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様々なアイスアートの世界


知られざるアイスアートの世界

「氷のアート」という言葉を聞いて、どんな印象を受けるでしょうか?

ドイツの画家、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの名画「氷の海」を想像した人もきっといるでしょう。

氷の海(1823~1824 カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ)

氷の美しさ、あるいは厳つさ、または冷たさ、涼しさ、純白さ、透明さに人々は魅了され、古来から様々な形で氷とアートは繋がってきました。

ですがあくまで、氷をモチーフにしたアートではなく氷を素材とした氷のアートを、ここでは「アイスアート」と定義します。

そんな氷を素材にしたアイスアート、実はいくつかの種類に分けることができます。
少なくとも日本国内でよく見られるものは4種類。

小野田商店で使われている呼称でいうと、
氷像(アイスカービング)
・氷彫華(フローラルアイスパフォーマンス)
・氷華®(花氷、氷中花)
・雪像(スノーアート)
が存在します。

もちろん、そのやいずれにも該当しない氷のアートはありますが、おおむね氷のアートと呼ばれるものに、この4つのタイプがあります。

それぞれに違った魅力があり、向いている用途なども実は異なっています。
今回はそんな4つのタイプの、氷のアートについて解説していきます。

氷像(アイスカービング)

第47回 明治神宮奉納全国氷彫刻展 全日本氷彫創美会 大賞
夜の踊り子(作:赤羽目健吾)
渋谷パルコ前にて展示された「BOTTEGA VENETA」(作:清水氷彫美術)

まず、氷のアートといって最初にイメージされることが多いのが、上記の写真のような大型の氷像なのではないでしょうか?

ホテルの宴会、ウェディング、パーティーなどの際に食事と共に装飾品として置かれることが多いものです。国内ではパティシエが料理の腕を振るう傍らで、その技量を示す宴会の飾りとして作成することが多いようです。

また、冬季のイベントなどでは長持ちし、ライトアップで映えることからよく見かけます。

サイズが大掛かりになりがちなため、設置にはかなりの労力が必要な場合も多く、大きなパーティーやお祭りなどのイベントに向いているといえます。

存在感のある華やかで大きなオブジェが作れることだけではなく、一度きりしか飾らない大掛かりな装飾にも関わらず廃棄物は水だけという、サスティナブルの観点からみた長所もあります。

氷彫華(フローラルアイスパフォーマンス)

ふるさと渋谷フェスティバル2022にて行われた小野田商店社員による氷彫華の実演
小野田商店社員が練習で作った氷彫華

アイスカービングの一種として、彫刻用ドリルを使って氷の中に花を彫り込む作品、当社では氷彫華と呼んでいるものがあります(定着した呼称はありませんが、フローラルアイスパフォーマンスと言われることも)。

これは氷の塊の表面を直接彫り込んで作品にするのではなく、内部にドリルで花のような彫り込みを入れ、彫り込みの部分の雪に色付けをすることで作品をつくるもので、いわゆる「氷像」よりも短時間でつくることができ、故にイベントなどでのパフォーマンス性に優れます。

染料を入れているので、その部分の雪は融け流れるまでの時間は早くなってしまいますが、彫り込みを入れた穴を冷却スプレーで凍らせて塞ぐ工夫をすることで長持ちさせることもできます。

勿論、これを通常の氷彫刻と組み合わせた作品を作ることもでき、手間は掛かりますが非常に優美な作品となります。

卓上の小さなサイズで他のアイスアートにも負けない存在感を放つことができ、小さめのイベント会場にも向いています。

また、氷彫華最大の魅力はライブ感。実演している瞬間のショーパフォーマンスとしての面白さがあります。

氷の中に、花びらのような彫り込みが入っていく様子も面白いですが、クライマックスは氷の花に色を付ける瞬間。
まさに氷の花が「咲いた」という印象を与える場面であり、会場はこのとき拍手に包まれます。

氷華®(花氷、氷中花)

様々な氷華®
ふるさと渋谷フェスティバル2022での氷華®の展示

氷華®は氷の中に造花や置物などを入れて閉じ込めたアイスアートです。
花氷、氷中花とも呼ばれており、小野田商店としては平成25年(2013)に氷華®として商標登録しています。

一見単純そうなものに見えますが、透明度の高い、気泡のない氷を作るのは意外と難易度の高いことであり、中に物が入っていることでなお難易度は高まっていて、割れ物を入れた場合は凍結圧によって割れてしまうこともあるので、慎重な調整と作業が求められます。

かつて冷房が発達していない時代、人々が集うところに氷柱を置いて涼を取る文化があり、特にデパートなどでは、エントランスに置かれた氷柱に子供たちがあつまり、触って冷たさを楽しむ光景がよく見られたようです。
それをより華やかにするために造花などを入れたのが氷華®(花氷、氷中花)の始まりと考えらます。

記録として残っている古いものでは、明治20年(1887)に日本資本最初の製氷会社である東京製氷の築地工場に、後に大正天皇となる当時の皇太子殿下が行幸なされた際に、これの製造の様子をご覧になり、大変お褒めになられ、さらに明治天皇へおみやげとして持ち帰ったそうです。

献氷祭(2023)にて氷室神社に奉納されたタイとコイ

また、奈良の氷室神社にて行われる、全国の製氷業者や販売社らが氷を奉納する「献氷祭」でも海の幸代表のタイと、里の幸代表(?)のコイを封じ込めた二基の大型氷柱が奉納されました。

