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大きなウナギに気をつけろ

土用の丑の日。今年2024年は7月24日と8月5日にあるようです。

発祥は江戸時代、発明家の平賀源内がキャッチコピーを考えて、土用の丑の日にウナギを食べると、夏バテしなくなるとして、売り出したと伝えられています。

僕が働くお店ではウナギの予約が始まっており、今年はどれだけの人が購入されるのか気になっています。

しかし、大きなウナギにはある秘密が隠されているのをご存知でしょうか。

※この記事は以前、僕のアメブロで2021年8月4日に公開したものを加筆、修正したものです。

養殖のウナギが大きくなる理由

稚魚のウナギを養殖すると、約9割が雄になります。
未だにこの理由は不明です。
(恐らくはある程度ストレスがかかる環境でメスが生まれるのではないか)

オスのウナギは、身が固くて小さく、ゴムみたいと揶揄されます。
重さは200〜250gがいいところ。
そこであるエサを与えることにしました。

どんなエサを与えたの?

ウナギにエサとして与えたものは、
大豆です。

正確には大豆イソフラボンを含んだものをエサに混ぜて与えました。
そうすると、なんとウナギがオスの2倍も大きくなりました。
しかも身が柔らかくなり、オスが全匹メスになりました。

エサの種類でウナギが大きくなる
大豆由来のエサでウナギが大きくなった

開発した担当者はこう語りました。
「豆腐や納豆といった普段我々が食べている食品由来のものを使うことで、安全に育てることができる」

ちなみに愛知県で開発された方法でした。
さて、本当に安全な方法なのでしょうか。

どうしてウナギが大きくなったの?

ウナギが大きくなった理由は、大豆イソフラボンによるものです。

大豆イソフラボンとは、大豆に含まれるポリフェノールの一種で、植物性エストロゲン(phytoestrogens)とも呼ばれています。[1]

エストロゲン?聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
一般的には女性ホルモンと呼ばれています。

植物性エストロゲンと呼ばれている大豆イソフラボンは、
エストロゲンに似た構造をしていて、生き物の体内にあるエストロゲン受容体に強力にくっ付きます。[2]

生き物の細胞にエストロゲンが作用すると、細胞はストレスを感じて水を引き込むようになります。それによってむくみが起こります。[3]
細胞に水が引き込まれると細胞分裂が活発になり、その結果、身が大きくなっていきます。[4]

つまり、ウナギにイソフラボンが作用したことによってエストロゲン作用が起こり、
身が大きくなっていったのです。

どうして大豆イソフラボンを使うの?

昔から家畜業界では、家畜にエストロゲンを作用させると、身が大きくなることが知られていました。[5]
そのため、少しでも肉が取れるようにとエストロゲンのホルモン注射をしていました。

しかし、近年では家畜にホルモン注射を使うのは、国際的に禁止になりつつあります。

そこで代わりに目をつけたのが大豆イソフラボンのエストロゲン作用です。
大豆は多くの人が食べているものであり、その成分ならばと目を付けたわけです。

大きな養殖ウナギを食べても安全?

養殖ウナギの身に残留している大豆イソフラボンの量は分かっていません。

エストロゲンのホルモン剤を使った食肉や卵の測定では、エストロゲンが残留していることが確認されています。[6][7]

以前より食肉に残留しているエストロゲン作用物質が、人体の健康に影響を与えることが懸念されています。[8]

食肉や大豆製品などで、外部からエストロゲン作用物質を取り入れるとエストロゲン過剰になり、様々な問題を引き起こします。

例えば3人の女性の症例では、子宮内膜の異常出血が、大豆製品の多量摂取と関連していることが判明しています。[9]

また女性の場合、大豆イソフラボンの過剰摂取で月経周期が異常になることが確認されています。[10][11]

男性の場合では、大豆イソフラボンの過剰摂取で、精子の量と質に関するバイオマーカーが低下することが確認されています。[12][13][14][15][16]

