【8月12日は世界ゾウの日】ゾウも氷が大スキ?
8月12日は世界ゾウの日
毎年8月12日は「世界ゾウの日」とされています。
この日はタイのゾウ保護団体、エレファント・リイントロダクション・ファウンデーションと、野生動物を中心とした作品を制作、監督しているカナダ人映像作家のPatricia Sims氏によって、減少しつつあるゾウの保護をうったえる目的で、2012年に制定されたものです。
ゾウの減少は深刻であり、象牙を狙った密猟により、1970年代から1980代だけで、アフリカゾウは推定個体数が約60%まで失われました。
密猟で得られた象牙は、紛争地域での武器購入や、他の犯罪資金の財源となってしまっており、生物多様性の保護や環境保全への悪影響に留まらない、世界全体に暗い影を投げかけている国際問題です。
またアフリカゾウの密猟だけでなく、アジアゾウなども生息地の破壊による危機に晒されています。
特にインドネシアのスマトラ島では、パーム油の生産企業による農場の開発で、ゾウの生息地の破壊が深刻となっています。
パーム油はアブラヤシというヤシの一種から作られるのですが、これはそのまま利用するのには適さない代わりに、加工してインスタント麺やスナック菓子、洗剤などに用いられいて、我々の生活にも密接にかかわっています。
違法な象牙の流通などは比較的日本では少ないと思われますが、こうした製品の過剰消費もまたゾウを追い詰めていると言えるため、国産の油を利用した製品の使用を心掛けるなど、我々にも遠い国のゾウを守るためにできることがあります。
さて皆様は、動物園のゾウが、果物などが入った氷を飼育員からもらっている光景を見たことはないでしょうか?
日本の動物園などではゾウなどの動物に、暑い日に涼として氷を与えることがあります。
今年も京都動物園で動物たちに氷のプレゼントが行われ、ゾウのエリアに果物が入った氷が与えられると、ゾウは氷を踏み割り、器用に果物を鼻でつかんで食べる様子が観察され、好評を呼びました。
また、上野動物園でも毎年恒例でアジアゾウなどに、好物の食べ物が入った氷をプレゼントするのが夏の恒例になっています。
この様子を見るとゾウはなかなか氷を楽しんでいるように見えますが、ゾウは氷が好きなのでしょうか?
ゾウも暑さ対策が命!
もちろん、野生下でのゾウは気温が高い地域に生息し、北回帰線を超えて移動することはほとんどなく、そのような環境では自然に氷が生じることもまずないため、本来の生態として氷を好むという性質はありえません。
しかし、飼育下の人馴れしたゾウにとっては冷たい氷というのはなかなか嬉しいものなのかもしれません。
なぜなら、ゾウは非常に身体の大きな生物であるため、体温が下がりにくいからです。
また、ゾウの皮膚には汗腺がありません、つまり汗をかかないため、発汗による体温調節ができないのです。
これは、ゾウの身体が非常に大きく、対して体重当たりの体の表面積は小さいため、汗で身体を冷ますには体内の水分が足りないのです。
体重当たりの体の表面積とはどういうことでしょうか?
例えばハワイ沖の深海2000m付近でミニバンサイズに匹敵する巨大な海綿動物が発見され、深海にこれだけ大きな生物がいることに驚きの声が上がりました。
ですが、海綿動物はスカスカのスポンジですので、重さに対して表面積が極端に大きく、もし圧縮すればミニバンサイズの海綿でもかなり小さく潰すことができるでしょう。
しかし、あまり想像したくない光景ですが、ゾウを同じように圧縮したとしても、全然小さくならないことは想像できるのではないでしょうか?
ゾウは巨体ですが、極めて体重に対する表面積が小さい動物で、例えば体重2トンのネズミがいた場合、ゾウのおおよそ18倍大きい体を持つ計算になるそうです。
これらの理由からゾウは一概に暑さが得意な生物と言えない面があり、野生でも頻繁に水浴びを行い、長い鼻をシャワーのように使って身体に水を吹き付け、気化熱によって涼を得たりしています。
また、ゾウは大きな耳もトレードマークの一つですが、これも体温調整の役割を果たしています。
例えば、ゾウと近縁なマンモス。
マンモスというと原始人がマンモスを狩っているような、かなり古い時代の生物というイメージを持たれがちですが、実はエジプトの大ピラミッド(クフ王のピラミッド)が建設された約4500年前にはまだ生き残っていました。
最後のマンモスであるコロンビアマンモスは、紀元前1650年まで生きていたとされます。
現生人類を除くあらゆるヒト属(旧人)が絶滅し、人類史=ホモサピエンスの歴史となったのが約1万3000年前、そうなるとマンモスと人間は今のところ共に生きていた時代の方が長かったと言えます。
そんなマンモスには、ゾウのような大きな耳はありませんでした。
その理由は、ゾウと生きていた環境が大きく違うことにあります。
ゾウの薄く広い耳には、毛細血管が網の目のように張り巡らされ、身体から流れてきた血液を空気に当てて冷やす仕組みになっています。
これをうちわのようにパタパタ動かすことによって効果的に放熱を行うことができます。
マンモスの生育環境の多くは、今の地球の平均気温より寒かったのではないかと思われるため、熱を逃がしたくないマンモスにはこうした大きな耳はありませんでした。
このように、身体の大きさから、様々な暑さ対策をしているゾウたち。
そんなゾウたちが冷たい氷を提供されたら喜ぶのは、ある意味当然のことなのかもしれません。
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出典、参考
:study-z.net ドラゴン桜と学ぶ学習メディア 寒いところには大きな生き物?「ベルクマンの法則」を現役講師がサクッと解説!
:cnn.co.jp「ハワイ沖に「ミニバン」サイズの深海生物、海綿動物の新種か」
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