【狂い咲きクロスロード】
僕は26歳のフリーターです。
夢は世界に誇るギターリストになること。
しかし、現実は厳しく夜間のファミレスでキッチンのバイトをしています。
皆さんはクロスロード伝説をご存知ですか?
アメリカ伝説のギターリスト、
ロバート・ジョンソン。
そのジョンソンが国道61号線と49号線の交わる十字路で悪魔と契約を交わし、
魂と引き換えにギターのテクニックを手に入れ有名になったという話です、
もちろん都市伝説の類であることはわかっています…
しかし、僕も夜勤終わりの明け方のある日悪魔に出会ってしまいました。あの、
甲州街道と環七が交わる十字路、というか交差点で。
なんかコンビニでストロングゼロ買ってたらなんかいて、
あっ容姿はトランプのジョーカーです。
僕がたじろいでいると
「魂と引き換えに願いを叶えてやる」
と言ってきました。
僕は咄嗟にジョンソンが言ったみたいに
「テクニックがほしい!!みんなを魅了したいんだ」
と言いました。
悪魔はそれを聞き消えました。
翌日から僕はギターの練習に本腰を入れました。
もう一週間後のライブでレコード会社の目に止まり伝説になるのは確約されてるんだから!
もう暇をみつければ練習!
そして練習!
バイトは適当!
その日もチャチャッと仕込みを終わらして休憩室でギターの練習をしようと思ってた所、異変に気づきました。
一緒にキッチンに入っている池部さんて方がいるんですけど、僕の活動も応援してくれてて、その池部さんが、
僕の鳴らす包丁の音でツーーーゥっと涙を流してるのです。
ハッとホールに目をやるとさっきまで気だるそうにしてたミカちゃんが僕のフライパンの音で腰を振りまくっています。
洗浄機を上げ下げすると、始発待ちの大学生が押し寄せヘッドバンキング!
ゴミ出しで外に出ると、
家出少女たちが
「ギャーーーーー!!」
とビートルズと出くわしたかのように気絶しましました。
一通りの業務が終わる頃にはオーディエンスは100人近くに膨れ上がり、
ガタイの良い外国人に肩車をされた池部さんが、
星条旗を掲げながら
「ロックは…ロックは死んでなかった…!!」
とむせび泣いていました。
そうです
僕は、キッチンのバイトのテクニックでみんなを魅了できるようになってました。
そっちじゃねぇよ悪魔!!
と思った瞬間、オーディエンスに紛れていた悪魔と目が合いました!
悪魔は
「いや…音楽での収入0ですし、
あなたこちらで社会保険加入してるじゃないですか…」
と言い消えました。
こっちが本業だと思ったんでしょうね!!
そっからはもう…
一週間後のライブはいつも通り盛り上がらず、
反対に夜間のファミレスは僕のキッチン観たさに連日超満員。
慌てた店長が僕のシフトをチケット制にしました。
ぴあで先行販売です。
なんかスポンサーもついて、
SUNTORYからにゃんこ大戦争まで
幅広く、
もうキッチンコートの白い部分の方が少ないす
…もう全部があべこべで…
Gibson社がギターの弦を溶かし、僕モデルの包丁をつくりました。
Fender社がギターのネックを加工して僕モデルのカッティングボードをつくりました。
僕が活躍する度に!世界のギターが壊れていきます!!!
こんなはずじゃなかったんだと!
厨房でギターをかき鳴らしたこともあります!
普通に社員に怒られました。
じゃもうどうにでもなれよと
音楽ライブで野菜を切りました。
日本武道館が決まりました。
すいません、一応事務所に言われてるんで言います
10.20
日本武道館360°大根カツラ剥き
やりますぜひ来てくださいー
チケットコードお間違いなくー…
まっこんな感じで向こう10年はキッチンの仕事でスケジュールはいっぱいです。
ただ気になることが一つだけあります。
ロバート・ジョンソンは悪魔と契約を交わしたからか、27歳という若さで謎の死をとげます。
有名アーティストは27歳で死を遂げる、いわゆる27クラブです。
これもまた都市伝説ですが
僕も27歳まであと半年…
まあどっちでもいいっす!!
どっちに転ぼうが!!!
どうでもいいです!!
ジョンソン、ジミヘン、カート・コバーンの隣で米でも炊きましょうかね!!
ビバクッキングーーーー!!
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