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[おんまちびと]音楽環境の向上を目指して―反町充宏さん(NPO法人カワサキミュージックキャスト)

「おんまちびと」では、川崎の音楽に関わる活動をしているみなさんをご紹介します。
今回は、川崎市内全域をフィールドに音楽の現場を力強く支えるNPO法人カワサキミュージックキャストの反町充宏さんにお話を伺いました。

きっかけは高校生バンドフェスの企画

私は川崎で生まれ育ち、幼少期からピアノを習っていました。高校生の時にバンド活動をはじめ、その中で地域の人が集まりやすいところでバンドフェスをやりたいと考えたんです。そこで高校生バンドが集うバンドフェス「Dearest Company’98」を企画・開催し、イベントを作ることのやりがい、楽しさを実感しました。その後、会社員として働きながら、休日に音楽イベントの手伝いやボランティアを続けていく中で、中原区役所を中心とする音楽ライブの立上げメンバーとして声がかかり、2000年にInUnityがスタートしました。その後も運営に携わり続け、15年間にわたって実行委員長を務めました。

「音楽のまち」のスタートに感じた違和感

2004年にミューザ川崎シンフォニーホールが開館し、「音楽のまち・かわさき」がスタートしたわけですが、当時、若者の視点からは距離感を感じていたんです。立派なホールができて、すごい楽団が来て、コンサートもたくさんやっているようだけど、あまり実感がない。もし川崎市が考える「音楽のまち」がクラシックだけです、オペラだけです、ということであればそこで終わっていたと思います。ただ、そうではなかった。音楽全般、ジャンルも世代も超えてやっていく「音楽のまち」だということなので、そうであれば若者向けの発表や活動の機会が広がる状況には程遠いと考えたんです。それを、川崎市にやってくださいというのではなくて、誰かがやらなくちゃいけない。自分がやるしかないと思ったんです。その目線は今でも変わりません。
「音楽のまち」というのであれば、やっぱりオープンな場所で演奏できるような環境づくりが必要です。カワサキストリートミュージックバトルの立上げメンバーにもお声がけいただいたり、商店街の音楽イベントなどへの関りもより増えるようになりましたが、当初はまだサラリーマンとして二足の草鞋を履いていた状況で、ビジネスとして成り立つとは思っていませんでした。ただ、もういよいよやるしかないという状況になり、NPO法人「カワサキミュージックキャスト」を立ち上げたんです。

3月におこなわれた「音楽のまち・かわさき」交流会でも舞台運営を担当

「音楽のまち」なんだからまずはイベントを増やそう、ということでやっていくと、環境がついていかないという状況になります。極端な例ですが、主催者が用意した音響機材がラジカセだけだったということもあったぐらいです(笑)。お客さんに聴かせるレベルの機材が全くそろっていないし、制作のノウハウもない。そうした中で、私たちは楽器や音響機材などテクニカルな部分でイベントのクオリティを上げること、それを主催者側へも周知することを地道にやってきました。各現場で、主催者側が準備することを伝えていき、今はその認識がだいぶ浸透してきたと思っています。機材の他に、出演者が使用するエントリーシートや運営マニュアルといったフォーマットも、どんどん使ってくださいというスタンスでやってきました。

20年経って、「音楽のまちづくり」が馴染んできた

取組のスタートから20年経って、「音楽のまち」らしさは確実に実現していると思います。特に感じるのは、長年培ってきたアーティスト・スタッフ・お客さんとの繋がりです。20年前であれば、アーティストとの繋がりは全く無かったといっても良いくらい。催しがあった際に川崎ゆかりのアーティストを呼ぶことはかなり大変だったと思います。現在は、コンサートにブッキングするとなれば、候補の方はいくらでもいらっしゃいます。アーティストとのこれまでの信頼関係もあるので、話もスムーズに進みます。
そして、演者に関係なく、市内のイベントに足を運んでくれる常連さんも相当数います。いつも来られる方はもちろん顔を覚えるので、「今月も来てくださってありがとうございます」というようなコミュニケーションも生まれます。良い気持ちで帰っていただき、「また来たい」と思ってもらえるイベントは、結果的に集客にも繋がり、アーティストも喜びます。川崎での音楽を楽しみにしているお客さんのからの連絡もたくさん来ます。
さらに、この20年の積み重ねで主催者や制作側との信頼関係が築かれ、運営においてもスムーズに進みやすい環境になっています。20年前であれば大騒ぎだったことが、今であればさらっとできてしまう。これは、KMCだけの成長だけで実現できたわけではなく、それを取り巻く方々の意識や体制が「音楽のまちづくり」に確実に馴染んでいるということだと思っています。

真の「音楽のまち・かわさき」に向けて

今後取り組みたいのは、イベントづくりの基本的な部分を理解している人材を増やすことです。これまでは各現場で地道に伝えてきましたが、全市的な講座でイベントに必要なスキルや、安全面の基本的な知識を共有したいです。そういった、アーティストの立場をわかったうえで作られるイベントは、必ずしもプロ集団でなくても、良い方向に行くんです。講座を受けて自分たちでできることが増えれば、低予算でイベントができるようになりますし、うちに限らずどの業者との間でもイベントの質が確実に広がると思います。

川崎はポテンシャルの高いまちです。
各区にロビーコンサートや音楽祭があり、かわさきジャズがあり、川崎駅での駅前フェスや、東扇島でやるようなフェスがあり、言い出したらきりがないくらい地域ならではの取組があります。
川崎で活動しているアーティストたちは、もちろん横浜や東京、地方など各所で活動をしていますが、「川崎の演奏環境は良い」「川崎のお客さんは温かい」とよく言われます。それは、町全体に音楽への理解や、川崎独自の音楽環境が確実に浸透しているからだと思います。

「みんなの川崎祭」かわさきジャズステージ(2023年11月 稲毛公園)

さらなる「音楽のまち」としてめざしたいのは、音楽の仕事をしたい人が最もチャンスを感じられて、それが実現するまちであることです。演者、裏方、ジャンルに限らず、「川崎なら一番仕事がある、川崎の仕事が一番おもしろい」と言われる状況にしたいです。これが実現されれば、真の「音楽のまち・かわさき」だと思っています。それには、協賛や支援といった文化が根付くことが重要なことのひとつです。音楽はあらゆる分野・事業において欠かせないものだと思います。そうした事業をすることで、川崎で仕事をしたいと思っているアーティストやスタッフに仕事が回る。そういう働きかけやプロモーションをすることで、音楽に関わる事業に予算を割くような仕組みを、これから何年かかるかわからないけれど、地道にしていきたいです。


反町充宏(そりまち・みつひろ)
NPO法人カワサキミュージックキャスト理事長。中原区役所コンサート、In Unity、かわさきジャズ、川崎駅前フェスなど、川崎市内だけでも年間100件を超えるイベント制作を手掛ける。


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