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2019年に宮城県沿岸を旅した話

「いま行かなければ」と思って、2019年に宮城県沿岸を旅しました。東日本大震災で甚大な被害のあった地域です。いま思えばコロナの直前。本当にあの時行っておいて良かったです。

ちゃんと行って、自分の目で見て、自分のことにしたいと思ったのでした。私も東京で激しい揺れに遭いましたけど、さまざまな助けを借りながら家に帰れましたから。あの日起きたことを「大変だったよねー(でももう終わったね)」にしたくないなという想いで企画した旅でした。

すぐにでも文字にしようかと思ったんですけどね。旅行記になってしまいそうな気がして、そのままにしていたんです。なんか、今なら残せそうな気がするので書いてみます。

新幹線で東京から仙台へ。車を借りて、石巻、女川、南三陸、最後にまた仙台という旅程でした。

どの町も、穏やかでした。静かで。建物は新しくて。綺麗なお土産屋さんに美味しそうな食べ物が並んでて。

それらが何故あるかというと、一度大きく失われてしまったからなんだ…と実感して。町の記憶と目の前に見える物のアンバランスさに心が揺れました。

石巻市復興まちづくり情報交流館

こちらは石巻市復興まちづくり情報交流館の写真。壁にある青い線まで津波が押し寄せたそうです。逃げられないよね、こんなの。どんなに怖かったことでしょうね…被害に遭われた方も、見ていた方も、大切な人が巻き込まれた方も。(いま調べたらこちらの施設はR4年で閉館したそうです。どんなご事情か分かりませんが、よそ者からしたら惜しいような気持ちです)

女川の駅なんて、本当に立派でピカピカなんです。駅の2階には綺麗な温泉があったりして。

女川駅

そこから少し行くと工事現場。確か、沿岸部に公園や女川原発向けの避難道路を作るという話だったと思います。その横にあるこれ。なんだと思いますか?

旧女川交番

交番です。鉄筋コンクリートの建物が横倒しになったそうです。

どこもかしこも、工事をしていました。直そう、新しくしよう、繰り返さないようにしよう、そういう前向きなエネルギーと、前を向かざるを得ない深い深い悲しさを感じました。

この旅で絶対に行きたかったところ、そしてどこよりもたくさんの工事車両を見たところ。石巻の大川小学校です。

石巻市立大川小学校

74名ものお子さんと10名の先生が亡くなった学校です。詳しくはこちらをご参照ください。

周りには、何もありませんでした。赤茶色の土ばかり。たくさんの工事車両が行き交って、風がとても強かったです。

校庭の後ろに山があって、そこを登っていれば子どもたちは助かったのに…という話を聞いたことありませんか。そこがね、ほんとうにすぐ登れるところなんですよ。

石巻市立大川小学校
石巻市立大川小学校

2枚目にある白い看板が津波到達地点です。写真では伝わらないと思いますが、大人の足で本当にすぐ登れました。山というより斜面という感じです。子どもだって登れただろうと思う、緩やかな道です。

ここに、来させてあげたかったなと。他人の私でも思いました。ごめんね、とも。私に何ができたわけでもないんですけどね。もうただただ無力で、何もできなくて、手を合わせて。手を合わせるのがまた申し訳なくて。悲しい場所でした。

また…誰もいなくてね…。本当に風が強くて。

石巻市立大川小学校

奥に、大きな観音様があるんです。もともとお寺のあった場所だそうで。その場ではとても写真が撮れなかったんですけど、たくさんの祈りがありました。草花が風に揺れているのが想いの集まりのように感じて、また申し訳なくなりました。なんかね…学校で楽しく過ごした子どもたちの魂であってほしいなと思うんですよ。思うんですけど…そんな美しい想像をするのは大人のエゴだよね、もっと違う、言いたいことがあるよね…って。そんなことを思いました。

最後に立ち寄った、仙台の荒浜小学校。その窓からの眺め。

仙台市立荒浜小学校

かつては多くの人が暮らしていた地域だそうです。

仙台市立荒浜小学校

なんて多くのものがなくなってしまったんだろうって、思いますよね。計り知れないとはこのこと。形あるもの、ないもの合わせて。

日本社会のこころは、悲しみに対して鈍くいられるように進化してきたんじゃないかなと思うんです。災害の多い国だからっていうのもあるかな。悲しいんだという気持ちを抑えるような文化があるんじゃないかなと。

戦後の悲しみも、頑張って復興することで乗り越えた…というか蓋をした。それで得られたこともありますけど、やっぱり悲しさは悲しさとして残ったと思うんですね。その影響は、現代にも澱のように漂っていると感じます。

2019年に見てきた東北の努力を、否定したいわけではありません。このような大災害、悲劇から、何とかして立ち上がろうとする姿には頭が下がります。

だからこそ、「本当に悲しい想いをされたのですね」と、隣に座りたいなと思います。今はこうして心を寄せるのが精いっぱいだけど…いつか、そんな心理士になれたら。

こちらの写真集は震災前の美しい風景から、震災直後の様子を窺い知れるものです。毎年3月11日にはこれを見ています。よかったら、ぜひ。

最後に、私が回った施設の一覧を載せておきます。2019年は震災遺構をまとめた情報がなくてどこに行ったらいいのか調べるのが大変でした。今はなくなってしまった施設もあるかもしれませんが、ご参考までにです。

仙台市
せんだい3.11メモリアル交流館/仙台市立荒浜小学校

石巻市
復興まちづくり情報交流館/石巻市立門脇小学校/石巻市立大川小学校

女川町
女川温泉ゆぽっぽ/シーパルピア女川/旧女川交番

南三陸町
南三陸さんさん商店街/高野会館/南三陸ホテル観洋

このページが便利そうです。今後予定を立てる方は参考になさってください。

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