読書日記「ハンチバック」怒りこそパワーな小説

初めまして、こんにちは。
あらゆるコンテンツが好きなnorinorico(ノリノリ子)と申します。なんとなく読んだ本や見た映画などの記録を付けたいなと思い立ったので、ここに付けます。

昔からちくま文庫の本が好きで、ちくま文庫の本と好きな作家の本ばかり集めるという偏食の本好きでしたが、数年前に引っ越してからは家の近くの本屋さんにちくま文庫があまり置いていないので、受賞作や店員さんのおすすめなどのいくつかの作品の中から適当に買って読んでいます。自分の好みや傾向とは違うものを読むこと、とても楽しいですネ!続くと、いいな。


記念すべき(…?)1冊目は、市川沙央による小説「ハンチバック」です。


読み終えた後で検索して知ったのですが、作者である彼女自身も筋疾患を持つ重度障害者だったんですね。

家の近くの本屋に入るとすぐ目の止まるところに受賞作や話題作がずらずらと並んでいます。一つ一つ気になるものは無いかな〜と目をかっ開いて見ていきます。帯に「芥川賞受賞作」とデカデカと書いてあります。(ほへー)と思いながら左上の文字に目をやると、「私の身体は生きるために壊れてきた」という文章。ム、気になる。本を裏にしてあらすじを見てみる。[井沢釈華の背骨は右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。…](なるほど、だからハンチバック(せむし)ってことか。)続けてあらすじを読む。[両親が終の住処として遺したグループホームの、十畳ほどの部屋から某有名私大の通信課程に通い、しがないコタツ記事を書いては収入の全額を寄付し18禁TL小説をサイトに投稿し(...ん?)零細アカウントで「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」と呟く。…](…すごく気になる。)ページをパラパラと軽くめくってみたら文字数的にかなり読みやすそうだったので、空いた時間にちょうどいいなと購入しました。

近くのカフェで、カフェラテを飲みながら読み始める。

1ページ目で[ハプニングバー]という文字が目に入り、想像を早々と裏切られたことに驚きます。とにかく、ワードセンスが凄い。パワーワードだらけだ。そして、こんなにも怒りを感じる小説は、久しぶりに読んだ。まさに、怒りこそパワー。力強く、静かに"健常者"として無関心に無邪気に生きている私たちのことを、鋭く尖った言葉で突き刺す。電子書籍化の波に「紙の匂いが好き」「ページをめくる感触が好き」と宣い文化的な香りを燻らす健常者は呑気でいい…と。その健常者はまさに私のことだった。ブスブス、グサグサ、刺されまくっている。この後ろめたさは何だろうか。

私は生きるということに対して、あまりちゃんと、出来ない。この小説を読み終わったとき「私は生きているぞ」と小さなせむしの怪物に睨まれている気分だった。

ところでせむしという言葉、最近ではあまり使われませんが(差別的だからかな?)最初に知ったのってノートルダムのせむし男ですよね。あれも、すごい話だったなぁと思い出しました。まぁ、それだけですが…。

どんなカタチでも、心を刺してくるのはいい作品だと、思う。

どんなに優しい作品だって、刺されるときは痛いの、不思議。

2023.9.7


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