このように氷華®は伝統がありつつも、まだまだ氷彫刻などに比べるとポピュラーではないですが、ギフトグッズなどとして価値が見直されつつある、古くて新しい注目のアイスアートです。

氷華®は他のアイスアートと比べても圧倒的に設置の手間が少なく、また長持ちします。
サイズによって持ち時間は異なりますが、卓上サイズの比較的小さなものでも、直射日光を避ければ室温で半日以上持ちます。

また、氷が融けきっても中に入れたものは無くならないので、そこも他のアイスアートとの違いであり、ギフトグッズとしても最適です。

雪像(スノーアート)

第44回さっぽろ雪まつり国際雪像コンクール優勝作品
「春、鶴の舞」(マカオ)
第44回さっぽろ雪まつり国際雪像コンクール準優勝作品
「木の夢」(ラトビア)

また、氷の一形態でもある雪を使った「雪像」もアイスアートの一つといえるでしょう。

雪像は雪を固めて作った像であるため、「雪だるま」も雪像の一種といえ、最も身近なアイスアートといえるかもしれません。

氷よりも雪は圧倒的に扱いが簡単なため、北海道札幌市大通り公園にて毎年開催される、さっぽろ雪まつりでは世界各国のグループによる大会から、市民による雪像のコンテストまで行われています。

材料にする雪に不純物が多いとそこから融けだすことも多いため、さっぽろ雪まつりで雪像に使われる雪にはあまり不純物を含まない純白の新雪が使われます。

雪は氷と比べて非常に形成の自由度が高いというメリットがあり、かなり複雑な造形の作品が作られるも多く、その場合雪だけでなく、木、鉄、プラスチックの補強材を埋め込んで補強することがあります。

また、作品によっては染料で色付けされることがありますが、この場合染料が雪の融解を高めるので、雪のみのものと比べ短命な作品となりがちです。

近年ではプロジェクションマッピングとの相性の良さから、映像と組み合わせた展示が増えてきている傾向があります。

このアイスアートのメリットはとにかく材料費がかからないことです。
大抵、自然に降り積もった雪で作られるので、非常にエコなアイスアートといえます。
また、加工に高度な道具なども必要なく、比較的安全に作成できるため、市民による雪像の作成イベントなども盛んです。

小野田商店で雪像を扱ったことはありませんが、株式会社スノーラ様の人工降雪機「SNO-LA」で氷柱を削って、氷を雪にすることが可能です。

ヨウ化銀などの化学物質で人工降雪を起こす機械もありますが、SNO-LAは氷の柱を削って作り出す天然よりも混じりっけのない雪を降らせます!

より複雑な氷の芸術も…

氷華®と氷彫刻を組み合わせた作品(冨士氷室様依頼 2022年)
小野田商店社員による、氷彫華と氷彫刻を組み合わせた作品

さらにアイスカービングと氷華®(花氷、氷中花)や、氷彫華と組み合わせた作品も存在します。

これは予め彫刻としてカットする部分に封入する物が干渉しないように計算して作成しなければならないなど、通常のアイスカービングと比べても非常に難易度の高い、まさにアイスアートでも一番高難易度かつ、なかなか見かけないものです。

小野田商店では氷彫刻の達人、小野様による氷華®と組み合わせたアイスカービングの作成を一部始終見学させていただき、その技術力の高さに感服いたしました。(参照

氷に物が入っている状態では、少しの温度変化などで封入物の周辺から急速にヒビが入ってしまうこともあり、彫刻の技術はもちろん、適切な環境管理の下で作成を行う必要があります。

このようなアイスアートの作成は、複数の違ったスキルをもつ氷の職人を揃えなければいけないこともあり、非常にハードルが高いと言えます。
しかし、その分ひときわ印象に残る、唯一無二のアイスアートにすることができます。

アイスアートのご相談は小野田商店まで!

果たしてこの氷塊はどんな作品に変化したでしょうか?
小野田商店公式Instagram(氷華)で是非チェックを!

小野田商店でも氷華(花氷、氷中花)や、ドリルを使った氷の花の彫刻など、氷のアートへの挑戦を続けてきましたが、満を持して小野田商店の社員自身による本格的な大型のアイスカービングの練習を始めています。

時間をかけて昔ながらの製氷を行うことで、非常に大きく規則正しい単結晶のパターンを持つ小野田の超純氷®は、その性質から高い透明度を実現し、全体としては硬くも決まった方向からの切断は綺麗に行えるというアイスカービングの素材には最適な特性を満たしています。

第46回明治神宮奉納氷彫刻展の開催にあたり搬入される、小野田の超純氷®

このことから、明治神宮にて毎年成人式にちなんで行われる「明治神宮奉納全国氷彫刻展」など、数多くのアイスアートを用いたイベントにご愛用頂いております。

氷彫刻にご愛用頂いている小野田の超純氷®を作る小野田商店としては、実際に氷の彫刻をやってみて理解を深めることで、より良い商品の提供へと繋げていきたいと考えています。

小野田商店では首都圏の皆様の「オリジナルのアイスアート作品を依頼したい!」といったような相談も受け付けております。

クール便にて配送可能なサイズの作品の依頼につきましては全国の皆様からの依頼をお待ちしています。

ぜひ、飲食用だけでなく見て楽しむ氷としても、小野田の 超純氷®を今後ともよろしくお願いいたします。

参考、出典
Wikipedia「氷の水族館」
神奈川県氷雪販売業生活衛生同業組合.氷の由来〜日本の機械製氷の歴史〜
リアルライブ.2010年05月13日.天候を司る氷の神へ願いを託す「献氷祭」──奈良・氷室神社


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