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商品・サービス改良と改悪を分けるもの


岡村 衡一郎


もっといい商品、もっといいサービス。これらを目指して多くの人が取り組んでいる。 結果、改良になる場合もあれば、改悪になるケースもある。

改良がうまくいくケースの大半は、お客さまを複数設定して研究している。 提供側にいる人たちが、複数のお客さまになりきって次のイメージが持てているから改良になる。

当たり前のことを言っているかもしれないが、「改悪」になってしまったケースを見てみれば、なりきることの大切さが分かるだろう。


改悪の大半は、社内事情の優先にあるが、当人たちはそのことに気づかないまま取り組んでいることだ。例えば、営業マンの不満の取り込み過ぎや、製造側の言い分の最優先。競合他社の動向に振り回された開発指示。こうした改良の対策の結果、改悪となったと言える。


生活消費財メーカーのA社は、多くのヒット商品を出しているが、営業マンの声はあまり優先しない。コールセンターで受けるお客さまの声をひたすら吟味する。お客さまのいる現場でひたすら観察する。販売データの裏側を読み込む。このように問題点を収集するから、改良の打ち手に間違いは少ない。


日産自動車が苦境に瀕していたころの商品開発は工場のつくりやすさを優先していた。加えてトヨタ自動車は何をしているのかが、商品開発の裏側にあった指針であった。自分たちの強みであったデザイン性の熟成が後回しになって開発がうまくいかない背景があったようだ。


私は商品改良に乗り出したA社の支援をしている。数十年間売れ続ける商品を持つ企業で、改良に関しては不慣れな集団だ。第一次改良案は、営業マンの言い分を考慮して検討されていた。開発担当者は自信を持っていたが、試作品の発売までは漕ぎつけなかった。 売る人を重視した改良の先には、商品としてのニーズを満たしていなかったということだ。


現在、改良手順を変えて第二次案の試作に入っている。改良ポイントのあぶりだしは慎重に行なわなければならない。お客さまは複数いる。選ぶ人、取り付ける人、使う人、つくる人。それぞれの言い分を言葉通りに商品に反映してしまえば、コストが上がってライバルには勝てない商品になってしまう。

それぞれの要望を集約して統合するポイントも見つけるプロの技量が必要なのだ。開発担当者と、それぞれのお客さまになりきって改良案を吟味している。選ぶ人にとっては価格と取り付けた後にクレームにならないこと。取り付ける人にとっては時間が短く取り付けられることだろう。

使う人にとっては心地よさが優先される。 つくる人にとっては工程が少ない方がいい。

買う人のメリットを優先させて、つくる人にしわ寄せがいくのが当然だと考えていては、改良案は具現化していかない。


つくりやすさと心地よさ。機能は上げてコストは下げる。二律背反の統合が成功の分かれ道だ。同業異業種のヒット商品を分解し研究しながら、多くの人の幸せを一度にかなえる方法を模索中だ。


お客さまは誰か。今何を価値に感じているのか、本当に何を得たいのか。 これらの視点に立ち戻った改良は商品を作品に変えつつある。

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