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小説紹介

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#読書

短文小説紹介 #4

概要 僕は自分のTwitterアカウント(@OnishiHitsuji)で小説の紹介をしている。ここにまとめられた7つの紹介の文章はそちらで共有しているものと同様だ。  今回は025から031までとなっている。 025-リチャード・ブローティガン「東オレゴンの郵便局」 とても好きな作家。あるいはお気に入りの作家。べつに好きだってことはないんだけどもこれまで沢山読んできたし、新刊が出ると手に取ってしまう作家――僕の場合には村上春樹。  習慣的に小説を読む人には、おのずとそのよ

短文小説紹介 #3

018-バーナード・マラマッド「魔法の樽」「恋愛」という単語にいったい何をおもうだろう?  僕としては、あるときには最良のもののひとつであると考えている。事実はさておき。  人が都合のためにパートナーを求めるとき、それは欲からなる罪深きものであるように僕には思える。ユダヤ人の祭祀になろうとしている主人公リオも、祭祀としての立場からで結婚斡旋人に連絡をとる。やってきたのはソルツマン。魚くさいにおいがぷんぷんし、商人のあの薄笑いを浮かべている。彼が手品師のように語る手前で、青年リ

短文小説紹介 #1

概要 このごろ、僕は自分のTwitterアカウント(@OnishiHitsuji)で小説の紹介をしている。とくに誰に向けたものというわけでもないのだが、書いていると楽しくなれる。もちろん読んでくれる人がいれば嬉しいし、それら小説で楽しんでくれるといいな、とも思う。 「大西書評堂」でも似たようなことをしていた。だが、あちらは書き込みが激しいあまり、体力と時間を消耗してしまう。実際、それがいやになって筆が止まってしまった。ああして作品の文体を意識しながらやってみることは経験として

大西書評堂 #1 「幽霊たち」と「中空」

ポール・オースター「幽霊たち」(柴田元幸訳)・あらすじ  ブルックリンの私立探偵のブルーは謎の人ホワイトからの依頼でブラックという人物を監視することとなる。ブラックを見張り、週に一度報告書を送る仕事だ。道路を隔てた真向かいの一室から監視を続けるブルーだが、ブラックは紙に向かって何かを書き綴るのみで、いっこう行動を起こさない。困惑しながらも監視、そして報告を続けるブルーだったが、それでもブラックは向かいの部屋で書き物をしているのみ。あまりにも長い時間とともにブルーの目的は混濁し