B面な日常3 〜流行病にご用心〜

行きつけの店が「インフル」にかかって潰れた。

美味しい、安い、多いの三拍子揃った評判の店だったのにも関わらずだ。いや評判が故だったのかもしれない。

だが、それも仕方がない。そんな客のたくさんいる店の方が流行病には罹りやすいものなのだ。

当然のことながら来店者の誰かが流行らせている訳である。顔色さえ伺えれれば、そいつがインフルかどうかなんて一発で分かって入店拒否できるのに、それは叶わないらしい。

どうやらインフルを持ってきて広める奴は必ずと言ってよいほどマスクをつけて来店するそうだ。自分がインフルだと自覚しているからだろうか。

それならば店に来なければ良いのにと思うのだが、店に来なければ飯が食えないから仕方がないらしい。

また、コロナ禍が尾を引いている中、マスクをつける事はひどく自然な行動だから、それを根拠にして店側が見分けるのは難しいというのも厄介な点だろう。

それに特に今は、店に来た客同士での会話も少なく、食事を提供してすらも携帯を弄っているような奴ばかりだから尚更どこから拡散したのか分かりづらい。

そんな事情も相まって、店がインフルを防ぐ手段は現状ほぼほぼないそうだ。そもそも流行病が防げるなら誰も苦労しないものである。一応のところ、チェーン店はある程度、インフルに対抗できる免疫を持っているらしいが、それでも悪性の強いインフルには対抗できないらしい。

また、店のインフルの症状は以下のように進行するが多いらしい。

インフルにかかった店はまず客足が増える。店は病の拡散の餌食になって、それが何キロ何百キロと伝播して、全国から病人が拡散源へと集まってくるからだ。

一方でその店の常連は減っていく。常連は免疫があるから、インフルにはかからないが、常連がインフルにかかってしまった店に通うことはすくなくなる。インフルにかかった者たちが集うような場所にわざわざ好んで通うモノ好きな常連などいないだろうから当然である。

そうしてインフルは健常な客を排除しその罹患者数を増やしていくのだ。

また恐ろしい事に、インフルを治す唯一の手段は自然治癒しかない。つまり時間経過によるインフルの忘却でしか治らない。しかしながらようやくインフルが治った時、病み上がりの店に残る客はもういない。

何週間、何ヶ月間と健常でなかった店には、以前からいた常連も流行病の罹患者も来店する習慣や理由を失ってしまっている。そうやって、店はインフルにかかって、インフルを治していく中で、体力が持たずに死んでいく。

私の行きつけの店も同じように死んだ。いや、私がインフルを避けた為に殺したのかもしれない。しかし、今になってももう遅い。そこにもう店はないのである。

現代病と言っても過言ではない「インフル」という「流行」病に対抗する術はもう失われてしまったのかもしれないし、そもそも持っていなかったのかもしれない。いつかワクチンが見つかるその日まで自己承認欲求との戦いが続いていくことは避けられない事実として、私たちの前に立ち塞がっている。

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