好きです。


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