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ニートが家に住むことになった。#11

どうも、この度ニートが家に住むことになりました。

(ヘ)弟

いつも通り休日はサウナへ行くニートが家に帰ってきた。顔色が明らかにいつもと違ったので流石に「なんかあったの」と聞くと「弟から連絡が来たんだよね」と言った。

彼の弟は当時大学4年生。関西の大学に通っているので今は向こうで一人暮らしをしているらしい。次の4月からは関西で就職することが決まっているらしく、彼にとっては最後の春休みだ。そんな中突然「話したいことがある。会いに行くから休みの日を教えて」と連絡をしてきたらしい。弟からそんな連絡が来て、兄貴のニートはとてもびびっていた。弟にそんなにビビるかね、お前兄貴だろ、と言いたくなるくらいびびっていた。「何言われるのかな〜、、、」とつぶやいているニートに「弟がそんなこと言ってきてるんだから、会ってあげなよ」と背中を押し、弟と予定を合わせ会いにいかせた。

弟と会って帰ってきた時もまた顔色が悪かった。寅女の仕事がひと段落してから「どうだった」と聞くと「俺、京都に行くよ」と言われた。
状況が全く読めなかったので詳細を聞くと、どうやらニートの母親から弟へ「ニートのことが心配で心配で夜も眠れない」と仕切りに連絡があったらしく、最初は我関せずで無視していたが流石にお母さんのことが心配になったので、お兄ちゃんにしっかりして欲しいと思った、とのこと。
「兄ちゃんはなんのために今の飛び込みの営業をやってるの?完全歩合だけどそこまでそんなに稼げなくて、税金とかも未納が続いていて親に迷惑かけているのにどうするつもりなの?兄ちゃん、お酒が好きなんじゃないの。どうせなら自分のやりたいことやりなよ。お酒で事業やりたいって言ってたじゃん。
兄ちゃんは今実家に簡単に帰れる実家の近くにいるから、すぐ頼っちゃう。自立できない。今俺が住んでいる京都の家は、5月末まで一応借りることになってて、俺は4月から大阪に引っ越すから、5月末までは俺の家好きに使っていいし、家具家電もあげるよ。兄ちゃんの自立のために俺も助けるよ。京都に来て、自立して、好きなことやりなよ」

話を聞いて、すごくまともな弟だと思った。なぜ兄弟でここまで違ってしまったのだろうかと思うくらいまともだと思った。ただ、弟は兄貴の現状を何も知らなかった。弟は、と言うよりも家族の誰もニートの現状を何一つ正しく把握していなかった。家族はいまだに、彼が千葉県で完全歩合の飛び込み営業の仕事をしていると思っていた。実際はそんな仕事はとっくの昔にやめて、実家に帰り、適当に倉庫での夜勤の仕事をしながらその日暮らしをしていたところでマッシュ男に社長を紹介してもらい、酒の事業をしようかと思っていたところでヒョンなところから合コンで出会ったよくわからない女の家に住むことになり、仕事はできず、バイトは続かず、ホストやってみたりしたけどやっぱり金は稼げず、今もその女の家に住み続けているただのニートだった。なぜ実家に帰った段階で家族の誰も気づかないのかは今みんなが思った疑問だと思うのだが、彼の家族は両親ともに共働きで、家族が家に帰ってくる前に夜勤で出かけ、家族が寝ている間に家に戻り、なるべく接触しないように生活をしていたかららしい。だとしても気づくだろ、と言う気持ちになるのだがここではこれ以上触れるのはやめておく。

そんなニートの現状を正しく把握していない弟の支援は、間違った打ち手にしか見えなかった。何も知らないのに急に出てきてすごいこと言うな、と思ったがそれを聞いたニートはすごく納得したらしく「俺、京都に行くよ」と言った。何から言えばいいのかわからなかったので、「もう少しよく考えたら、」とだけ言ってとりあえず寝た。

(ホ)MONEY

彼にはもう一つ、家族が知らない衝撃的な秘密があった。たびたびこの記事内にも登場していた話題ではあるが、彼には借金があった。その事実を全て事細かに知ったのは、ホストをやっていた事実が発覚した次の日だった。ホストに飛びついてしまうほどの金のない状態が具体的にどんなもんなのかを知りたくて全部吐かせてしまった。聞いて、聞かない方がよかった、と心から後悔したレベルで多額の借金があった。金額はさておき一番やばいのは友人から借りていることだ。【寅女の人生史上で最も理解できない事柄No.1】に軽々とランクインした。

それはどうするつもりなの、と聞くと「返さなきゃいけないんだよね」と子犬が鳴くような小さな声で言った。「その見通しはあるの」と聞くと目の前にいる子犬はその小さな目を俯けて黙りこくってしまった。だからそんなにもお金に困っているのかということをしかと理解した。

なぜ友人がそんなにまとまった金を貸してくれるのか。ニートは人を嫌な気持ちにさせることなく、どこか応援させてしまう、根っからのクズ男気質がある。(もう少し言葉選べよ、と自分に言いたいところだがこれ以上ぴったりな言葉は出てこないのでこのまま行かせてもらう)彼にはそういう力がある。困ったら子犬のような目をすれば周りの人は皆思うように力を貸してくれる環境で生きてきてしまったので、ただの「他人の時間や金を搾取する、テイカー」と言う化け物と化していた。本人は無自覚であることが一番のホラーだ。

友人に金を借りた理由は、さまざまあるらしいが全ての理由、漏れなく理解できなかった。遊ぶときのお金がなくてチリツモで/PCが欲しかったけどお金がなくて/大学の2留が確定した時、親に呆れられもう学費出さないと言われ、それを相談したら出してくれた など。本当に理解の範疇を超えていた。なぜそんな理由で他人から簡単に多額の金を貸してもらえるのだろう。もはや一種の才能だと感じた。

そんな状況もまた、彼の家族は何も知らないのである。まあそりゃ友人間のやり取りなので知るわけがない。とはいえそんなにも金がないのにも関わらず京都で一人暮らしをしながら友人に金を返済するのはかなり厳しい道のりであろうと考えた寅女はより京都へ行くのはやめたほうがいいと強く思うようになった。「寂しいのでニートをそんな簡単に手放したくない」という奥底の素直な気持ちではなく、己の「人のことちゃんと考えてあげている」というただのエゴだということは分かっていながら、そんな自分のことは見てみぬふりをしてしまった。

(マ)家出

とある日、2人で家にいるとニートに電話がかかってきた。「ちょっと外で話してくる」と家を出て行き、しばらくして戻ってきたニートが深刻そうな顔で「明日実家に帰るよ」と言った。聞くと連絡してきた相手は母親で、未納の税金に関する書類が実家に届いており激怒しているとのこと。引き攣った顔で家を出て行った。

彼は家にしばらく帰ってこなかった。彼は返信が遅い。これは今に始まった話ではないが、見ている限り言語化能力が低いため返信レベルが中学生で止まっているのと、フリクション入力があまり早くないのでめんどくさいのであろう。寅女としては帰ってくるのか帰ってこないのかは早めに知っておきたかったので無駄なストレスがかかっていった。彼は私に連絡をする前に急に鍵を開けて帰ってきたりする。私が在宅勤務でzoomMTGをしている最中でもお構いなしだ。ただ、その時は本当に音信不通状態が続いていたので一旦無視して自分の仕事に集中することにした。

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