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有意義な夜

平日午前中の上映。
やっぱり上映中には気になってしまう。
もしもお客様が誰もいなかったらどうしよう?なんて考えたり。
でもそんなことはなかった。
名古屋シネマテーク様からのご報告をみて胸を撫で下ろす。
火曜の朝一番でも足を運んでくださった方がいらっしゃった。
もちろん、そんなにたくさんの数ではないけれど、奮闘していると思う。
ふと見ればメッセージも届いていた。感謝。

夕方ごろにSNSにも報告が上がっていることに気付いて。
ああ、ありがたいなぁ。嬉しいなぁ。と思う。
観に行ったという報告の一つ一つ。感想の一つ一つ。
昔はそれは一人一人の心の中や、友人との会話の中だけに存在していた。
それが今はSNSで多くの人が目にする可能性があるということ。
そのことは実はとってもすごいことなんだ。
劇的な変化だ。
誰かの小さなつぶやきがその映画に光をあてることがありえるのだから。
やっぱり僕はミラクルを信じるよ。
影響力のある評論家やゲイノー人やインフルエンサーよりも、誰か一人の心が動いたという事実の方が今は大きな力を持つのだって信じている。
お金をもらって書いたコメントが、愛で書かれたコメントに勝てるわけないんだから。徹底的にそのスタンスで行く。

今晩はとても有意義な夜を過ごした。
とある方から映画の感想を伺った。
えええ、その人!?というような方。
話は脱線しまくったけれど、僕にとっては大事な言葉がたくさんあった。
何を誰に言われたかなんて書かないけどさ。
たとえそれが映画『演者』にとって宣伝になる貴重な言葉だとしてもね。
ごくプライベートにいただいた言葉なのだから。
うん。僕は間違っていないと確信したし、この映画はまだまだ行けるとより強く思えるようになった。

話をした後に夜の街を歩いた。
もう飲食店はかなりの勢いで復活しているように見える。
歩いている人も多いし、呑んでいる人も多い。
でも、コロナ前とは少し違うと僕は感じた。
同じようでいて、全然、雰囲気も空気感も違う。

それはホワイトカラーの不在だ。
会社で働いた後に呑みに行くということがかつては普通だったと思う。
でも平日に遅くまで吞んでいる背広を着た人たちがあまりにも少ない。
若い人たちや、外国人たち、私服を着た人たち、そんな人が多い。
会社帰りのちょっと一杯な人たちがものすごく少なくなっている。

新宿今池十三と映画館で話をしてきたけれど。
レイトショーは今、どこも厳しいと耳にした。
それがなんとなくわかる。
仕事終わりにどこかに立ち寄るという習慣がなくなっている。
もちろんリモートの人もいたりするだろうし、呑むなら週末みたいになってる。
確かそうじゃなかったよね?
会社帰りにちょっと一杯。週末になったら思い切り呑める!そんなことばっか言ってたはずだ。
理解はできるけれど、いたはずなんだよ。
仕事帰りにレイトショーでも観ていこうなんて言う方々が。

まっすぐ帰った方が健全だという考えもわかる。
お金だってあまり使わないで済むしさ。ゆっくり眠れる。
身体だって楽だし、健康的だと考えているだろう。
そして感染する可能性も少ないだろう。
あの明日も仕事だろうに、だらしなく座り込むヨッパライの方が駄目だと思うかもしれない。
でも、本当にそうか?とも思う。
呑まなくても、映画やライブや演劇や食事、ゆったりと出来る喫茶店、本屋さん。そんなところに足を運ぶことは人生にとって、余剰という豊かさではなかったか?そこで出会った人や作品は、世界を拡げたのではなかったか。
どんな大人になりたい?って考えるとさ。
なんだか縮こまっているような大人ではなかったと思うんだよ。
まぁ、家は家で安心するし最高なんだけどさ。

映画館のロビーでお客様と握手をした時に、あ!コロナ前以来の握手だ!って実は何人にも言われた。ほとんど毎日言われたと思う。
それに驚くということが重要なんだ、きっと。
人と人とのコミュニケーションには想像以上の情報量があって刺激がある。
握手だけで驚くんだよ、脳味噌が。
世界は急速に元に戻ろうとしている。

どうしょうもない夜もあるさ。
情けない夜だってある。
寂しいだけの夜も、つまらないだけの夜もある。
でもみんな有意義な夜があることも知っているはずさ。

僕は今日、有意義な夜を過ごしたよ。

映画『演者』

企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル

「ほんとう」はどちらなんですか?

【限定3回上映】
2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)
各回10時から上映
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)

◆終映◆
2023年3月25日(土)~31日(金)
K'sシネマ (東京・新宿)

2023年4月15日(土)18:30、16日(日)19:00
シアターセブン(大阪・十三)

出演
藤井菜魚子/河原幸子/広田あきほ
中野圭/織田稚成/金子透
安藤聖/樋口真衣
大多和麦/西本早輝/小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟 録音 高島良太
題字 豊田利晃 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希 制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。