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人生初眼鏡

子供の頃からずっと首から上はとても感度が高かった。
目の検査でも耳の検査でもそうだったし鼻も利く方だった。
おかげで両目2.0の生活をずっと続けてきたから眼鏡とは無縁だった。
あ、衣裳とかではつけたことがあるけれど。
伊達メガネは煩わしいからレンズを抜いていた。

最近、編集をしていてもある程度の時間を過ごすと目か耳が駄目になることがよくあった。これは視力とか落ちてきているんだろうなぁと気付いていた。エクセルシートなんか最近は見る気もしない。それでもまぁ老眼ってやつなのかなぁぐらいに思っていた。
所が視力検査をしたら、左が1.2、右が0.4だった。
それでも視力の悪い人からみたら眼鏡なんかいらない視力らしい。
長く2.0裸眼生活を続けてきた僕にとっては中々ショッキングな数値だった。

さて眼鏡。0.3以下で常時着用らしい。
だから僕の場合、メガネは必要ないかもなぁと思った。
問題は左右の視差。ちょっと差がありすぎる。
それもどういうわけか左は1.2でも近くのものがぼやける。
それと、星を見上げると星が二つに見える。
目の疲れも酷いし、日によっては眼精疲労で頭痛になる。
気圧が低いと眼圧がつられて、なんだかもう困ったことになる。
調べてみたら視差のある人はそのままにしておくと悪化するだけだと耳にして、ああ、もう眼鏡を創るかと観念した。

似合っているのか、似合っていないのか。
この年になってはじめてのメガネ。
視力検査とかも全部はじめて。
そしたら両目とも乱視だった。
星が二つに見えるのはむしろ視差じゃなくて乱視なんだってさ。
そういえば父親も乱視だった。困ったものだ。
この目で編集していたのは大丈夫だったのか?なんて思ったりする。
まぁ、編集は大きな画面で観たりあえて距離を作ってみたり。
最終的にスクリーンは反射光だし、圧倒的な大画面でもある。
それにサングラスかけてる映画監督もいるかと思い直す。

初めてのマイメガネをかけてみる。
なんだか自分が急に身長が小さくなったような不思議な感覚。
そして確かに視野がくっきりしていた。
あと、立体感の把握がやっぱり違っていた。
視差の違いの怖いことは立体感の把握がずれていくことらしい。
確かに何かをまたぐ時とか思ったよりも高くて引っかかったりしていたんだけれど、足の感覚が衰えてるのか?なんて思っていたらこれか。

色眼鏡っていう言葉がある。
普通に翻訳すればサングラスだけど、いわゆるフィルターをかけられて印象ありきでみられてしまうこと。
それこそ、劇団とか自主映画とか無名とか、好きなだけ色眼鏡をかけて接してくる人に出会ってきた。むしろもう慣れっこだし、なめるならなめとけぐらいには思っているけれど。
だから僕は眼鏡というのは何かをプラスするものだと思っていた。

でも違うんだなぁ。
にじみだとか、ぼけみだとかをマイナスするのが眼鏡だったのか。
この新鮮な気付き。遅すぎるけれど初めて知った。
汚れたレンズをぬぐった後のような世界をみて、まだまだ知らないこともあるものだとつくづく感じた。
特に夜の道の感じが違って見えた。
夜になるともう目が痛かったり、目薬が沁みる時間帯だったから。
今、脳がびっくりしているかもしれない。
多分、今までは疲れるぐらい脳内補正をかけていたはずだから。

世界が変わるね。
まぁ、僕はそれでも眼鏡をかけるほどの視力ではないのだから。
きっと0.1以下の人にとってはもっとすごいものなのだろう。

多分、僕たちの目で見えている世界とはそういうものだ。
それぞれ個人個人で違うし、フォーカスされている場所も違う。
見えているようで見えていないものなんか山ほどある。
そして実際に目には見えないものだってたくさんある。
立ち位置でも違うし、角度でも違ってしまう。
僕なんかずっと見上げてばかりだから、知らない景色だらけさ。

優れた作品に出会うと世界が変わったように感じるのはそういうことだ。
それまで感じていた見ていた世界を急に別の角度から見ることが出来るようになる。
今までフォーカスしていなかった場所に急にフォーカスできるようになる。
見えなかったものを意識するようになる。
視点も角度もすぐれた作品は変えてくれるし、教えてくれる。
あるいは、かつて見ていた世界を思い出させてくれる。
映画館や劇場は、新しい世界への入口だ。

たかがメガネ。されどメガネ。
厭になっちゃってかけなくなったりなくしたりしそうではある。
まだわからないけれど、今は世界が新鮮で面白い。

名古屋や大阪で。
映画『演者』は皆様のお眼鏡に適いますでしょうか?なんて急に思いつくのはやっぱり老化なのかもしれない。

まぁ、いずれにせよ年齢を重ねるということは経年劣化を伴うのは致し方ないわけだけれど、同時に成長のその先であることも確かで、進化であったり深化であるのだと僕は思っている。
老化にはちょっと早いかな?あれは色々無駄なものを削ぎ落して、枯れた表現に目覚めてから言っていいかっこいいやつだから。
劣化した所でメガネをかければいいだけなわけだ。経験を重ねてくることに比べてなんとお気軽なことだろうか。

おかげで室内でもメガネをかけてわくわくしているという。
まったくやれやれだ。
大阪や名古屋ではメガネをかけて舞台挨拶しよおっと。

映画『演者』

企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル

「ほんとう」はどちらなんですか?

【限定3回上映】
2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)
各回10時から上映
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
初日舞台挨拶あり 登壇:小野寺隆一

【限定2回上映】
2023年4月15日(土)18:30、16日(日)19:00
シアターセブン(大阪・十三)
予約開始:4月8日9時より
2日間舞台挨拶あり 登壇:小野寺隆一

◆終映◆
2023年3月25日(土)~31日(金)
K'sシネマ (東京・新宿)

出演
藤井菜魚子/河原幸子/広田あきほ
中野圭/織田稚成/金子透
安藤聖/樋口真衣
大多和麦/西本早輝/小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟 録音 高島良太
題字 豊田利晃 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希 制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。