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言語学的観点からの「フェミニズム」

背景

私がTwitterを始める前は、フェミニズムを「女性解放思想」「男女同権主義」といった、ポジティブな認識をしていましたが、実態はそうではないようでした。フェミニストの方のツイートが、「日本語なのに日本語として理解できない」ということが多く、どうやら私と彼ら/彼女らで言葉の定義が違うかもしれないと感じました。

ひとつの言葉でも色々な意味やニュアンスがあります。当然、ことばの持つ意味やニュアンスが異なる人とは、根本的に会話ができません。

 もしかしたら、私の考える「フェミニズム」と、みなさんの考える「フェミニズム」も違うかもしれません。そこで、言語学的にどのように使われているか確認するため、自然言語の機械学習の手法のひとつであるWord2vec(word-to-vector)を使って調べてみました。

ことばのもつ意味を数値化する

 コンピュータは基本的に、数値でしか物事を扱えません。言葉をコンピュータの扱える数値にする必要があります。これには、Word2vecという手法を使います。Word2vecでは、言葉を複数の次元(数値)をもったベクトルとして扱います。

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例えば、「王」には、「男」「高貴」という成分が含まれています。ここから、「男」成分を引いて「女」成分を足せば、「女王」という計算結果になります。他にも、「東京」から「日本」を引いて「フランス」を足せば「パリ」になります。Word2vecにより、このように言葉を数値的に扱うことができるようになります。

 単語の持つベクトルを数値にするためには、ある単語の周りに出現する単語を予測する学習を、ニューラルネットワークで行います。同じような意味の単語からは、同じような周辺語が予測されるはずです。学習の結果、入力層から隠れ層への重みが計算されますが、入力がont-hotベクトルなので、入力層から隠れ層への重み行列の各行を、そのまま単語ベクトルとしてよいだろう、という考えに基づいています。

本記事では、日本語 Wikipedia の本文全文を元に学習したモデルを用いました。単語のベクトルは200次元です。これは、下記ページにある東北大学 乾・岡崎研究室で作られたモデルになります。

このword2vecを応用することで、フェミニズムはどんなベクトルをもっているか、検証しました。


「フェミニズム」とは?

 早速、「フェミニズム」はどのような意味合いで使われているのか調べてみました。ただし、最も妥当であると判断された言葉を5~10個抽出しており、右側の数値は類似度を表しています。

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これらの単語は、私の認識している、あるいは、およそ辞書的な「フェミニズム」の使われ方とそう遠くないように思えます。


「フェミニズム」ー「攻撃」=?

Twitter上の「フェミニズム」は、あまりにも攻撃性が高いように見えます。そこで、「フェミニズム」から「攻撃」を引くと何になるでしょうか。

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フェミニズムから攻撃的な要素を引くことで、やっと男女同権が達成されるという皮肉でしょうか。

上野千鶴子氏は日本を代表するフェミニストの一人です。

「オタクはギャルゲーでヌキながら、性犯罪を犯さずにに、平和に滅びていってくれればいい。」などの攻撃的な発言が取り沙汰されることも多いですが、調べてみると確かに現代のフェミニズムとは違う考えを持っているような印象を受けました。上野氏はオタクを嫌ってはいますが、「性」に関しては肯定的で、「ギャルゲーでヌく」ことが「性犯罪を誘発する」とは認識していないようです(まだ不勉強なので今回は割愛します)。

「ポストモダニズム」とは、脱近代主義とも呼ばれ、「懐疑主義的」「皮肉的な姿勢」「近代主義の否定」といった考え方です。文学、芸術や建築の分野でも広く認識されています。ポストモダニズムが批判する対象として、客観的現実・道徳・真理・人間性・理性・科学・言語・社会進歩などがあるようです。たしかに、現代のフェミニズムは、客観的現実や社会進歩を否定し、自己意識的あるいは自己言及的な側面があると思います。


「フェミニズム」ー「性的」=?

また、Twitter上の「フェミニズム」は性的な要素を極端に憎悪しているように見えます。現代の「フェミニズム」から「性的」を引くと何が残るでしょうか。

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「ケインズ経済学」は「供給量が需要量によって制約される」というもので、もし社会にフェミニズムが必要であればフェミニストは増えるだろう、という理解もできます。当然、ジェンダー平等が達成された社会では、フェミニストは不必要になり、フェミニストも少数派or消滅していくでしょう

「キリスト教右派」は「キリスト教原理主義」「保守的勢力」といった意味合いです。批判的な意味合いや、蔑称として使われることもあり、「教義を硬直的に信仰し、そのためには暴力も辞さない」といった意味合いでしょうか。

「マルクス主義」は私有財産を認めず、階級のない平等を目指す社会主義の考え方です。資本主義とは反対の考え方です。資本主義では、「市場の自由な競争に任せておけば、価格や給与も適切に調整される」としたものの、実際には貧富の格差が拡大することがほとんどで、ごく少数の富裕層が富を独占していると言われます。「マルクス主義」に「性的」な要素を足せば「フェミニズム」になるということは、「フェミニスト」は、少数の女性が独占する「性的な魅力」を認めたくないという理解ができそうです。

神崎さん(@yuki_birth)は上の記事で、フェミニズムを歴史的な観点から考察し、現代のフェミニズムを「マルクス主義の影響を受けている第二派フェミニズム」の残滓、「ハリボテ・フェミニズム」としています。

これに対し、大野佐紀子さん(@anatatachi_ohno)は、「ツイッターのフェミニストにマルクス主義フェミニズムの影響を感じたことは殆どない」としています。しかし、それは大野さんがそう感じないだけであって、少なくとも、日本語Wikipedia本文全文からの言語学的な解釈では、現代フェミニズムにはマルクス主義的な側面が見て取れますし、多くの人がそう認識しているということになるのではないでしょうか。(大野さんを悪く言うつもりはなく、あくまで「認識」の話)

 上記の計算結果の解釈は、人それぞれ異なるかもしれません。ただ、私がなんとなく思い描いていた現代のフェミニズムのイメージとかなり近いものでしたので、本記事にまとめることにしました。


まとめ

日本語 Wikipedia の本文全文を元に学習した言語モデルを用いて、「フェミニズム」をいくつかの要素を引き算してみました。計算結果の解釈には、人によって異なるかもしれません。また、私は経済学や宗教には疎いため、上記の計算結果の解釈に、(根本的な間違いはないと思いますが)至らない点があるかもしれませんが、計算結果は誰がやっても同じになります。


私見

 内閣府のガイドラインが撤廃され(やったね!)、国会にも質問主意書が出ました(やったね!)。全国フェミニスト議員連盟は7万近い署名を無視し続けており、長い間停滞感を感じておりましたが、次のフェーズに進んだ感じがします。

 ただし、今回の問題の周辺で、誹謗中傷に関する話題を度々目にします。例えば、石川優実さんや伊是名さん、あるいは彼女らの擁護者に対する暴言です。確かに、「フェミニスト」の方の中には、論理性が欠けていることや、(対立者だけでなく)応援者への攻撃性も高いことがあると個人的にも思いますが、だからと言って誹謗中傷をしてよいわけではありません。

 今後、表現の自由が規制されないような社会に、「戦略的に」進んでいく必要があると思います(共産党の問題も出てきましたし)。これからは「表現の自由」の身内だけでなく、政治の場や、一般層にも声を届ける必要があります。その際に、「表現の自由」側が、他人を容易に誹謗中傷するような集団であってはなりません。

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