大豆イソフラボンの過剰摂取は生殖毒性と発がんの誘発や増殖が懸念されています。[17]

日本の場合、大豆イソフラボンは健康に良いとされている場合がほとんどなので、
健康を害するかも?という認識すらない人がほとんどだと思います。

大豆と豆乳の画像
大豆は健康に良いとされているが・・・

そして、エストロゲン作用をする物質は身の回りにも溢れかえっています。

その点から見ても、大豆をよく食べていたり、エストロゲン過剰による病気がある場合、
大きな養殖ウナギを食べるのは危険が伴うと考えています。

健康には食材の機能的な面と、そこに含まれる毒性を知ることが重要です。

大豆は子孫を残す種子です。
種子が簡単に食べられてしまったら、子孫は残せなくなります。

一度身の回りのものや食べているものが、どんなものを使っているのか、確かめてみることが健康へと繋がっていきます。

【参考文献】

[1] Dietary phytoestrogens.
Annu. Rev. Nutr. 1997;17:353–381.

[2] Isoflavonoids—An overview of their biological activities and potential health benefits.
Interdiscip. Toxicol. 2009;2:211–218.

[3] Estrogen regulation of aquaporins in the mouse uterus: potential roles in uterine water movement.
Biol Reprod . 2003 Nov;69(5):1481-7.  

[4]Pituitary Gonadotropins, Prolactin and Growth Hormone Differentially Regulate AQP1 Expression in the Porcine Ovarian Follicular Cells.
Int J Mol Sci . 2017 Dec 21;19(1):5.

[5]Physiological effects of estrogens in animal feeds with emphasis on growth ruminants. In: Hathcock J.H., Coon J., editors. Nutrition and Drug Interrelations. Academic Press; New York, NY, USA: 1978. pp. 577–611.

[6] Hormonal growth promoting agents in food producing animals.
Handb Exp Pharmacol . 2010:(195):355-67.

[7] Hormonal residues in chicken and cattle meat: A risk threat the present and future consumer health.
Food Chem Toxicol . 2023 Dec:182:114172.

[8] Exposure to exogenous estrogens in food: possible impact on human development and health.
Eur J Endocrinol . 1999 Jun;140(6):477-85.

[9] Adverse effects of phytoestrogens on reproductive health: a report of three cases.
Complement Ther Clin Pract . 2008 May;14(2):132-5.

[10]Biological Effects of a Diet of Soy Protein Rich in Isoflavones on the Menstrual Cycle of Premenopausal Women.
Am. J. Clin. Nutr. 1994;60:333–340.

[11] Associations of Menstrual Cycle Length with Intake of Soy, Fat, and Dietary Fiber in Japanese Women.
Nutr. Cancer. 2006;54:166–170.

[12]Soy Food and Isoflavone Intake in Relation to Semen Quality Parameters among Men from an Infertility Clinic.
Hum. Reprod. 2008;23:2584–2590.

[13] Endocrine Disrupting Chemicals in Urine of Japanese Male Partners of Subfertile Couples: A Pilot Study on Exposure and Semen Quality.
Int. J. Hyg. Environ. Health. 2012;215:502–506.

[14] Urinary Phytoestrogen Levels Related to Idiopathic Male Infertility in Chinese Men.
Environ. Int. 2013;59:161–167.

[15] Urinary Phytoestrogens Are Associated with Subtle Indicators of Semen Quality among Male Partners of Couples Desiring Pregnancy.
J. Nutr. 2015;145:2535–2541.

[16] Associations between Semen Phytoestrogens Concentrations and Semen Quality in Chinese Men.
Environ. Int. 2019;129:136–144.

[17] Multigenerational reproductive study of genistein (Cas No. 446-72-0) in Sprague-Dawley rats (feed study).
Natl Toxicol Program Tech Rep Ser . 2008 Mar:(539):1-266.

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