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生き物はなぜ鉄を選択したのか?:鉄シリーズ②

①のつづきです

※この鉄シリーズは、以前僕がアメブロで掲載したものを加筆・再編したものです。

生き物はどうして鉄を選択したのか?

多細胞生物が生まれて、酸素がエネルギーとして使えるようになって、生き物は大きくなっていきました。

象の親子の画像
生命は莫大なエネルギーを獲得し多様化した

そして、より酸素をエネルギーとするために試行錯誤しました。
その結果、肺をはじめとする臓器が生まれました。

酸素をエネルギーにするということは、どうしても酸化と活性酸素の発生とは切り離せません。

酸化する物質はすべて酸素と結合しやすくなっていますが、問題は結合した酸素を細胞に送り届けないといけません。
そのため、ある程度重くて大きな金属が必要でした。

それが鉄です。

呼吸と鉄

呼吸で酸素と交換する二酸化炭素を運ぶのは簡単です。
二酸化炭素は炭酸水みたいに水へ溶けやすいので、肺で外に捨てればいいだけです。

一方の酸素は水に溶けにくく、しかも温度が高くなると、より一層水に溶けにくくなります。
お湯を沸かすと、どんどん酸素が抜けていきますよね。

そこで鉄の外殻の電子の軌道をうまく利用し、
温度が低い肺では酸素と結合させて、
温度が高い他の組織で酸素を離す性質を利用しました。

他にもphによって酸素が離れやすくなったりします。
これをボーア効果と呼びます。

ボーア効果と呼吸の仕組み
呼吸は物質の特性で成り立っている

呼吸の仕組みについてはこちらの別記事で解説しています。

そこで、ヘムタンパク質をつくりその中に鉄を固定しました。

ヘムの構造
ヘムの構造

そこにグロビンというアミノ酸のグリシンと糖を原料としたタンパク質を固定して、
酸素を運ぶことにしました。

これがヘモグロビンです。

ヘモグロビンの構造
ヘモグロビンの構造

ヘムタンパク質は、酵素反応を経たのち作られる色素です。
構造を見てわかるように、鉄は窒素にがっちり固定されて、簡単には抜け出さないようになっています。

理論的には同じ遷移元素の銅、ニッケル、コバルト、マンガンなどでも、ヘムの構造を変えれば酸素運搬が可能になりますが、
鉄を選んだ理由は、

* 宇宙や地球に多かった
* 身近な存在だった
* 使いやすかった

という単純なものだと考えられます。

ちなみにカブトガニの血は青いですが、銅が中心にあります。

カブトガニの画像
カブトガニは鉄ではなく銅を選択した

人には3〜5グラムの鉄が貯蔵されているといわれ、その7割がヘモグロビンに存在します。
このヘムタンパク質がなければ、鉄は安定して結合できませんでした。

この時の鉄は2価の鉄イオンになって、酸素を鉄と結合させて、体の隅の組織まで酸素を効率よく運ぶことができます。

何も意識しなくても僕たちはこの瞬間にも呼吸をして生きています。
生き物が編み出したこの仕組みを考えると、不思議でたまらないと同時に、敬意を感じます。

つづく

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