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招福

元劇団員の仲間が居酒屋をやるとか何とか。
そういうことならと色々やることはあれども行くことにする。
その前に豪徳寺に向かう。
駅から意外に歩き、境内も想像よりずっと広く。
愛用していたサンダルが真っ二つになった。
ええええ。と思いつつ、不吉な感じはなかった。

社務所で招き猫を買う。
招福猫児と書くのだそうだ。
開店祝いに商売繁盛をお祈りする。
アマゾンやら楽天でもかわいいのが売っていたけれども。
なんとなく寺で買ってお祈りしたものが良いと思った。
なんとずっと在庫切れだったのが今日の午後、入ってきたという。
偶然だけれど、良かった。
百万両も大判小判も大入袋もないシンプルなデザインが良い。

問題は彦根藩井伊家の菩提寺ということだ。
桜田門外の変の井伊直弼の墓所でもある。
どちらかと言えば、そっちじゃないんだよなぁ。と思いつつ。
ああ、討幕派なとこがあるからサンダルが!と気付く。
いや、ただのたまたまなんだけれど。こじつけ。
墓所まで行くのはやめて、すみませんなとつぶやく。

下北沢に一度出てサンダルを買い替える。
そこからの移動が長かった。
これは、あれだね。ほぼ旅だね。と思いながら。
新しいサンダルの感触を確かめつつ、始発駅から終着駅まで。
片道2時間はさすがにやりすぎだよなぁと思いつつ。
えっちらほっちらお店についた。

やつは嬉しそうに、おお!!と声を出す。
先着した二人はすでに赤い顔。
一番遠い僕が来ると思っていなかったのもあるらしい。
20年以上同じ板の上に立って、それはないよな。
少しだけ痩せてた。
健康にも気を使い始めているんだろう。
でも居酒屋じゃまた太っちゃわないかなぁ。

大きい招き猫がこっちを見ている。
良縁を呼び込んでくれるんだそうだ。
もうとっくに良縁ならあるんだけどな。

映画、すげぇ泣いたよ。
また上映するなら、行くから!
なんて言ってくれる。
こんな遠くから来てくれていたんだなぁ。

適度に寄って店を出る。
さて、帰路も旅だな。やれやれ。
寝過ごすことがないのだけが安心だよ。
終着駅で乗り換えればいいんだからさ。

やつの店にディスプレイされた招き猫の写真が今届いた。
中々存在感があるじゃないか。
良き縁が続きますように。


映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
題字 豊田利晃

「嘘ばかりの世界」だ
  「ほんとう」はどこにある

【上映館】
・2023年11月18日(土)より
ユーロスペース(東京・渋谷)
http://www.eurospace.co.jp/

出演
藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ
中野圭 織田稚成 金子透
安藤聖 樋口真衣
大多和麦 西本早輝 小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟
録音 高島良太 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希
制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

◆終映(特別限定先行上映)◆
・2023年4月15日(土)16日(日)※限定2日間
シアターセブン(大阪・十三)
・2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)※限定3日間
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
・2023年3月25日(土)~31日(金) ※限定1週間
K'sシネマ (東京・新宿)

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。