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#4「特学だから」という免罪符

「特学(特別支援学級)だから」

学校現場で、都合良く使われ、周りを黙らせる言葉の一つではないかと思います。

特学(の子たち)だからーーー配慮が必要です。
特学(の子たち)だからーーーしてください。

このような言い方をされると、特学の経験のない通常級の教員は何も言い返すことができません。なぜなら、特学のことを知らないので「そういうものか」と思ってしまうからです。また「特別支援学級を蔑ろにしたくない」と常識のある教員なら考えるので、主張の中身にかかわらず受け入れてしまうと思います。

特学の教員も悪気があってその言葉を使っているわけではなく「特学だから」と言う枕詞を使うと主張が通りやすいことを経験してきているので、ついその言葉を使ってしまうのではないかと思います。中には「自分たちは通常級より特殊で難しいことをしているんだ」ことを主張したいがために使う方もいます。

もちろん「特学だから」という言葉が正当な意味で使われることの方が多いです。

「特学だから」通常級とは異なる教育計画で学習するし、評価もちがいます。
教室にいる子どもの数だって違うし、大抵異学年です。教室環境も違います。

「特学だから」急な授業の変更や移動はできません。

一例ですが、もっともな「特学だから」です。小学校の通常級は担任の裁量で、時間割をコロコロ変更しますが、特学の担任にとっては非常に困ります。特学の予定していた学習ができなくなりますし、予定の変更に弱い子はそれだけでパニックになります。

でもこれは、通常級の担任が特学のことを知らないから起こりうることだと思います。つまり「特学だから」という言葉で特学の担任から言われることで理解できることもあるのです。

しかし、その中に「特学だから」を都合良く使っていることがある、というのが
私の最近感じることです。

そう思うようになったのも、私自身が特学を知る機会を持つことができたからだと思います。

数日〜1週間の補充を数回、担任を3週間経験することで、すべてだとはいいませんが特学の学校生活や運営方法、仕事の仕方が分かってきました。その上で、特学の教員がいう「特学だから」が都合のよく使われていることが含まれていると気づきました。

「特学だから」っていうけど、それって、通常級でも言えることだよね。
「特学だから」って好き勝手やっていいわけじゃないよね。
「特学だから」でも、学校で学ぶ意味を考える必要あるよね。
「特学だから」こそ、通常級と同じ補充できないよね。

結局、都合良く使われていることの根本は「本気で考えていない」か「実力が足りない」のどちらかだと思います。無意識なのかもしれないですが、自分ができないことを、他人や環境のせいにして、人に押し付けているように思えます。

また、学校観の違いも大きいのではないかと思います。
特別支援学級は通常8名以内の児童が一つの学級に在籍することになっていますが、学年や実態の違う子どもたちを8人同時に一人の教師が指導するなんて、物理的に無理です。これは通常級でも同じことがいえると思いますが、特学の場合は教師が関わることができない子どもをどうするかは大きな問題だと思います。

結果、デジタル機器にお守りをしてもらうという安易な手立てになるのではないかと思います。8人中2人の指導をしている間、他の子たちはタブレットで動画を観たり、タイピングをしたりしていれば、子どもはおとなしくなるので、教師にとって都合がよいし、子どもも楽なのでお互いにメリットがあります。

しかし、それを日常化するのはいかがなものかと思います。なぜなら、特別支援学級には「個別指導計画」と「個別の支援計画」があるのです。ここが通常級と大きな違いです。1時間の授業の中で、2人は学習が確保されているけど、その他の子たちは何も確保されず、放置されているのというのは問題です。(通常級ならいいということではないですが)

私が特別支援学級に補充に入って一番違和感を感じるのがこれです。「このプリントをさせてください」といわれることが多いのですが、本当にそれでいいのか、と思います。一人ひとり課題や学習の理解がちがうのに、プリントをさせるだけでいいのか、プリントが終わった後の時間は何をするべきなのか。学校にきて、ちょっとプリント学習をして、あとは自由。果たしてそれでいいのか、と思います。

特学の補充に入った教員は子どもがどのような教育計画のもとに学習を行うのか、どのような教育支援計画のもとに配慮や支援を行っていくのかわかりません。だから子どもたちへの関わり方も限定的になるし、ちょっと関わり方を間違えたらクレームにつながるので、非常に気を遣います。

私はこういうところにこそ「特学だから」を使うべきだと思います。
最近でこそ、特別支援学級が増えてきて、専門に学ぶ人、担任する人が増えてきましたが、今の30代、40代以上の方々の多くは、特別支援学級がなかった時代に教員になった世代であり、通常学級しか経験したことない方も多くいるでしょう。

そのような教員であっても、特学のことを知り、特学で子どもたちが何を学ぶのか考える機会持つことは、特学が増えている今の時代に必要なことではないかと思います。そして、最も考えるべきことは、特学であろうが、通常級であろうが、子どもたち学校で何を学ぶべきなのか。

教師の個別指導で、教科書をなぞるだけでよいものなのか、いい加減考え直す時期にきていると思います。保護者にもその他の教員にも理解してもらえる「特学だろうがなんだろうが」がほしい。


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