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HIDE「ピンク スパイダー」はスマホ時代を予測していた 前編

 今回は、読者の方からのリクエストをいただいたので、hide with Spread Beaverの名曲「ピンク スパイダー」の歌詞を取り上げようと思います。

 HIDEさんご本人が「糸はインターネット」と発言されているようで、その意味を踏まえた解釈が一般的になっています。

 私にはこの歌が、「スマートフォン」の登場を予測していて、SNS時代の到来を歌っていたように思えます。やっとインターネットが一般家庭にも親しまれるようになってきた頃に制作された歌ですが、ガラケーどころか「メール」ができるようになったり着メロが変えられるようになった事で感動していた時代です。一般社会ではSNSなどという存在を誰も予測していませんでした。携帯電話に「カラー液晶」が登場するかどうかの頃。ビジネスにおいても電子メールの使用さえ一般化されていないこの時代に、明らかに新しいコミュニケーションの時代が来る事を予測していた事を証明する表現が随所に散りばめられていますので、確認していきましょう。

君は 嘘の糸張りめぐらし
小さな世界 全てだと思ってた
近づくものは なんでも傷つけて
君は 空が四角いと思ってた

 歌い出しのところです。この「嘘の糸」がインターネットの通信網の比喩であるとされています。ご本人の発言とも言われていますが、そうでしょうか?

 これは、スマートフォンそのものを意味している(スマホの出現を予測している)のです。

 SNSのフォローとフォロワーという繋がりが「嘘の糸」である事は明白です。そして、そのSNSの世界が自分の全てだと思い込んでしまう「SNS依存症」「SNS廃人」への警鐘を鳴らしています。

 自分の気に食わないものはSNSで批判し、相手を傷つけて、自分への批判に対しても感情的に対応して炎上する。まるでどこかの芸能人や作家のようではありませんか。

 パソコンやスマホの四角い画面。それだけが世の中の全てであり、世論であり、意見の全てであるかのような錯覚を表しているのです。それを裏付けるのが次の部分です。

「これが全て… どうせこんなもんだろう?」
君は言った… それも嘘さ…

 まさに、目の前にあるスマホに映るアプリケーションが自分の世界の全てであるなんて思ってはならない。そんなものは虚構に過ぎないのだと言っています。

 ここでHIDEは「それ嘘さ」と書いています。ここに別の嘘もあるという事です。では、もう一つの嘘とは何なのでしょう。それは歌の冒頭にある「君」が巡らせた嘘のことを指します。

 SNSに対してそれは虚構であるとしながら、自分自身もまたSNSという仮想現実の世界で、虚構の存在として振る舞っているということを鋭く指摘しているのです。

 ケータイが通話とメールだけの機能しかもたなかった時代によくここまで先を読んでいたと感心するばかりです。

ケバケバしい 君の模様が寂しそうで
極楽鳥が 珍しく話しかけた

「蝶の羽根いただいて こっち来いよ」
「向こうでは 思い通りさ」

 「ケバケバしい君の模様」とは、君のSNSで飾り立てたアバターであり、自己顕示欲にまみれたプロフィール欄であり、盛りに盛ったアイコン写真であり、空とスイーツと犬の写真で埋め尽くされたインスタです。

 架空の世界でどれだけ賞賛を浴びようとも、リアルな世界で孤独であれば心は満たされません。

 その寂しい気持ちを抱えている「君」に対して、SNSが誘惑してくるのです。虚構の世界ならなりたい自分になれる。賞賛も羨望も思いのままに得られるのだと。そしてサビです。

ピンク スパイダー 「行きたいなぁ」
ピンク スパイダー 「翼が欲しい…」

 ピンクスパイダーとは、賞賛を浴びたい、人々の羨望を受けたいという自己顕示欲にまみれた「君」の事です。「いいね」をもらうための買い物や食事、他人に見せびらかすためだけの写真や動画を撮ることが目的の旅行。そんな心の空白を埋めるために虚構の世界に偽りの自分を組み上げていく姿を描写しています。

捕えた蝶の 命乞い聞かず
君は空を睨む
「傷つけたのは 憎いからじゃない
僕には羽根が無く あの空が 高すぎたから…」

 捕らえた蝶とは、虚構の自分が集めたフォロワー達です。虚構の自分を愛してくれるフォロワー達からのたくさんの賞賛。しかし、それは虚構の自分に対してであって、現実の自分に対しての賞賛ではありません。

 虚構と現実の評価の乖離に苦しみ、ついついアンチに対して強く当たってしまう。その利己的な気持ちが「傷つけたのは〜」の部分に表されています。

 さて、前半は以上となります。次回は後半についても解析していきます。賛否あると思いますけど、あまり真剣に考えないで下さい。こっちも遊びでやっています。

皆さまの支えがあってのわたくしでございます。ぜひとも積極果敢なサポートをよろしくお願いします。